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おんがくのつくりかた 9 ー実践編

売り切れ

■AudioStockの第一審査を突破せよ

最近、DTMレッスンの生徒が増えました。1時間の個人レッスンなので、実は増えれば増えただけ講師の負担は増えるのですが…、商業的には喜ばしい事なのでしょうね。DTMで楽しみたい、という人が増えてくれれば幸いです。

現行の生徒からよく問われる質問で「どうしたら売れるようになるか」というものが多いです。そんなの、こっちが知りたいわっ と心の中で叫びつつ、「いい曲を作ればいいんだよ」などという、もはや逃避としか受け取れない言葉を吐くつもりはありません。売れている曲と売れていない曲、それぞれには必ず違いが有るはずです。生徒の多くは「知名度の問題」としてすぐに片付けがちですが、その知名度はどうやって築かれるのか、というと当然、売れなければ積み上がりません。つまり、知名度があるから売れるのではなく、売れたから知名度があるわけです。そこの順序はとても大切です。

此処では「売れさえすればいい」などという曖昧な発想もありません。そもそも、「審査を突破しない」という事に悩んでいる生徒が多い中での…、そういうレベルでの話です。楽曲販売サイトとしてAudioStockを推している私ですが、生徒の中には、切実に音楽を売って稼ぎたいという人もいて、そういう人にとって、曲を作っても、「売り場にすら出してもらえない」という状況は致命的です。なんとかして、せめて売り場にくらいは出してもらわないと前に進めません。

ところがこの「一次審査を突破する」というのが、とても難しい人もいます。その原因が何なのか、今回は私の実経験から探りを入れていきます。

■何がダメなのか

審査とか、コンペとかってやつはさー、「不合格です」って言われるって、凹むよね。わかるー、わかるよ。なんてったって、私も就職氷河期に何十社にも曲送って、ぜーんぶ「不採用」喰らった人だからね。1つや2つならまだしも、やれどもやれども不合格と言われると、心が折れるには十分だよね。問題は「何がダメなんですか?」っていう部分。それを教えてくれねーかなー? って思ってました。

審査する側の本音、ってのを聞いたことがあって(某遊戯機器メーカー)実は、「聞いた瞬間に判断できる」のだそう。音楽の内容とかそういうものではなくて、不採用、とは5秒で判断されている。聞いて5秒で何がわかるのさ?と思いますか? 私は5秒でわかります。内容の問題ではない、「サウンドの質」の問題があるのです。

M3などの即売会イベントでの「試聴」ってありますね。この試聴によく似ていて、じっくり堪能することができない場合、何で判断するか、という部分によく似ています。

具体的には「ドラムの音」でしょう。異論反論は当然出るでしょうが、曲頭のシンバルの音、コレです。安物の音源臭い音、ではこの時点でアウト。

オーケストラ系楽曲のジンクスとして、「どおおおおん、ばあああーーん」「ぱんぱかぱーーーん」「ばしゃーーーーん」「だがだがだんっ」という始まり方は正義、というものがあります。これは、おそらくすべてのジャンルで同じ事が言えるでしょう。これは、大変短い時間で音楽の印象を決定しなくてはならない場合とても有効な手段となります。しかし、だーからといって、みんながそれをやっているので、中身が無いのもバレます。私は「ごまかし」のためにコレをやっている曲を即座に見抜けます。あーはいはい、どかーんスタートね。そうだね。そうなるよね、と。

本来は「そういうこっちゃないんだよ」と言いたいのですが、それがある程度世の中にまかり通ることも事実です。ただ、ここでの言いたいことはそういうことではなくて、多くの「不採用者」が見落としているのは

どかーんとやってうまくいくのは 高級な音源使ってるから

これに尽きます。つまり、サウンド的なクオリティーがとてもとても重要です。

プロに言わせればあまりにも当たり前過ぎて、アドバイスとしてそれを言っている人は見かけた事がありません。

フリーのサウンドフォントや、安物の音源でこれをやっても、高級音源を使った人に「勝てるわけがない

Audiostockなどの商業用音楽素材サイトは、素人さんの登竜門ではありません。プロの人たちがひしめき合う、市場です。相手をするのはその道のガチプロです。組織立っていて、経費を使い、勝負しています。

一次審査を突破できない人の多くは、これが最も問題です。

そのドラムの音、そのピアノの音、ストリングスの音、その音のクオリティが、プロの人との比較で「すぐにバレる」ほどチープなのです。

特にAudioStockの審査突破には、普通の音楽作りには無い難しさがあります。使う側は、主にプロモーションとして使う事が目的なので、音から「チープさ」が伝わってしまうわけにはいかないのです。「ゴージャスな音」「ちゃんとしている音」「お金使ってる音」が重要になります。

■お金、使ってる?

この「お金使ってる音」というのがわからない人が多い。これ、何故なのか未だに解明できていませんが、DTMをやっている人に多い気がします。自分が作る側なので気付かないのかもしれません。

「…安い音だなぁ…」と思う曲は、もう聞くきにはなれません。ボカロ全盛期、この「安い音」の楽曲がニコ動で大人気を博し、さらに、ここはあえてタブーに触れるとすれば、東方紅魔郷、などははっきり言って安い音です。東方のアレンジが流行った真の理由とは、良いメロディーなのに安い音だから、ゴージャスな音にアレンジした曲が聞きたい、という心理が働いていたからだと思うのです。

安い音、は「表現」として悪いわけではありません。むしろ、チープさを出すためにどうしたらいいか、の方がはるかに難しい。ですが、「審査」の場合「あえてチープさを表現した」という曲はことごとく弾かれます。クオリティーが達していない、という通知が来ます。実は私もこれらの実験を何曲かで行い、「チープな音」のボーダーラインを見つけています。

チープな音、は元々人気があります。音楽の表現としては十分な魅力があります。ですが「音楽素材として売る」には全く向いていない表現だと覚えておきましょう。

そして、「チープな表現」が好きで、DTMを始める人が多いのでしょう。ボカロ全盛期、こういう音楽はとても流行りました。

とても間違えている表現と自覚の上で、あえて書くと、ファミコン音、のようなピコピコも、チープな表現の代表格です。オーディオストックでチップチューンが審査を突破することは大変難しい。そういう意味です。

これは、「審査を突破しない私の曲は、ダメな曲」などとは考えてはいけない。そういう世界線では無い、と知りましょう。

■コンプ感だよ

上記の2つのドラムを聴き比べてみて、何が違うか考えてみましょう。使っているのはCubase AIに入っているHALion Sonic SEのドラムキット。この2つで違うのは、コンプをかけているかどうか、です。

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