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【AR Talk】ARで人々をどう熱狂させられるか?|前元氏が考える新しいエンターテイメントの形

ARの技術やトレンド、未来について語り合う対談記事シリーズ「AR Talk」!

第三回はARを使った新しいエンターテイメントを作るENDROLLのCEO、前元さんにお話をお聞きしました。

ポケモンGOを始めとするARを使ったゲーム、エンターテイメントを研究し、どのようにARを活用できるのかを考えておられる前元さんにARとエンターテイメントの形やポケモンGOを作り上げたNianticの強さなどについてお聞きしています。

ENDROLL創業前はARもゲームも全く関わりがなかった

ARおじさん:まずは自己紹介からお願いします!

前元さん:ENDROLLのCEOの前元と言います。

ぼくは今はARゲーム、エンタメって切り口でやってはいるんですが、元々AR業界、ゲーム業界、スタートアップのどの畑の出身でもありません。

学生時代は、アイセックジャパンっていう世界最大規模の学生NPO法人にいましたが、その後大学を中退をして、webVRの会社に入社しました。

そこでは、webVRのコンテンツ開発にも携わりましたが、メインは事業管理のようなことをしておりましたね。

ARおじさん:そうだったんですね〜!ゲームもARも全く関係ないですね(笑)

前元さん:もう全然。ゲームなんか作ったことないです(笑)

VRに触れる中で『最高の没入』の意義に気づいた

前元さん:そんな折に『あれ、VRってまだまだそれ単体で最高な没入をさせるってわけにはいかないな』ってことに気づいたんですよね。

VRで何かを視聴するときに、現実世界からバーチャル世界への移行が極めて断絶されてしまっているなと。それを埋めてあげるためには、共通の文脈をリアル→バーチャルに作ってあげなければならない。

例えば、深海のコンテンツを見せてあげるときは『これは海中を見るためのゴーグルです。ゆっくり息を吸って、それでは一緒に深海を冒険しましょう』と。

そういう誘導をしてあげないと、気持ちがまず没入していかない。

そういったところでのノウハウはENDROLLが作る作品にもtipsとして入っていますね。

ARおじさん:なるほど、視界の没入よりも先に気持ちの没入が大事であるということですね。

そういうのはENDROLLさんが7月にクローズドβを公開されたノンフィクションレポートでもかなり意識して作られてますよね。

前元さん:そうですね。行動様式として、そもそもスマホ越しに何かを見ることも、スマホ越しにしか見れないものが存在していることも不自然ではあります。

だから、なぜスマホを覗いたらこれが見えるんだっけ?ってのをシナリオなどを通して伝えてあげることでのめり込んでいける。

こういう説明的な要素を自然にやってユーザー教育ができるというのは、ゲームならではですよね。

ARおじさん:確かにゲームならではですね!面白い!

ARゲームとかって突然「これは魔法のレンズです!」みたいに設定放り出しな感じのものも多かったりするから、ユーザーが取り残されちゃうみたいなのも結構あるので、そういう意味で前元さんたちのゲームはユーザーに対して丁寧さを感じますね。

前元さん:弊社はテクノロジーにも力を入れていますが、あくまでもエンターテイメントの会社なので「どう体験を届けるか」という部分にはいつまでも強くこだわりたいですね。

これからもすごい速度で技術は出てくるでしょうけど、弊社はそれを常に一番面白く使える会社でありたいです。

ARおじさん:素晴らしい!

ENDROLL社は『主人公として、人生に熱狂できる体験』を届ける

ARおじさん:御社の紹介ももう少ししてもらっても良いですか?いまのメンバーとかARを使って目指そうとしてる世界とか教えてもらえると嬉しいです!

前元さん:ENDROLL社は、エンターテイメントの力で、「主人公として、人生に熱狂できる体験」を届ける会社です。

今の時代、個の力も強くなり、みんな結構自由に生きられていますが、世の中のルールってどうしても画一的になるじゃないですか。だから結局、好きなことをしろ!っていうのも、好きな、世間的に良いことをしろ!っていうニュアンスになっちゃうんですよね。

僕、高校の時に、FPSにすっごいはまってて、女子から人殺しのゲームする人って後ろ指さされてたんですが、まあそれが肯定されてもいいんじゃないかなwと

ARおじさん:なんかやばいこと言ってる(笑)

前元さん:(笑)

魔王でも主人公でいいじゃんと。そんなルールの世界があってもいいと
だから僕たちは、世界に、ゲームという色々なレイヤーを被せていって、圧倒的に没入できるコンテンツを作ることによってこの世界では僕は主人公だ!っていう経験をたくさん作っていきたいんです。

