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【Global AR Interview】前衛的すぎる!?ハンガリーの配送業者向けMRサービスの誕生ストーリー

海外のARスタートアップのファウンダーやキーパソンに突撃インタビューするシリーズ企画『Global AR Interview』。

今回は近年ECサイトユーザーの増加により顕著になったデリバリーの再配達問題を解決する「SuperDelivery.ai」を手掛けるFranics SzakacsさんとDavid Bisztraiさんからお話聞きました。

最初に彼らのアイデアを聞いた時には、「なるほど、そんな使い方もあるのか」と感じるほどかなり斬新なアイデアで、興味を持ったのでインタビューさせていただきました!

Q: まずは二人の会社について教えて!

Francis:僕らはスムーズな宅配サービスを可能にするビジネスモデルを作ることにフォーカスしながら、ECの会社を経営しているよ。オンラインストアで購入したカスタマーが、宅配が届くまで家で待っていなくちゃいけなかったり、集荷場まで取りに行かなくちゃならないような状態をなくしたいんだ。気づいたら魔法のように家に荷物が届いているような状態を実現することが僕らのビジョンだよ。

Q: 始めからAR技術に着目していたわけじゃないんだね!どういう経緯でARに関心をもったの?

Francis:僕らは最初スマートメールボックスを各ユーザーの家に設置する実験から始めたんだ。だけどすぐにこのアイデアは途方もなく大変なことに気づいたよ(笑)

次に住人が家にいなくても、配達員が家に入ってこれるような仕組みを考えたんだ。これは本当にトリッキーだし、いくつものプライバシーやセキュリティの問題を乗り越えなくちゃいけなかった。最初はAmazonが取り組んでいるようにスマートロックやスマートカメラを使って、この問題を解決しようと思ったんだけど、難しかった。

そしたらある午後ブダペストの通りを歩いてる時に、共同創業者のDavidが僕にあるアイデアを提案してきたんだ。だけど、最初は笑いながら即座に否定したよ。彼のアイデアはあまりに狂ってたから(笑)

David:今でもそのアイデアを彼に話したときのことは鮮明に覚えてるよ。Francisは僕が狂っちまったんじゃないかと心配してたんだ(笑)

Francis:彼のアイデアはMRヘッドセッドを各宅配業者に被ってもらってもらうというものだったんだ。そうすると宅配業者は家の中のプライバシーを侵害せずに家の中に荷物を届けることができる。

そうやって僕らはARやMRの技術に興味を持ちはじめたってわけ。

David:最初は狂ってると思っていたけど、段々と二人ともこの方法で僕らが解決したい問題を解決できるんじゃないかと思い直しだしたんだ。

奇妙に見えるけどAR技術を使うことによって、今まで解決できなかったプライバシーの問題を解決できると思ったんだ。

Q: それがSuperDelivery.aiへと発展するんだね。SuperDelivery.aiのコンセプトを教えて!

Francis:SuperDelivery.aiはオールインクルーシブホテルのような体験を自宅で体験できるというものだと思っている。

ホテルに宿泊してるときに、部屋の中のアメニティがなくなっても気づいたら補充されているよね?それと同じような体験を、家の中でも実現したいんだ。

SuperDelivery.aiはラストワンマイルの荷物配送に特化した配送サービスだ。配達人はみんな我々が開発したLIDARとデプスカメラを装着したMRゴーグルとモーショントラッキングが可能なスーツ、そしてバックパックPCを装着しながら配達を行うんだ。

我々の開発するシステムのおかげで配達人はナビゲーションに従いながら、プライバシーを侵害せずに家の中に入って荷物を届けることができる。配達人が不審な動きをしたりすると、AIがそれを検知して知らせてくれる。

どうやってSuperDelivery.aiのコンセプトを検証しているの?

Francis:僕はサービスデザイナーなんだ。だからまずデザインプロセスとシステムデザインの観点から検証を始めたよ。まず手始めにシステムマッピングワークショップをして、このサービスの重要な登場人物と最もリスキーな思い込みを洗い出したよ。

その後に潜在ユーザーにインタビューをしながら、バリュープロポジションを検証したんだ。そしたらインタビューした多くの人々が僕らのアイデアに共感してくれたんだ。

次にMRデバイスでカスタマーのセキュリティやプライバシーをきちんと守れるかどうかを検証したよ。この検証で難しかったのは、そもそも多くの人がMRを使ったことがなかったから、インタビューができないということだったんだ。

そこでぼくらは沢山のWebVRプロトタイプを作って、宅配人のMRビューを再現したんだ。最初はGoogle Cardboardで実施してたけど、後半はMicrosoftのMRヘッドセッドを使ったよ。

僕らはこれを実際に宅配をやっている人たちにも体験してもらってどう感じるかインタビューしたんだ。そしたら驚いたことに多くの人がポジティブな反応だったんだ。

David:次に我々は一連の体験が実際の住環境で実現できるかについて確認する必要があると思ってる。僕はまだいろんなことが気になっているよ。もしかしたらスマートロックのほうが体験のほうがいいんじゃないかとかね。

でも最近ではAmazon Key(Amazonが提供するスマートロック)のサーベイで、「80%の人が『Amazon Keyを使った配達人が自分の家の物を盗むのではないか』と恐れている」という調査結果もあって、配達人が自分たちのプライバシーを犯すかもしれないという恐怖に対して僕らのシステムが有用だと思っている。

僕らのシステムがもうすぐローンチされて、配達の問題を解決できるのではにないかと最近は確信しているよ。

Q: 二人が作ったプロトタイプについてもう少し詳しく教えてくれない?

