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「破産のススメ」出版にあたって

 今夜零時に、私が初めて書いた本が、AmazonのKindleから電子出版されます。
 今年の三月に、もうこれ以上は経営の続行が不可能だと、私が経営していた会社と私自身の自己破産を決めました。それから諸々の手続きがあって、全てが終わったのが八月の初めでした。
 破産の手続きに入ってすぐに、この経験は本に書こうと思ったのですが、実際には、八月に入っても、まだ影も形もなく、ようやく原稿を書き始めたのは九月に入ろうかという頃でした。
 それから約一ヶ月、破産以前の悲惨な人生をほじくり返しながら、なんとか原稿を書き切って、それから読者にとって、特に実用書として必要な人のために、心情的な描写を大幅に削り落としました。正直、かなり痛みを伴う作業でした。
 それから書き上げた原稿を、章に分割しながら細部を見直し、なんどもなんども読んでは直しして、なんとか書籍の体裁が整って、今度は作家として、本名で行くのか、ペンネームで行くのかという問題になりました。
 当然破産したわけですから、堂々と本名というのもおかしいだろうということで、荒石誠というペンネームをつけました。
 今度はそれを出版するには、原稿をAmazonのKDPに上げられるフォーマットにしなければならないのですが、それも一から調べて勉強して試行錯誤して、なんとかできるようになりました。
 表紙も外注に頼むお金もないので、自分が撮り溜めた写真から選んで、自分で加工してデザインしました。
 今回書いた本は、破産の実際と、手続きの解説なのですが、一番必要としてくれるのは、私と同じように、厳しい経営状況の中小企業の経営者の方々です。そうなると、やはり紙の本が望ましいわけですが、それをどうするか? しばらく考えました。すると今はプリントオンデマンドという方法で、書籍のPDFデータさえ作成してしまえば、1冊から紙の書籍が出せることを知り、その為のデータも作成して、今は試し刷りの二冊目を待っているところです。一冊目は表紙のデータのサイズが少しズレていたのと、文章の行間が詰まりすぎていたので、修正したデータを送って結果待ちです。結果が良好であれば、すぐにそちらの方も発行できるように手続きする予定です。
 もうここまでくればそのまま出版してしまっても構わないのですが、こう言ったことに詳しい友人が、そのままじゃダメだと、色々とアドバイスをくれたのですが、最低でも公式サイトは作らなきゃ話にならないというので、araishimakoto.comというドメインを取って、レンタルサーバを借りて、触ったこともないワードプレスでサイトの構築をしました。ほぼ同時期にFacebookページと、Twitterのアカウント、それにそれまでやってきたInstagramを全てリンクして、この世に作家、荒石誠を産み出したのです。
 一週間前に、報道関係にプレスリリースを作成して送りましたが、そちらの方は全く今のところ反応はありません。
 ここまで、原稿を書き始めるところから約二ヶ月、力技でほぼ全てを一人でやりました。おそらく原稿以外を外注したら、軽く六十万円はかかったでしょうが、とりあえず破産してからまだ仕事らしい仕事、いわゆる就職はしていないので、出版に関わる作業に明け暮れていました。
 この「破産のススメ」という本は、私がここにきてからアップしたような随筆とはかなり違っていて、内容も文体もかなり固いと思います。
 実際に、今回担当いただいた弁護士の法律監修も反映させていますし、研究者の論文レベルの校正がかなり入っています。
 そうして大勢の方の応援のおかげでようやく形になりました。
 作業そのものは、ほとんど自分でやりましたが、ずっと寄り添うように励ましてくれた方がたくさんいます。
 ここに上げた随筆は、毒にも薬にもならないような短文ですが、「破産のススメ」を出版する理由は、経営苦や借金苦で自殺する経営者を一人でも減らせたらとの思いからです。
 そうした人たちが読んでくれたら、借金で死ななくていいってきっとわかってくれると思います。なにしろ私自身が何度も死のうと思いましたから。
 

