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6,700マイル離れたところに住む夫⑪

わたしの夫は時差マイナス13時間、距離にして6,700マイル離れたWashington.D.Cで仕事をしている。別居してから2年3か月が経った。帰ってくるまであと9か月もある。

時間の流れは早い。一日はあっという間にすぎ、2019年も早いもので半年経っている。

でも、帰ってくるまでの日々をカウントダウンしても、なかなかゴールがみえてこない。どうやら、わたしの中では時空が捻れているらしい。「あと9ヶ月」が重くのしかかってくる。

しかも、6月に転職をしたので、夏休みにWashington.D.Cに行くことはできない。いちおう夏休みがあるから行こうと思えばいけるけれど、5泊7日の超短期滞在になってしまう。体力的にきびしい。

淋しいのもストレスだけれど、わたしたちは今、別のストレスと闘っている。それは電話によるコミュニーケーションだ。いつもLINEの無料通話をつかっているのだけれど、音声が悪いのか、お互いの聴力が弱っているのか、聞き取りにくい。

会話のなかで、何度も聞き返す。それがさほど重要じゃないことだとすると、言い直すのもめんどうくさい。「えっ??」「もう一回言って!」「今、なんて言った?」そんなことを繰り返すたび、お互いどこかうんざりした雰囲気になってしまう。

しかも、転職で慣れない環境に身を置いているためか、夜はぐったりしている。残業もほとんどないし、仕事は楽しい。メンバーもみんなよいひとたちだ。それでもやっぱり、まだ猫をかぶっているところもあり、疲労感は半端ない。

夫は、おとなしい性格だけれど、よく喋る。ごはんを食べて、洗濯をして、諸々家事を済ませる。ソファーでぼーっと野球中継を観ていると。LINEスタンプが送られてくる。

もう少しだけゆっくりしたい。放っておいてほしい。

毎日19時から22時までの3時間しかわたしの自由時間はない。(子育てをしているみなさんには怒られてしまうかもしれないけれど)

夫とコミュニケーションはとりたい。でも毎日1時間近く、聞き取りにくい通話を続けるのはかなりの苦行だ。最初の方は気にならなかったのに…。

集中して相手の話を聞くのはむずかしい。テレビはミュートにし、部屋中のドアを閉めて、環境を整える。さらに相手の話に集中する。これは相手の話をちゃんと受け止めますよという心の持ちよう。でも、野球の経過が気になってしかたがない(失礼)

ある日、電話に出るなり、夫がものすごい愚痴を言ってきたことがあった。わたしは心が狭いというか自己中心的というか、転職して毎日楽しく仕事をしているときに、あんまり仕事の愚痴を聞きたくなかった。

やんわりと、今日はつかれてるから、週末に聞くよと言ってしまった。さらに言い方は最大限注意をしたけれど、ちょっとつかれているから毎日一時間話すのはちょっときびしいかもと言った。(鬼)

夫は、わかったと言っていたが、とても落ち込んでいるようだった。後悔した。夫は話したくて話したくて仕方がないのだ。Washington.D.CはNYやLAとちがって、日本食のお店も少ないし、娯楽もほとんどない。

でも、その日、どうしても聞く体力と気持ちの余裕がなかった。

翌朝、わたしは後悔していた。やっぱりたまった疲労がとれなくて、しんどかった。でも、吐き出させてあげないと、夫の精神状態も心配だ。

ちょうど週末だったので、気合いで早く起き、めずらしくこちらから電話をかけた。

「昨日は最後まで聞けなかったけど、あれからどうなった?」

そう言うと、夫は堰を切ったように話し出した。

途中で遮ってしまった愚痴の正体はとんでもないものだった。

「1年延長になる可能性がある」

「No Way!」
「はぁぁぁぁぁ!!!!!!?????????????」

目の前が真っ暗になるというのは、こういうことかと思った。
ソファに座っていなかったら倒れていたかもしれないぐらいの衝撃だった。

書いていても軽く眩暈がする。

もちろん、決定事項ではない。夫はなんとしてもそんなことにならないように調整すると言っていた。

軽くパニックになったわたしは、いざとなったら「仕事辞めればいいよ」と言った。それが嫌なら、わたしが仕事を辞めてアメリカに行くと言った。

よく考えればわかることだけれど、そんなに簡単にお互い仕事を辞めることなどできない。こういうとき、冷静になれないところは、なんとかしたい。

もう少し(それでも長い)だと思っていたところに、まだ先があるといわれることがこれほどまでにショッキングなことだとは思わなかった。

それからしばらくは、かなり落ち込んだ。せっかく転職できたけれど、これ以上離れ離れで暮らすのは限界だ。やっぱり辞めるしかないのかと悲しくなった。

それから数週間が経ち、夫は日本にいる上司と何度か話し合いをおこなった。95%くらいは今年度末で一旦帰国というはこびになった。よくわからないけれど、最終兵器を使ったとか使わなかったとか。

もしかしたら、数年後にまた海外勤務になるかもしれない、国内の異動も可能性としてはゼロではない。今度という今度は、離れて暮らすという選択肢を選べそうにない。そのときになってみなくてはわからないけれど、もう離れて暮らすのはコリゴリだ。わたしは電話でうまくコミニュケーションがとれない。

夫の転勤で自身のキャリアを諦めざるをえなかった妻はどれくらいいるのだろう。前の会社でリモート勤務を少しだけ、試してみたが、結局却下されてしまった。いまの会社でもリモート勤務はなかなかハードルが高いらしい。

駐妻はお気楽にみえるかもしれない。豪華な家に住んで、お手伝いさんがいて、運転手がいる。昼間はお茶会やテニス。そんな優雅な帯同は、ほんの一握りのひとの話だ。

多くの場合、妻がしごとをあきらめる。海外転勤の帯同の場合、ビザの関係で現地で働くことはむずかしい。異国の地で家以外に身の置き場がない。社会とつながれないことは、それまで働いていた女性にはきつい。それが原因で、うつ病になることも少なくないという。

もしも、つぎ海外赴任の辞令がでたら・・・

わたしはどんな選択をするのだろうか。

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アラキナツ

東京タワーのふもとで世のため人のためWebコンテンツ作成をしています。noteには40代女性の日々の暮らし、働き方や生き方を正直に綴っています。夫はアメリカに単身赴任中。阪神タイガースファン。お寿司が好きです。▶連絡はTwitterのDMへ @araki_natsu

6,700マイル離れたところに住む夫

私は東京、夫は6,700マイル(約10,000キロ)離れたワシントン.D.Cで働いています。3年間わたしたちは無事に距離を乗り越えられるだろうか。
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コメント2件

No Way!!!
Ridiculous!!!
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