ARおじさん:世界にゲームというレイヤーをかぶせる事ができるのがARですもんね。

そうすると「AR x ゲーム」というのもすごい合点が行きますね。

海外よりも日本の方がARで攻めやすい

前元さん:ARを選んだ背景は必ずしもそれだけってわけではないんですけどね。

全然VRで作らないかと言われるとそういうわけでもないんですけど、第一に僕らのようなシナリオを重視するゲームは特にカルチャーの影響を大きく受けるので、結構グローバル対応が難しい。

今は、日本市場が成熟しきったと言われてるので、各社海外展開に必死ですが、ローカライズを丁寧にやる必要性はとても高いと考えています。そのため、まず進出する場所はカルチャーできちんと区切らなければならないと。

また現時点の話でいうと、ARの対応端末はiPhoneシリーズの方が多いですから、その意味では日本のiPhone所持率は稀有ですし、通信環境も申し分ないです。

そういう攻めやすさみたいな視点と、あとはVRで頑張っていくとやっぱりハードの売れ行きに制約を受けてしまいますが、僕らはユーザーさんとたくさん壁打ちをしてコンテンツを作っていきたいのでスマホをプラットフォームにできるという点で、一番フィードバックが多くなるかなってのも考えてました。

ARおじさん:なるほど、そうすると今は日本にローカライズされたゲームを作って日本のARゲーム市場をとるのがENDROLLさんの目標なんですね。

前元さん:そうですね。そういう意味では、弊社がARゲームが戦うマーケットってゲーム市場って感じでもないかなというのは最近感じています。

ARおじさん:そうすると「ARエンタメ」という言い方のほうが正しいですかね。

前元さん:んーこれ、本当申し訳ないんですが、全然定義できていないです笑 少なくともディスプレイの中に収まる体験はすでに終わろうとしていて、それがリアルな場所や繋がりを含むものになっていくので、もしかすると「遊び」という方がニュアンスとして近いのかもしれません

ARおじさん:なるほど、「AR遊び」ドメインとでも言いますかね?笑

前元さん:次までに格好いいのは考えておきます笑

デジタルで完結していたコミュニケーションがARによってリアルに帰ってくる

前元さん:ARって、誰かとやる方が圧倒的に面白いじゃないですか。

現実がフィールドになるので、友達と一緒にワイワイやるのが醍醐味だったりします。そうすると、ARはリアルなコミュニケーションを促進するもの、と捉えることができます。

エンタメの価値の本質って、コミュニケーションを生むことにあると思うんですよね。

例えば、『〜〜まで攻略したよ!』とか、『一緒にやろうよ!』とか。

昔、友達の家に集まってスマブラをした感覚とでもいうんでしょうか。あれをARは促進させるんだと思うんです。

そう見ると、ソシャゲによってどこでもゲームができるようになった現在とはある種逆行して、ある程度の場所の制約を受けながら、でも誰かと遊ぶための理由として消費されるコンテンツが、ARゲームなんじゃないかと思うんですよね。

ARおじさん:ソシャゲ時代にはコミュニケーションは一度デジタルの世界に完結する形になってしまった印象ですが、それがARによって再びリアルの世界に帰ってくるんですね!

そうするとARゲームはこれまでのソシャゲの手法が通じなくなる、全く新しい市場になる可能性が大きいですね。

ARゲームはソシャゲとは違う新しいビジネスモデルを生み出す

前元さん:課金を考える上でも、コミュニケーションに重点を置くことによって新しい消費が生まれると思っています。

例えば、ゲームセンターに友達と行って、思わずコンティニューに100円を入れてしまうように、友達がいるからこそ生まれる財布が広がると思っています。

ARおじさん:うんうん、確かにゲーセンに友達と行くと思わず100円入れてしまいますね笑

前元さん:可処分時間の奪い合いのビジネスという意味では一つに、移動時間などの小時間ではなく、放課後であったり休日の中〜大時間を攻めることになりますし、後もう一つの観点で言うと、可処分時間を占有するためには、接続をきりにくいことも重要なんです。

ソシャゲってすぐ始められて、すぐ切れるじゃないですか。これをまとまって占有しようと思うと、物理的なコストをユーザーが払っている環境が大事なんです。

ARおじさん:なるほど、物理的なコストというのは具体的にはどう言ったものですか?

前元さん:例えば、『動物園に行く』とか、『旅行に行く』とか、自分が足を使ってどこかに行った場合だとつまんないからすぐに帰ったりはしないですよね。

ARおじさん:あー、なるほど!

