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最新戦法の事情【豪華版】(2019年4月~5月・居飛車編)

どうも、あらきっぺです。今回は4月と5月の合併版です。

タイトルに記載している通り、プロ棋界の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。前回の内容は、こちらからどうぞ。

なお、当記事の注意事項については、こちらをご覧くださいませ。


最新戦法の事情 居飛車編
(2019.3/1~4/30)



調査対象局は144局。ちなみに3月は88局。4月は56局です。4月で対局数が大きく減少しているのは、この期間は順位戦が指されないからです。

それでは、戦型ごとに見て行きましょう。


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◆角換わり◆


54局出現。3月に33局。4月に21局。この期間では最も多く指された戦型でした。

基本形の将棋が約4割を占めており、相も変わらず支持を集めていることが分かります。なお、基本形とは以下の局面のことを指します。


ここで後手は様々な手があるのですが、中でも△5二玉と寄る手が一番人気(14局)ですね。今回は、主にこの将棋を掘り下げます。


さて。△5二玉に対して、先手は直ちに仕掛ける手段は難しいので▲7九玉と玉型を整えるのは妥当なところ。そこで後手が何をするかです。(途中図)


まずは、△6三銀▲8八玉△4二玉と徹底して待機する指し方を見ていきます。(第1図)


2019.3.14 第77期順位戦B級1組13回戦 ▲渡辺明二冠VS△斎藤慎太郎王座戦から抜粋。

これは、(1)▲4五歩という争点を与えない。(2)7四の桂頭を守っている。という点が特色です。待機策の中でも相当に守備を重視した指し方ですね。


ただ、5四の銀を撤退しているので攻撃性は全くと言っていいほどありません。ゆえに、先手は安心して▲6七銀と銀矢倉に組むことができます。以下、本譜は△5四銀▲5六歩△4四歩▲5九飛と進みました。(第2図)


銀矢倉を作った後は、飛車を中央に転換して5筋の歩を伸ばしていくのが基本となる指し方になります。銀を追い返す手を用意して、△6五歩を牽制することが大事ですね。ここまでは前例も指されている将棋ですね。(第3図)


第2図から9手後の局面です。この局面はまだ前例があるのですが、従来は後手不満無しという見解が多数派だったように思います。というのも、先手は5六の銀が浮ついており、5筋の歩を伸ばした手がマイナスに作用している嫌いがあるからです。加えて、後手の銀矢倉が堅いこともそれを後押ししていた理由でしょう。


しかし、渡辺二冠はその定説を覆す手順を披露します。ここから▲4五歩△同歩▲3五歩△同歩▲4五桂が明るい仕掛けでした。後手は「桂頭の銀」という格言通りに△4四銀左と応接しますが、▲2四歩△同歩▲同飛のときに受け方が悩ましいのです。(第4図)


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