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あったかい手

こんにちは。
高井です。

今日は作文みたいな回です。笑                                長くなっちゃいます。



僕が大学生時代に高齢者施設でアルバイトをしていた時の話です。

アルバイトを始めた当初、僕はとりあえずあたふたしていました。笑

おじいちゃん、おばあちゃんの中には「認知症」の方もいて、関わりが難しかったです。
もちろん認知症の方としっかり関わるのは初めて。

その中で、今でも鮮明に覚えているエピソードがあります。

あるおばあちゃんがいました。

名前はキクエさん、とでもしましょう。
年齢は70歳を少しまわったところ。
短い白髪で、数年前から車椅子で生活しているそう。

そして、その方は気持ちがとても沈んでしまう病気なんです。(正確には統合失調症というやつなんですけどね)

「おはようございます!」と挨拶しても、昼食の時でも、おやつの時でも、ずーっとかたい表情で、正直少し怖いぐらいでした。

いざ話しかけても、掠れた声で返事をされ、今ひとつ会話が成り立たない感じ。

なので、僕の関わりもどんどん消極的になっていたのかもしれません。

そんな関わりしかできていなかった僕ですが、「もう、ええ加減ちゃんと関わろ!」と思い立ちました。笑

ある日、キクエさんはぬり絵をしていました。
でも、その姿は全然楽しそうじゃありません。
手に力も入っていない。ただ、色鉛筆に手を添えているだけの状態です。

「これをほったらかしにしててええんかな?何か自分にできることはないんかな?」そう思いました。

恐る恐る、「僕も一緒に塗らせてもらっていいですか?」と声をかけ、キクエさんの右手を上から覆うようにして握りました。さらに、キクエさんの手に力が伝わるように色鉛筆を掴み、塗り始めました。

そこから3秒経つか経たないかぐらいしてから、キクエさんは目を見開き、「にぃちゃん、手あったかいなぁ!」と言いました。

僕は、今までのキクエさんにはなかった反応に、少し戸惑いながら「よく、いろんな人に言われるんです!(笑)」と応えました。

そう言うと、キクエさんは「亡くなった主人も手があったかかってん。なんか思い出すわぁ。あの人の手、だいすきやったわ。」と続け、少し涙ぐまれていました。

その光景を前にして、何故だか僕も涙ぐんでしまいました。そして、心の中で鳥肌が立ちました。

そのことをきっかけにしてか、キクエさんは僕の顔を見るといつもの少し怖い表情から優しいおばあちゃんの表情になります。

それよりも驚いたのは、あのぬり絵を一緒にして以降、キクエさんは自分で色鉛筆を握って、色を塗っているんです。初めてそれを見たときは、「え!?」と驚きました。

僕はあの時、勇気を出してキクエさんに関わって本当に良かったと思います。

あと、キクエさんの中の「何か」に火をつけた自分のあったかい手がだいすきです。



こんな話があったんですよって。
長々と読んで頂き、ありがとうございました。

高井でした。



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