口ぐせと呪縛

彼はの口ぐせは「つまり、どういうこと?」だった。
とりとめもない日常の会話、そこに意味なんてない。同棲まがいのことをして、大人になったと勘違いしてたハタチそこそこのわたし。
大学の授業にも出ず、惰眠を貪るカップル。甘い恋愛映画をそのまま再現したくて、妄想めいたことを口走っただけ。

「なんでもないよ」と言うわたし。彼は「意味わかんね」と、たばこに火をつけて、またゲーム。

20年前のわたしは、ひとりでいるときに、たくさんの本を読んでいた。ロッキングオンなどの音楽雑誌やクイックジャパンなどのサブカル雑誌、三島由紀夫や泉鏡花、太宰治などの純文学。だけど、そこで得た考え方や思想はひたすら自分の奥の方に押し込めていた。彼にはこじらせた面をみせていなかった。

今思えば、「つまり、どういうこと?」なんてふっかけてくるってことは、議論が好きな人だったのかもしれない。突き詰めて考えて、独自の答えを出したいタイプの人だ。頭でっかちで覚えたての思想を見せつけたかったのかもしれない。今思えば、似た者同士。あのとき、もうひとりのわたしだったら、「つまりどういうこと?」に答えることができた。きっと。独自の理論を浮ついた女子大生とは思えない言葉を使って答えられたはずだ。

そうしなかった理由はよくわからない。もう忘れてしまった。彼のことは口ぐせと白いスープラに乗っていたことしか覚えていない。

人には誰でも口ぐせがある。マイナスな言葉の人もいれば、プラスの言葉の人もいる。口ぐせがコロコロと変わる人もいる。わたしは、人の口ぐせを特定するのが好きで、その口ぐせから性格や心理を読む

ある日、夫がわたしの口ぐせを指摘した。

「絶対~」、「~するべき」、「わたし、間違ってる?」「メリットは?」

夫は、わたしがそれらの言葉を使うたびに、「息苦しくないの?」と不思議そうにたずねた。

世の中に絶対なんて断定できることは、ほとんどないし。どうするべきかなんていうのはその都度、相手や状況によってかわる。押しつけられる方もあまりよい気持ちはしないし、プラスの意味で使っていたとしても、言葉の呪縛に苦しんでいるわたしをみて、胸が痛くなったらしい。

自分が間違っているかどうか同意を求めたところで、間違っていないという声を拾って、安心したい。そして相手をねじ伏せたいだけではないか。メリットばかりにこだわって、大切なことを見逃したり、損得勘定ばかりで動くのは視野が狭くなるのではと言われた。

夫のいうことはもっともだ。

わたしはわたしの口ぐせの呪縛で長い間苦しい人生を生きていたように思う。たしかに、白黒はっきりつけたがるところがあるし、間違っていることは間違っているとはっきり言う。正義感も強いし、どちらかというと合理的なものを好む。それは長所でもあり、短所でもあるとわかっている。(頭ではね)

代表的なのは上に書いた4つだけれど、それに付随する同じような口ぐせがあるらしい。半年前から体調が悪くて、心も身体もぜんぜいうことをきかない。肝心の夫は遠くアメリカの地でうまくコミュニケーションがとれない。

その中で、いつか言われた口ぐせのことを思い出したのだ。「早く治すべき」、「絶対診断がまちがっている」電話で夫に、何度もそう言っていた。焦れば焦るほど体調は悪くなり、ちょっと悪化しただけで落ち込んだ。(今は治りました!)

夫にいつかの電話で、「いつもの口ぐせが悪い方へ向いているよ」と言われた。

ちなみに、夫の口ぐせは「なるようにしかならない」だ。じたばたする性格ではない。

大学生のころは、こじらせていた。でも、ひょんなことから社会人になり、仕事の楽しさ、お金を稼げる自信みたいなものを感じた。30代では、いわゆる勝ち組に入りたくて、(ステレオタイプの)女性の幸せのレールに乗りたくなった。ブランドものの服を着たり、女子アナ風の格好で合コンにいそしんだ。自分に合わない幸せを求め、することすべてに無理をしてしていた。必死だった。

残念ながら子どもを授からなかったこと、転職で失敗してキャリアを継続して積めなかったこと、なんとなくレールから外れてしまった。ちょうどアメリカに長期滞在する機会があって、ゆっくりとちがう環境で考える時間があった。noteをはじめてどんな状況でも自分の人生をたくましく生きている人たちにたくさん出会った

極端な選択肢しか持てないような口ぐせは、自然と口にしなくなった。夫に何かを強要したり、社内での議論も誰かをねじ伏せるものではなくなった。マウンティングもしないし、している人をみてもなんとも思わなくなった。

口ぐせは、その人の思考そのものだ。

よい口ぐせは続ければいいし、悪い口ぐせはやめろとは言わないけれど、「あ、今自分の悪いところが出てるな」と思うようにするとよいかもしれない。

最近の口ぐせは「迷ったら、ロックな方を選ぶ!」だ。

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アラキナツ

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コメント2件

・ロックに! かっこいいですね!
 迷ったら、ワイルドサイドを行きます!

・そういう時に「息苦しくないの?」てフラットに聞いてくれる人って、
 貴重だなって、思いました。
そうですね!ワイルドサイドを行けですね。道は分岐点ばっかりですから。
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