いつか読み終える春

今読んでいる本のことを書く。買ったのは10年以上前で、面白いと思ったのにどういうわけかなかなか読み進められず、放置して何度春が来て過ぎていったのだろう。

でも、意外と、何回ほどかなと数えるとそんなに大した数でもない気もしてくる。100年放置した本をまた読み始める、ということは、人間の寿命的に言いにくい。この本読みにくいから50年後にまた読もうと思っても、その時生きているかもわからない。人の一生はそんなに、長いといえるものではないと改めて思う。

白洲正子の、「花にもの思う春」がそれだ。きっと、春に買ったんだろう。読みやすい文のほうだと思うし、面白いところも幾つもあるのだが、ところどころで躓いて、そのたびに気分が腐って読めなくなった。やはりなんというのか、敷居が高かったのかもしれない。それか、春のもの憂さがあまりにも空気のように本の世界に充満している、かのように表現されていたためその空気にやられて沈没していたんだか、まあ今となってはよくわからない。たんに、読まなくても自分は平気だったということだ。時々開いては放りだしてきた。そんな本だ。

1年でも着なかった服は捨てろとか、その他にも使わないで放置していたモノはもう使う日は来ないから捨てろとか、とにかく捨てる効能を説く、整理収納アドバイザー的な人でなくても言いがちなことで、きっと、もっと早く処分してもよかった本なのかもしれない。でも、急にスローダウンして眠気を催すような、春の空気はいつかまた巡ってきて、なんだろうな。何かが引っかかっていたんだろう。

そういう本をまた読もうと思い立ち、今にして自分としては、真面目に読んでいるのは、去年の秋に「失われた時を求めて」を遂に読み終えたから。あ、この本でも読み終わるんだと思った。「失われたー」も、読み始めからすると、どれだけ放置したことだろうか。「逃げ去る女」の前後あたりで、心底飽きたというか、もういい、と思ってしまってから、まあ、どれだけの月日が流れたか知らない。

本自体が、あんまり読めないという時期も長かったし、だいたい「失われたー」の一文が長すぎてなにが言いたいんだか見失うことが何度も続いて、「もういっかな…!他にも読みたいものとか感動できることとか一杯あるしそんなにこれ重要じゃないや」と思っていた。その後いろいろあって読むことを再開し、とんでもなくだらだらとだったが、少しずつ読み続けたのだ。

そんなこんなで「失われた時」は自分にとって大事な作品だと思う、もう今となっては、そのかけた時間のこともあるが、何度も笑わせてくれた気の利く友達的な部分も大きいし、もともとの発端を云えば、そのタイトルだけで魅了された小説だった。でも、どうせならその題も「失われし時を求めて」のほうが100倍いいと思うが。「失われた」ってなんだよ。といつも思ってしまう。

うーん、「花にもの思う春」について、全然書けないかもしれない。ここ引用しよう~とか思っていたのに、笑

まあそうだな。読み終えてもないのになんだけど、「花にもの思う春」、気になったり目に留まったら、がぜん読んだほうがいいんじゃないかとは思う。いい本なんではないかと。って長らく読めなかったけど。内容は、新古今集について書いている。丁寧に、万葉集・古今集についても前説明があるし。しかし「万葉集」って聞くとどうしても、令和だよ。だんだん慣れてきたけども、令の和。なんやそれ。レイゲツワフウ。和風がワッフウ。わっふぅ。しかし、令和って最初にあの字面を見ながら聞いたとき、

アタイはどうしてもどうしてもいいイメージが湧かなかったの。

ってなんか変な物言いにしてごまかすくらいしか救えない、それくらいこころ打ち沈み、そのため レイワ?ええやんええやーん、と、割と自然に、いいイメージだと主張されている文をnoteで見かけては、そこだけへんに執着して読んでいた。「そうか…そうだろうか…いいのか…あれいいのか…あえてでもなんでもよく取ろうとしてくれる、そんなあなたはいい人だ xxx」みたいな。自分では思えなかったから、自然にそう思えている人のその解釈部分だけ頼ってしまったのであった。

でもね。本棚の画集を見ていたら、私は見つけてしまったんだ。「鴨井玲」の名前を…「鴨井玲」の令と思えば自分的にイメージアップというか味わい度がボッと上がったのは確実でした。でも、改めて鴨井玲の名前の玲ってなんだかすごいな。なんだこの名前。と今更ながら思ったりもした。

いや完全に脱線しているのはわかっているけど。

でも、どうせなら、万葉集じゃなくて新古今集からとったら良かったんじゃないかと思う。クールジャパン…つまりクールジャパンって言いたいのね。レイワって。今はっとしたわ。そんなのとっくに気づいてるって人が他にもいそうね。いや、だから、クールジャパンとか美しい日本とかほんと、そういう、なんなんだかはっきりしない空虚な言葉を躍らせるなら、新古今集からとったほうがむしろクールじゃん尖ってんじゃんと思うのであった。

本当はもう一つ脱線ネタがあったのだが、いったん、ここでやめようと思う。

せめて今度こそ。今春のうちに読み終わればいいけど。そんな一冊。




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