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地方での非日常体験

会社の任意研修で、地方宿泊型のワークショップに参加した。いわゆる地方創生をテーマにしたものではなく、あくまでも地方を舞台に非日常的な体験を通して、普段と違う角度からの視点を得ることを目的としている。

柔軟に吸収できるように、これを学ぶという目的をもたずに参加したところ、非常に気づきが多かったので、レポートする。

今回は2泊3日の合宿型で、鳥取県智頭町に滞在した。
智頭町は『みどりの風が吹く疎開のまち』というテーマで、土地の90%以上を占める山林を活かしたまちづくりをしており、SDGs未来都市にも認定されている。
住民自治を大切にしているのが特徴だ。

森を見て木を見ず

初日は役場の方から智頭町の概要を伺ったあと、鳥取大学の山本福寿先生のもと、山林でワークショップを受けた。
樹木を採り、図鑑を見て、10種類の樹木の名前を当てるというものだ。

様々な"樹木"を持ち帰って調べたところ、その大半が樹木でなく草だった。
健闘虚しくチーム戦で最下位となり、罰ゲームで二ガキとキハダをかじった。
どちらも苦いのだが、ただ苦いだけでなく、二ガキは胃腸薬に、キハダは便秘薬に使われている。

福寿先生に質問すると、嬉々として樹木について語ってくださった。
樹木と草の違い、樹液の仕組みと効用、樹木の名前の由来、木材となる樹木の特徴など。
ただの森・木・葉にすぎなかったものが、1つ1つに名前が付けられていて、色や形・香りや効能があることを知った。

『木を見て森を見ず』と言うが、『森を見て木を見ず』、"わかったつもり"に無自覚ではなかったか。
"木"を知ると、淡白だった風景に彩りが芽生えた。

自由からの逃走

2日目はチームごとにフィールドワークを行なった。
私たちが向かったのは、森のようちえんだ。

森のようちえんとは、施設やカリキュラムを持たずに、自然の中での体験や自発的な学びを大切にする野外活動だ。
山中さんというようちえんのスタッフの方がアテンドくださった。

お会いしてすぐに、軽い山登りが始まる。
ひらけた場所に着くと、山中さんの講義が始まるわけではなく、こちらからの質問に対して真摯に答えてくださるスタイルだった。

『自分の頭で考えて選択すること、行動することを大切にしている。最初から教えない。こどもたちから"失敗する権利"を奪わない。教育というより、幸福論の話』

『15分間、ようちえんで自由にあそんでみよう』と言われる。
私にとって"自由"はわくわくするものだが、これがしたい!というものがないとき、"自由"はそわそわすることに気づいた。
不自由から逃れたい一方、自由からも逃げて楽になりたくなるのだ。

半歩先を照らす

『お昼ご飯用に、ここにあるもので火を起こしてみよう』
ライターやマッチはあるが、炭も着火材もうちわもない。
試しに葉や小枝を燃やしてみるが、燻るばかりで火は大きくならない。
もちろんやり方は教えてもらえない。
どうするか。

山中さんは暫くすると、別の場所で焚き火を始めた。
どの葉や木が燃えやすいのか、どのように木を組んでいるのか見て真似をする。
すると、さっきまで火がつかなかったのが嘘のように燃え始めて、40分くらいかけてようやく焚き火をつくることができた。

こんな達成感を味わったのはいつぶりだろう。
自分たちの手でつくるのは楽しく、できると嬉しい。
見本がなかったら火をつけられなかっただろうが、教わってはいない。
真似び、学ぶ。
見守り、半歩先を照らす。

素材を活かす

森のようちえんでひとしきりあそんだあと、タルマーリーでおやつを食べた。

タルマーリーは、自然栽培×天然菌で作るパンとクラフトビールのお店だ。
移住された渡邉さんご夫妻が、保育園をリノベーションして切り盛りしている。
食べ物も場所も、"素材"を活かしているのが特徴だ。

つながり

午後はリフレクションをした。
他のチームは、それぞれジビエ料理に使う鹿の解体や、藍染、林業体験をしていた。

リフレクションを経て、そこから派生した問いを立てて考えるワークを行った。

・自由とは
・慣れとは
・あたりまえとは
・感謝とは

"慣れ"は学びの結果だが、怠慢も生む。
慣れは"私のあたりまえ"につながる。
"あたりまえ"は人それぞれのはずが、私もあなたも一緒だと思い込んで、コミュニケーションを怠っていないか。
"あたりまえ"が過ぎて、"感謝"を忘れていないだろうか。

智頭町の方々と関わる中で、"つながりの中で生かされている"感覚や、"つながりに感謝する姿勢にはっとした。

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