前元さん:ARで遊びを考える上でも同じで『ここまで来たのだからとことん楽しもう』と言う方向にユーザーの心理が働きます。

週の1時間を占有しようと考えた時のアプローチがソシャゲだと「15min x 4」ですが、僕らは「60min x 1」といった具合になります。

ARおじさん:でもそれって離脱がしづらい一方で利用の開始ハードルも高くなりますよね。

前元さん:そうですね。そう言った意味でも一人の消費行動としてはなかなかきついものがあります。

だから遊びになる口実というのが大事なんです。誰かと遊ぶというマーケットだからこそ、自分一人では越えられなかったハードルを好きな人と時間を過ごすという前提が、越えさせてくれるんだと思います。

ARがコミュニケーションの口実を作る

ARおじさん:その話を聞くとPokemonGOとかってポケモンとかチームっていう最強の口実があるからこそ強いんですね笑

前元さん:そうですね、今更ながら弊社全員ポケGOに熱中しているのですが(笑)

レイドバトル、すごいですよ。おばちゃんが自転車で駆けつけて、平気で周りに話しかけてます。

ARおじさん:す、すげー笑

前元さん:地域ごとにライングループなんかもあって、新しいコミュニティも生まれてる。

ARおじさん:そんな事が起きてるんですね。。。

前元さん:これは確実にソシャゲの域を超えていますよね。ナイアンティックさん、おそるべしです。

ARおじさん:自転車で駆けつけるおばちゃんなんかはソシャゲだとあんまりやりそうなイメージないですよね。

そういう意味では同じゲームでも結構ターゲット層も変わってくるんですね。

前元さん:ソシャゲの場合は電車の中で同じゲームをしている人を見つけても、話しかけないですしね。

ARおじさん:日本なんかはそういうコミュニティ文化みたいなのは根付いてそうだから、相性が良さそう。

前元さん:まさに!日本人、シャイな印象もありますが、ポケGO見てる限りそんなことないですよ。街でも、勇気を出して道を聞いてみたりすると、意外と好意的だったりするじゃないですか

僕らはコミュニケーションがそもそも好きで、ただ口実がなかった

僕らはその口実を作って行くことで、新しい喜びだったり消費を作ろうとしているんです。

ARおじさん:ARでコミュニケーションの口実を作るというのは、面白い視点ですね!

NianticはARエンタメ領域において圧倒的な牽引力をもっている

ARおじさん:ARでゲームをする上でNianticという存在は絶対に無視できないと思うのですが、Nianticのことはどう見てますか?

Nianticも複数人でAR空間を共有する技術などに最近取り組んでいるみたいですけど。

前元さん:率直に、とっても綺麗でパワフルな展開をされておりますよね!

ポケGOのKPIって、歩行距離らしいんですが、これはコンテンツとしての面白さとビジネスの優位性の両方に起因するめちゃくちゃいい指標ですよね。

ARおじさん:へー!ポケGoのKPIは知らなかったですね!

確かにいい指標ですね!競合としての怖さもある一方でプラットフォームの公開なども宣言しているのでARゲームデベロッパーはよりARゲームが作りやすくなるのかなぁとも思ったりしてます。

前元さん:Niantic自身が公言しているように彼らはテクノロジーのカンパニーです。

今小林さんがおっしゃっているように、彼らはARCloudの構築が狙いなのでコンテンツは現実空間をスキャニングするための、面を抑えるものとして位置付けられているのかなと思います。

ちなみにKPIとして設定されている歩行距離に関しては、公開されている情報だと2016年末段階で総歩行距離87億km、地球20万周分という驚異的な数値です。

Glass、Cloudの時代に備えた動きを着実に進めて形にして、競合のデベロッパーですら今から仲間につけようとしているNianticさんはやっぱり圧倒的な牽引力を感じます。

ポケモンGOは人を動かすパワーで新しい経済価値を生み出している

前元さん:ポケモンGOがいかにゲームとして優れているかってのも最近色々と研究して自分なりにわかってきたんです。

ARおじさん:おお!ぜひ聞かせてください!

