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ふりぃらんす にっき 8

着れないスーツ

先日、スーツを捨てました。

「…まーたアンチサラリーマンの話題?」

いえいえ、違います。(そもそも、アンチサラリーマン記事なんて全く書いてない)

私が捨てたスーツは、それこそ、私が持っている唯一の「社会服」でした。いくらフリーランスでも、スーツを着る機会は必ずあります。結婚式に呼ばれたりすれば、さすがに普段着というわけにはいきませんし、かしこまったステージに立つ事も無いわけではありません。日本の社会で生きる上でスーツが無い40代の男性、というのは流石にいろいろ厳しいと思います。

そういう話ではなくて、このスーツ、7年程前に買ったものです。私の体型は、17歳から39歳まで、殆ど変わらず「太り過ぎ」でした。明らかな肥満。もちろん、それに合わせて全ての服を揃えていました。このスーツも3Lです。

この二年間で18キロ程痩せた私は、今はLサイズでも少し大きいかな、くらいのサイズです。思春期から一昨年まで、「普通のサイズ」を着れる事が無かった私には、痩せるということは「ファンタジー」でした。今は現実ですが、こと服に関しては「デザインを選ぶ」という事は皆無で「とにかく、着れるものを探して着る」というのが最優先でした。その名残がまだ心の底に残っていて、ずっと残してあった、「最後の負の遺産」がこのスーツです。

よく、ダイエット用品などで見る「使用前、使用後」の写真みたいな、とんでもなくブカブカなズボン。全くサイズが合わなくなってしまいました。18キログラムの肉、って想像するととんでもない量です。それが落ちたわけですから、服が合わなくなるのは当然です。

当然…なのですが…、捨てられませんでした。高かったから、もったいない、という理由だけです。それはもう、使えないのに、着れないのに。

着る機会そのものがあまり無い私ですから、スーツそのものは新品同様です。それを捨てるのは大変決断に時間がかかったのですが、ついに捨てました。これで…服に関して、着れないものは全て処分したことになります。

そんな、単純な話です。要らないものは捨てる。ただそれだけなのですが、人間は、捨てるという行為はとてもエネルギーを使います。本能に抗う行為だからです。

アメリカでは、こんまりさんが人気があるそうです。資本主義の権化物質社会のシンボル、アメリカ。そのアメリカでこんまりさんが人気があるのは、革命的とも言えます。「要らないものを捨てる」という、あまりにも単純な行為。それがいかに難しく、人間を悩ませるか、がよくわかります。

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