見出し画像

対話型鑑賞(その4)

"みる"とは

上記は、顔写真・文字・風景写真で1つの作品となっている。この人は誰なのか?誰がこの作品を作ったのか?という事前情報なしに、作品をみて感じたこと・考えたことを共有するワークを行った。

顔写真について、目線が下に落ちていて、かつ口角は上がっているようにみえたことから、最初は哀しい笑みを浮かべているようにみえた。

目を凝らすと、右目は下を向いているが、左目は正面を向いているようにもみえる。
顔の左半分がやや陰っているので、左右でチグハグかつ陰のあるところに、狂気を感じた。

次に、文字に目を移すと、下記の言葉が綴られていた。

『私がこれまでみた中で一番美しいと感じるのは、海です。視界の果てまで広がる海です』

顔写真と文字の情報を合わせて考えたのは、顔写真の人がその言葉を発していて、かつて誰かと美しい海をみたけれど、今はもう海をみることができない、それで哀しい笑みを浮かべているのではないかということだ。

ここで、ファシリテーターから、顔写真のモデルは生まれつき全盲であること、『今までにみた中で一番美しかったものは何か?』という作者からの問いかけに対して、上記答えたのだということが明かされた。

解釈を他者に委ねる

風景写真は、作者が撮ったものだ。顔写真と文字は壁に飾られていて、風景写真のみ机の上に置かれている。風景写真のみ安易に取り替え可能とも言えることから、風景写真は正解ではなく、自由に想像してほしいという作者の意図が込められているのではないか、という他の参加者の解釈が響いた。

自分の判断軸を決めて物事を白黒はっきりさせたいと思いがちなところがあるため、解釈をみる人に委ねるという解釈が新鮮で響いた。

※題材はソフィ・カルの『盲目の人々』。

対話型鑑賞

対話型鑑賞では、作品に対してどのような問いや感情・考えを抱いたか(鏡に映った自分)を意識し、なぜそのような問いや感情を抱いたのかを考えることで、『事実を解釈・判断するときの癖(価値観)』を知ることができる。

また、同じ事実(作品)をみたときにどう解釈するのか、話して共有することで、自分と他者の解釈は違うのだと実感し、そのうえで、解釈・価値観が異なる人(自分以外の全員)とどうコミュニケーションを取ればよいのか考えるヒントがみつかる。

対話型鑑賞で私が学んだ情報伝達のポイントは、下記3点だ。

・前提を伝える
・全体から、細部を伝える
・質問(確認)をする/質問の間をとる

特に質問(確認)が大切で、確認したい内容によって下記質問を使い分けるのがおススメだ。

・どこからそう思ったの?(解釈→事実)
・そこからどう思ったの?(事実→解釈)
・他にどう思ったの?(選択肢を広げる)

確認に解釈を加えることで、自分と相手だからこその話の深みや関係性が生まれたり、それぞれが気づいていなかった視点に気づける楽しさが出てくる。

また、自分の発言そのものも、断定的な言い方を避けてあえて余白を残す、意図的に解釈を相手に委ねるというのも、趣がある。

#アート #コミュニケーション #対話型鑑賞 #ワークショップ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?