ここに前書きの全文を貼ります。

はじめに

 今年、平成二十九年三月、私が代表取締役社長であった会社の破産と、私個人の破産を決断しました。
 裁判所の司法統計によると、平成二十七年度の破産申立件数は約七万件でしたが、私も今年の統計ではそのうちの一件になってしまいました。
 タイトルの「破産のススメ」ですが、本来おすすめすることではありません。
 なぜなら、すべての債務を踏み倒すことになりますし、私も今回の件では、たくさんの方々に、多大なご迷惑をおかけすることになりました。
 御迷惑をおかけした方々には、この場をお借りいたしまして、深くお詫び申し上げます。
 今回私は、どうにもならないところまでいって破産をしましたが、もっと早い段階でやめていたら、ご迷惑をおかけする範囲はもっと小さくできたと思います。その経験も踏まえて、今現在苦しい状況の方々にはよく考えていただけたらと思います。
 破産にいたった経緯は本編でおいおい書いていきますが、実際のところ破産がどういうことなのかは意外と知られていないと思います。
 私自身がそれまで破産ということに対して持っていたイメージは、なんだか大変な事、恐ろしい事、なにもかも終わってしまうのではないか? という漠然とした恐怖でした。映画やドラマに出てくるような、債権者が押しよせて責めたてられるようなシーンを頭の隅で想像していました。
 とくに日本では、「借りたお金はなにがなんでも返さなければいけない」というのが倫理的にも道徳的にも強く、その為に途中で白旗を上げることもできずに、最後の血の一滴まで流しきってしまうような経営者の方も多いと思います。
 私自身、今年の三月には、もうこれ以上資金繰りや経営を継続することは無理だと判断しましたが、それがすぐに破産の申立につながっていたかというと、必ずしもそうではありませんでした。
 それほどに破産の実態も知らず、破産するための法的な手続きや、それによって生じるメリット・デメリットも知らず、それが行動にうつせない最大の障害になっていたようです。
 それに、いざやめるにしてもそれまでの経緯がありますから、いきなり破産という結論に飛びつくのも難しかったのです。経緯はどうあれ、会社で仕事をしている従業員やその家族、継続中の仕事など、その時の自分の立場を無責任に放り出すということができなかったのです。多くの借金を抱えた赤字体質の会社経営の中で、私はとても長く惨めな時間を過ごしてきました。
 それでも、どうにかしよう、なんとかしようと頑張ってみましたが、現実はドラマのようなわけには行かず、ダメなものはダメでした。
 そしてついにもうこれ以上続けることはできないところまで追い詰められて破産を決断することになりましたが、いざ破産することになってみると、「なぜもっと早くしなかったんだろう?」そう思うほどに、破産することのデメリットは私にとって小さいものでした。
 いずれにしろ、これ以上会社を続けることは無理だと判断し、三月に動き出してから約五ヶ月後の、八月九日に東京地方裁判所から免責が許可され、ようやくすべての手続きが終わりました。
 この本の中では、私が実際に経験した体験談とともに、破産の実態や手続きについて書きました。
 法律的な部分については、実際に本件を担当していただいた、藤田智弘弁護士監修のもと、できる限り正確を期しています。
 東京地方裁判所から免責(債務に対する責任を免除される事)が許可された今、破産の実態をより多くの人に知っていただき、今も悩み苦しんでいる中小企業の経営者の方々に、少しでも本書がお役に立てれば幸いです。”


 以上のように、かなりシリアスな内容なのですが、趣旨をご理解いただき、こういう本が存在するということを、ご自身の周りで経営に苦しんでいたり、苦労している方がいらっしゃったら、ご紹介いただけたら幸いです。もちろん読めば「破産ってどういうことだろう?」、「もし破産しちゃったらどうなるんだろう?」という現実がわかります。


 ちなみにこれも友人の提案なのですが、発売から72時間のセールを行う予定です。プリントオンデマンドによる紙の本は、同時発売は叶わず、少し遅れての発売になります。


 長くなりましたが、発売を前にして、書いた本人からのご挨拶でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


サポートする代わりに、こんな本を書いたり、こんなことをしている奴がいるよーって触れ回っていただけると助かります。