見出し画像

日本初の本格的なARクラウド展示をした様子とそこから得た学び

4/28〜29に「078Kobe」という神戸の街全体を挙げてのクロスメディアイベントで日本初の点群データを用いた本格的なARクラウドの展示を博報堂DYホールディングスの方々と一緒に行いました。

今回このブログでは本格的なARクラウド展示した時の様子と、それらを通してどんな発見や学びがあったのかについてご紹介します。

今回の展示テーマである「ARクラウド」とは?

これまでのAR技術では自分が見ているAR空間と近くの人が見ているAR空間はそれぞれ閉じられた空間となっていたので、AR空間内での複数人がコミュニケーションを取ることができませんでした。

そこで複数人でのAR空間の共有を実現するのがARクラウドです。ARクラウドは現実空間の場所とデジタル情報を紐づけて保存・管理します。

ARクラウドを用いることで複数端末のAR空間が同期され、みんなが同じ空間上に同じデジタル情報を見ることできます。

ARクラウドアプリケーション「AR City in Kobe」について

今回我々が作ったのは、「AR City in Kobe」というARクラウドを用いたまちづくりアプリケーションです。

ARクラウドを通して複数の体験者が一緒にAR空間のなかでまちづくりを行うことができます。

AR Cityは普段ARやARクラウドといった技術に関わらないような一般の方々でもARクラウドの仕組みやメリットを理解してもらいながら、同時にまちづくりも楽しんでもらえるようなコンテンツとして設計、開発しました。

イベント当日は下図のような体験ブースを設営し、5〜10人の体験者の方にブースの中でiPad Proを使って同時に体験していただきました。

我々が設営した体験ブースは予め点群データがスキャンされており、体験者が配られたiPad Proを使ってブースを再スキャンすることで、iPad ProがARクラウドに接続されます。

iPad Proを通してブースを覗くと上の画像のように、我々がモデリングした仮想の神戸フィールドをARでみることができます。

そして同時にブースでiPad Proを覗いた体験者の方々はARクラウドで同じフィールドを共有しているので、誰かが行ったアクションが別の体験者のiPad Proからもみることができるようになっています。

今回はこの仮想の神戸フィールドに体験者の方々が想い想いに自分の好きな建物を建てることができるARコンテンツを展示しました。

実はいま神戸の主要駅である三宮駅周辺は再開発が進んでおり、今回はその再開発にも絡めたテーマでこのアプリケーションを設計しました。

たとえばある体験者が駅前に公園を建てたいと思って、AR Cityの中で公園を建てると他の体験者からARでみた神戸のフィールドの駅前にも公園が建てられます。

以下の動画はAR Cityをプレイしてもらっている動画です。

動画をご覧いただけるとわかるように、体験者の方々は神戸の好きなところに好きな建物を建てていき、それを他の体験者と共有することで複数のみんなで一緒に2030年の神戸の姿を考えることができるのです。

AR Cityをプレイした体験者の方々の反応

今回の展示で最も予想外でかつ嬉しかったのは子供から大人までこぞって自分から写真を撮ったり、自分自身がARフィールドの中に入って友達に写真を撮ってもらったりしていたことです。

また小さなお子さんたちもブースの中を走り回り、ARフィールドにどんどん建物を建てていきながら、親御さんや一緒に来た友達と自分が建てた建物のことをについて話し合っていました。

なかには体験後にブースに戻ってきて、もう一度プレイしてくれたようなお子さんもいらっしゃいました。

今回のAR Cityの展示では全体で10分ほどの体験として設計しました。

当初はもっと短い時間でないと体験者が飽きてしまうのではという議論もしていたのですが、予想に反し多くの方々が10分では足りないと言わんばかりにずっとiPad Proを覗き込み、建物を建てたり、自分たちがつくった街を鑑賞するといったAR体験に没頭していました。

ソーシャルな体験がより多くの人をARに熱中させる

これまでまちづくりができるARや、今回のインタラクションに似たARアプリはたくさんありました。しかし、その多くはここまでユーザーを熱中させることはなかったと思います。

いままで自分ひとりだけしか見えず、アクションができなかったAR空間に自分以外のアクションが介入したことで体験者の方々のAR体験への没頭度、そしてアクティブさはこれまでのAR体験とは全く異なったものになりました。

AR空間に他者が介在したことで、人々がARに対する見方は全く異なったものになり、より熱中できるものへと変わったのは間違いないと思います。

Super VenturesのパートナーのOri Inbarは「ARクラウドのないARアプリの体験は1996年のウェブサーフィンのようなものだ」と表現しています。すなわち、SNSなどがなく、他の人たちと簡単にインターネットの中でコンテンツをシェアできなかった時代のインターネットと言う意味です。

(「Introduction to The AR Cloud」より引用)

多くの人々がインターネットに熱中し、多くのコンテンツが出てきたのはブログやSNSが出てきて、インターネットの中で他のユーザーに簡単にコンテンツをシェアできるようになってからでした。

インターネットがそうであったように、ARクラウドを通して生まれるソーシャルな体験がARコンテンツの価値を高め、人々がよりARに魅力を感じるようになる。

ARクラウドと聞くとどうしても技術的なこと、なにか便利になることばかり考えがちですが、それ以上にまずAR体験に人々を熱中させる力を持つということを今回の展示を通して再認識することができました。

そしてこれからはどんどんAR体験の共有が可能なARアプリケーションが主流になってくるため、今からARクラウドを使ったAR体験の共有を前提としたARアプリケーションを考える必要があると確信しました。

最後に

今回は078Kobeでの展示を通して得られた発見についてご紹介しました。今回のARクラウドアプリケーションを実現した開発方法や具体的な技術に関してはまた別記事でご紹介します。

またMESONと博報堂DYホールディングスはARクラウドの共同研究に関してご一緒に開発や研究をしていただけるパートナー企業も募集しています。

一緒にARクラウドの活用方法や開発にご興味がある方はぜひ弊社サイトのフォーム、もしくはTwitterのDMからご連絡ください。

一緒にARクラウドを活用した面白い事例を作っていきましょう!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?