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knock! knock!(825文字)

うちの妻は、

話し掛け大魔人


なんである。


やたらと僕に話し掛けるのだ。

僕が、

なにか用事をしていても(確定申告だとか、noteだとか)、

トイレに入っていても(ドアの外から話し掛けてくるのだ)、

寝ていても(いちいち起こすのである)、

とにかく話し掛けてくる!

なかなかに困る(´-ω-`)


なので、取り決めた。

これからは、

僕になにか用事があるときは、

「トントン」

と、

コミュニケーションのドア(って想像上のドア)をknockしなさい。

でもって僕が、

「ガチャ」

と、

ドアを開けたら話してよろしい。でも、

「あーとーでー♪」

って応えたら、

話し掛けちゃいけないよ。

わかった?


――うん、わかった。

と妻は応えた。そして、

――でも、

と続けた。

――急ぎの用事のときは?

急ぎの用事?

――あなたがトイレに入ってるとき、あたしのお腹が痛くなったりしたら、ってこと!


ふむ、なるほど、そんなときは……、

と僕は応えた。

「ドンドンドン! ドンドンドン!」

って激しく扉を叩きなさい。それがイマージェンシーの合図だ、ってことにしよう。


――わかった。

と妻はまた頷いた。


だが、その後、

妻が僕のドアを

「トントン」

とknockしたのは1回だけで(「ガチャ」と開けたら、「寒いね」って言われた)、

あとはぜんぶ

「ドンドンドン! ドンドンドン!」


だった。


いっつもイマージェンシーなんだな、まったくもう。

ほらほら、こうしてこれを書いてる今だって。

『ドンドンドン! ドンドンドン!』

はいはい、なんですか、

と思って僕はドアを開ける。

『ガチャ』


すると、

妻が言った。

「夕日が綺麗だよっ!」


ほ、ら、なー(-∀-)

と僕は思った、

日々沈む夕日だって妻にはイマージェンシーなんだ。


あきらめて、僕は言った。

「オッケ、わかった、やっぱりドアは、開けっ放しにしておくよ、いつでも話し掛けてくれ」


すると、夕日を見ながら妻は、

安心したように言った。

「温泉卵みたいなオレンジ色だねえ」

ふむ、確かに、

と西の空を眺めて僕も思い、

「そうだね」

と応えた。


文庫本を買わせていただきます😀!