前元さん:まず先ほどのKPIの話からですが、ソシャゲって必ずしも「めちゃくちゃ面白い」=「お金になる」って構造を作れないモデルになりがちです。

だから、どうゲームを面白くするかとどう課金してもらうかが、ちょっとずれちゃうパターンってやっぱりあるんですね。

ポケGOは課金もきちんとされていますが、やっぱり人を動かすパワーで新しい経済価値を生み出しているので、『面白い = 人がたくさん歩く = お金になる』 っていう方程式をきちんと組めている。

かつ、ユーザー課金に依存していないため、P2W(pay to win)ではない健全な設計ができています。これ、何気に圧倒的な優位性です。

スマホゲームは可処分時間の奪い合いですが、ポケモンGOは歩くっていう誰しもが持ってるけどうまく使えていない時間をとってるので、そこも抜きん出てる。

ユーザーからすると、せっかく歩くのだから、ポケGO起動しないと勿体無い、みたいな心理が働くんですよね。

ゲームシステムとしても優れていて、ポケモンに出会う、ポケストップが見つかる、ジムが見つかる、遠征に行く、ここら辺の頻度の設計がとても心地よいものになっているんです。

それと何と言ってもポケモンとARの相性ですよね。ARってやっぱり妄想を具現化してくれるところにグッとくると思うんです。ポケモンの舞台の世界観は極めて中立的というか、色があまりなく、僕らが住んでいる世界みたいですよね。

だからやっぱり、あの湖にはラプラスがいるかな、とかそういう妄想が気持ちいいんですよ。

もうこんだけそろえばもう芸術ですよ。悔しいくらいにいいモデルとコンテンツだなと思います。みんなもやりましょ、ポケGO!

ARおじさん:ポケGoの宣伝になってる(笑)

ポケGoの考察とかは自分ではした事なかったのでとても新鮮で面白いですね〜。

ENDROLLは新しいエンターテイメントの時代を牽引する企業を目指す

ARおじさん:最後にこれからENDROLL、ひいては前元さんがどうARと関わっていき、今後どんなARプロダクトを作っていこうと思っているのかについて教えていただけると嬉しいです!

前元さん:ENDROLLという社名の由来でもあるんですが、僕たちは良いコンテンツはエンドロールが流れる瞬間が一番感情が高まると考えています。

良い映画やゲームのエンドロールを思わず最後まで見てしまうあの感覚ですね。

究極的には、人生そのものが自分の心を震わせる物語になって、生涯を終える瞬間にエンドロールが流れているようなそんな世界を作りたいです。

そのために、ENDROLLが提供するエンターテイメントの一つ一つが、決してその体験の枠だけに収まらずに、ユーザーの皆様のその後の人生という物語に熱狂するためのきっかけになればいいなと思ってコンテンツを作っています。「エンドロールから始まる熱狂を届ける」それが弊社のミッションです。

ARはそんなコンテンツを構成する、または届けるための重要な手段です。これまで内向きに閉じていた体験が、リアルなものや自分自身と密接に繋がっていく。そんな新しいエンターテイメントがこれから盛り上がっていくと考えています。

弊社はその時代を牽引する企業として、多くの人の人生が熱狂に満ち溢れたものになるきっかけとしてのコンテンツを生み出していければと思います

ARおじさん:ありがとうございます!前元さんたちが作る新しいエンターテイメント、楽しみにしてます!!

まとめ

今回はAR x エンターテイメントの分野でARの活用法を研究しているENDROLL CEOの前元さんにお話をお聞きしました。

「ARはエンターテイメントと相性が良い」と言われることが一方で実際に継続的な事業として成り立っているものはポケモンGOを除いてはなかなか挙げられないのが現状です。

今回前元さんのお話を聞いて、ポケモンGOがARの特徴をきちんと研究した上で作り上げられたARゲームの最初の一歩だったんだと改めて気づかされました。

同時に「ARによって新たに生み出されるコミュニケーション」というのはゲーム、エンターテイメントに限らず様々な分野で起こる現象だと考えられます。

「ARが生む新しいコミュニケーションがどのように我々の生活に変化を及ぼすのか?」「新しいコミュニケーションをどう活用し、事業にしていくか?」を考えるのはARを活用した事業を考える上で重要なポイントになると感じました。

弊社MESONでもAR/VRがどのように我々の生活を変えるのかや事業をつくっていけるのかを試行錯誤しながら、継続的にTwitterや会社ブログで発信しています。

MESONのメンバーと一緒にAR/VRアプリを開発したいと思った方や企業様はぜひ弊社HPか私のTwitterからご連絡ください。

筆者紹介

ARおじさん

株式会社MESON COOのARおじさん。開発から事業作りまでやる何でも屋さんです。

TwitterでARに関する様々な情報を発信しています。「ARでこんなもの作りたい」っていう相談にも乗りますので、Twitterでのフォロー、DMお待ちしています!

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