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LOWA タホープロⅡ GT

登山靴は私の撮影山行を文字通り足元から支えてくれているまさに『相棒』のような存在。昨年2020年の春に私がそれまで愛用していたLOWAのタホーが新しくモデルチェンジしたことをきっかけに、2足目となるタホーを手に入れました。

登山における『三種の神器』

山登りをする上で数ある装備の中で『三種の神器』と言われるほど重要性の高いものがあります。それが、

『 ザック、レインウェア、そして登山靴 』。

その中でも足元を支える登山靴は険しい山道を登り下りする登山においては最重要な装備になります。

夏山にしろ冬山にしろ、登山は下界とは比較にならないほど大きなリスクにさらされることになるわけですが、基本的にはそのリスクすべてを自分の力だけで越えなければなりません。無事に下山できた時の“達成感”というのはこの要素があるからに他なりません。

日帰り山行であっても非常食も含めて最低限の装備は担がなくてはなりませんし、小屋泊ではそれが数日分、さらにテント泊となれば衣食住のすべてをザックに詰め込んでそれを自らの力で担ぎきる必要があります。

登山装備のすべてを下から支えているのは登山靴となるわけなので、登山靴選びはとても重要なものになります。

LOWA タホープロ GT WXL

私にとって初めての本格的な“ハイカット”と呼ばれる登山用の靴はCARAVANというメーカーのものでしたが、撮影機材を含んだ20kgを超えるようなテント泊装備を担ぎだしてからはLOWAの『タホープロ GT WXL 』というモデルを履き始めました。

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慣らしのためこの靴で初めて低山を歩いたときは足首が痛くて辛かった思い出があります。いかんせんハイカットでありながらアッパーが柔らかくて運動靴と同じような履きやすさがあったCARAVANの登山靴と比べて、はるかに固いアッパーのタホーに私の足首は悲鳴を上げました。

しかしLOWAの登山靴は高価な部類の登山靴だったので下駄箱の中に眠らせるのはもったいない…と思いしばらくは我慢しながら靴を慣らしていきました。
そうしていくうちに革が馴染んできたのか、はたまた私の足首がこの固さに順応したのか、タホーは私の足の一部のような感覚になるほどジャストフィットしていきました。

それからはソールの張替えを2回ほど行いながらずっと私の山行を10年近く支えてくれました。
このタホーの強みはその堅牢性
過酷な山道で酷使してきてもいまだに現役バリバリ。一枚革で作られた登山靴は何と言ってもこの堅牢性・耐久性が本当に素晴らしいと思います。

ただ、そのタホーもさすがに内側のゴアテックスは消耗品であり雨天の山行時にはつま先から多少の浸水がみられたこと、そしてソールの張替えに出すとしばらく戻って来ないということを鑑みて、2020年春にモデルチェンジしたことをきっかけに夏に2足目のタホーを手に入れました。

登山靴の買い替え

もちろん登山靴の買い替えとなると他のメーカーのモデルもチラホラと頭をよぎりました。

しかし私の今後の撮影山行は年齢的なものを考えるとあと10年くらい。
なぜなら重い荷物を背負っての山歩きは体力のほかに、その辛さを超えるような高いモチベーションを維持し続けなければならないからです。
ですから少なくともあと10年はこの酷使に耐えてくれる靴となると、やはり実際に今まで10年近く私を支えてきた実績のあるタホーの一択でした。

もちろん買い替えると言っても今までの初代タホーでも雨の心配いらない山行ならば難なくこなしてくれますが。

LOWA タホープロⅡ GT

登山用品店にて初めて『Ⅱ』の試し履きをしたときに感じたのは、前モデルと全く同じような堅牢性とフィット感。それはつまり前モデルがすでに登山靴としてほぼ『完成』していたことに他なりません。

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それもそのはず。

ご覧の通り一見すると前モデルと見紛うくらいそっくり。
おそらくこのタホーに馴染みのない方が見ると“間違い探しクイズ”くらいそっくりに見えるかもしれません。

もちろん基本的な部分は変わっていません。変える必要性が無いのでしょう。その中でも変更点がいくつかありました。

・ロック機構の採用

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新しくロック機構が採用されました。LOWAの他のモデルにはすでに採用されている機構のようですが、それが今回のモデルチェンジを機にタホーにも採用されました。
上の写真のようにシューレースを外側から内側に引っ張るだけでロックがかかって緩まなくなります。

この金具がある位置はシューレースを結ぶ際に一端締め具合を調整して、そのあとにハイカットの部分へと締める作業に移るちょうど中間にあります。このロック機構で適切な締め具合を保ったまま次の作業に入れるので、この機構は登山中というよりもシューレースを結ぶときに非常に便利な機能となります。

・ベアリング機構の採用

上の写真の通り、下の2番目から上ふたつの金具にはボールベアリングが採用されました。これによってシューレースがするすると滑らかな動きとなりますが、ロック機構ほどの大きな効果は感じにくく、このボールベアリングが険しい岩場などに接触したときに破損しやしないかとすこし不安でもあります。