Francis:いいとも!大事なのはどうやってAR体験を再現していくかということだと思うんだ。

最初は配達人が家に入ったときに見える風景を360度画像で再現したプロトタイプを作ったんだ。家の中のプライベートな部分を白く塗りつぶして、配達人が荷物を置く部分だけ見えるようにしている。

この画像をGoogle Cardboardで宅配をよく使うような人たちに見せてみて、安心できるかどうか、プライバシーを侵害されていると感じるかどうかをインタビューしたよ。

次に家のロビーを3Dモデリングして配達人の視界をよりリアルに再現しようと思ったんだけど、これはあまりに工数がかかることがわかって諦めたよ。

それで今度はAR.jsでモバイルARのプロトタイプを作ったんだ。家の壁に貼られているマーカーを見るとその部分がARで白く塗りつぶされるようにして、SuperDelivery.aiのAR体験を再現しようと思ったんだ。

だけど、ヘッドセットの体験じゃなかったからインタビュー参加者を誤解されるような結果になってしまって、失敗してしまったよ。

それで最終的には自分が配達業者の役になって撮影した360度動画を作成することにしたんだ。

この動画にはいくつかモックのUIがオーバーレイして表示されていて、インタビューの参加者はヘッドセットを被ってこの動画をみることで、配達業者の人がどんな風景を見ながら自分の部屋に入ってくるのかをイメージできる。

部屋にはいるまでは通常の360度動画で、部屋に入った瞬間にLiDARでスキャンした部屋のスキャンデータを表示するようにしているよ。部屋に入ったあとは6DoFでスキャンデータの中を自由に動けるようにしている。

Q: 最後にARがどんな風に僕らの生活を変えると思うのか、二人の意見を聞かせて!

Francis:MRは次世代のメディアだと思っている。僕はマーシャル・マクルーハンという文学者の大ファンなんだけど、彼は「メディアの特徴は、そのメディアのコンテンツが常にそれより前のメディアである」と考えていた。

この考えに則れば、僕らが今日目にする多くのもの、例えば道路標識だったり、テレビやノートブック、部屋の壁の写真、建築物、ファッションなどなど、情報を表示し、人間の入力を受け取るものはすべてMRのコンテンツになるんだとおもっているよ。

この特性はWebが台頭した時ととても似ているけど、一つだけ違うのはMRはコンピューターからデジタル情報が溢れ出て、人間の生活空間と深く入り交じる点だと思う。

僕らはまだ多くの人にMRを受けて入れてもらえるようなフォームファクターを見つけていないけど、専門的なMRの利用が増えて来ているのはMRが多くの人に受け入れる前の一つのシグナルなんだ。

HololensやGoogle グラスが専門的なユースケースにフォーカスしているのは偶然じゃないと思うし、僕らも最初はここにフォーカスしたいと思ってるよ。

David:僕は映画のレディプレイヤーワンとパシフィック・リムが大好きなんだ。レディプレイヤーワンはAR/VRの可能性を見せてくれるし、パシフィック・リムは人間が巨大なロボットをコントロールできる可能性を示してくれる。

この両方の映画から学び取れるビジョンを組み合わせて、僕は未来を思案しているんだ。

自動運転や完全自動のロボット技術などの分野にも僕は興味があるけど、これらの技術は人間のパフォーマンスに達するまでまだまだ時間がかかると思っている。

MR技術を使って、遠隔でロボットを動かしたり、車の運転手をサポートするようなステップを踏みながら、徐々に自動運転や完全自走のロボットなどが実現されるんじゃないかと僕は考えているよ。

最後に

AR/MRの領域では「Diminished Reality」という、AR技術を使って現実空間のオブジェクトを消す(隠す)というような研究もありますが、まさに今回ご紹介したSuperDelivery.aiはこの手法をビジネスアイデアに落とし込んだ事例だと思います。

「現実を編集する」ことができるAR技術によって、これまでめんどくさいと思っていても諦めてしまっていた負を解決できるアイデアが沢山でてきそうです。そういったアイデアを見つけるためには、これまで諦めて「当たり前」(例えば「宅配業者が自分の留守中に家に入るのは不可能」)にとらわれず、壊していくことが求められると二人にインタビューしながら感じました。

MESONでもこれまでの当たり前にとらわれずに、AR技術を使って様々な負の解決や体験の創造に一緒に挑戦してくれる企業様を随時募集しています。

MESONの手掛けるARスタジオ事業ではパートナー企業様と一緒にお客様が抱える負やこれまで諦めてきた当たり前を見つけ、AR技術を活用して課題解決に取り組ませていただきます。

ご興味がある方はぜひMESONのサイト、もしくはTwitterのDMからご連絡ください。




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小林佑樹(ARおじさん)

株式会社MESON COO/AR(時々VR)の気になったサービスやニュースや自分が作ったARプロダクトについて発信中/人生の目標は「AR」の純粋想起を勝ち取ること/ぜひ気軽にフォローしてください!一緒にAR、VRについて語れる友達も募集中です!

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