・日本人に合わせた靴型

日本人の足の多くは甲の高さが低く、幅が広い特徴があります。逆に欧米人のその多くは甲が高く、幅が狭いという特徴があります。このLOWAというメーカーはドイツのシューズメーカーですが、この日本向けのタホープロⅡにはしっかりと日本人に合わせた靴型が採用されています。

初代のタホーも日本向けの靴型が採用されていてフィット感に問題は無かったですが、今回のモデルチェンジでも少なくとも私の足にはとてもフィットするもので安心しました。

・その他

実は大きな変更点はこのくらいで、あとは『LOWA』のロゴが刺繡になったり足首の部分がマイナーチェンジされてはいますが、基本的には前モデルを踏襲している作りになっています。

アッパーは軽量かつ丈夫で起毛のある『ヌバックレザー』
ベロの部分にはシューレースをクロスしてかける『Xレーシング機構』
ソールは定評のある『ビブラムソール』
内側にはもちろん『ゴアテックス』の採用。
と、すべて前モデルをそのまま踏襲しています。

インソール

私は前モデルのタホーでは専用のインソール(中敷き)を使用してきました。登山用品店などでよく見かける『スーパフィートインソール』というものを使っていますが、これがなかなかの使用感でした。

こういった元々靴に入っているものではない“専用のインソール”には踵部分のブレ防止土踏まず部分の安定性による“疲労感の軽減”に大きな効果を感じています。

今回もこのタホープロⅡに合わせて同じメーカーのインソールが欲しかったのですが生憎店頭在庫切れだったため、今回は在庫があったSIDASというブランドの『3Feet(Low)』というものにしました。
後部にゲル素材が採用されていたり、好みのフィット感を選択出来たりと、今後このインソールの効果にも期待したいところです。

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ワックスがけについて

革の登山靴のワックスがけについては賛否あります。

私が前モデルのタホーを購入したときには店員から「手入れはヌバックレザー専用のスプレーだけにするように」と言われました。
最初の数年は言われたように専用スプレーだけで手入れをしていましたが、山行を重ねるたびにだんだんとつま先部分や側面が岩などに当たって傷んできました。(これは私の歩き方も悪いのでしょうが…)

そこでネットなどで散見された『ワックスがけ』を自分のタホーにも施してみました。店員には「ワックスはかけないでください」と言われていましたが、どうもワックスを過剰にかけてしまうとソール交換が出来なくなるようなこともあるようでした。

そこで私は薄く薄く塗り重ねるようなワックスがけをして、登山から帰ってきたら水でさっと洗うだけの手入れをするようにしました。
ワックスをかけるのは3~4回使用したらかけるくらいのペースでしょうか。

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幸いソールの張替えも問題なくできていますし、ヌバックレザーのしなやかな光沢や経年による風合いも出てきてますます愛着がわいてきました。
やはりこういった革製品というのは手を入れることでどんどん愛着がわくものですし、なによりしっかりと今の靴の状態を把握できるので、私はワックスをかけて良かったと思っています。

ただくれぐれもワックスがけは自己責任となってしまいますので、そのあたりの判断は使用者に委ねられていると思います。ちなみにこの10年間、登山中のソール剥がれなど、そういった問題らしい問題はタホーでは1度もありませんでした。

タホープロⅡの初陣

この新しいタホープロⅡを夏に購入して2,3ヶ月は使用前の手入れをしていました。薄くワックスを塗っては乾燥、また薄く塗っては乾燥を数回繰り返しました。
そしてようやく秋、山梨県は奥秩父の大菩薩嶺登山で初陣となりました。

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大菩薩嶺は上日川峠を登山の起点とすれば比較的ショートコースとなりますし、林道歩き樹林帯、稜線には短いながらも岩場もあるという山なので新しい靴の試し履きにはぴったりでした。

実は出発前は少しの不安がありました。
以前、はじめて前モデルのタホーを試した時のあの足首の痛みがまた出るんではないかと…。

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しかし、ふたを開けてみれば足首は痛くならないどころか、まるでもう何年もこの靴を履いてきたかのようなフィット感でびっくりしました。数回は慣らしで低山ハイクをする予定でしたが、その必要はありませんでした。

自分にとっての“相棒”

今回は私が愛用している登山靴のタホーを取り上げてみましたが、このタホーをすべての登山者に勧められるかと言われれば、実はそういうことではありません。

というのはこのタホーというモデルは軽量とは言え、やはりアッパーは固い“革”の登山靴です。
店員から聞いたところでは特に女性の中にはこの固さに足首が負けることもあって、そういう方々にはアッパーが柔らかい登山靴を勧めているということです。

登山靴選びはメーカーの宣伝文句を見たり、友人や知人が履いているから、ネットでの評価が高いから、などの理由で決めるべきではありません。
実際に足を通してみて自分にフィットしているかはもちろん、
・自分がやろうとしている山行(日帰りなのか、小屋泊なのか、テント泊なのか)に合っているのか
・自分が登ろうとしている山にも合っているのか
を考慮に入れつつ選択しなければなりません。

そんな時にこのLOWAのタホーも選択肢のひとつとして入れてみてはいかがでしょうか。


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