第7話 関内スタジオオープンまでのこと


2012年6月


田園都市線・押上駅の近くに、
東京スカイツリーが開業した。



オープンしてから、早くして100万人の来場が告げられたり、
実家のある群馬に住んでいるときにはよく利用していた、
東武伊勢崎線にはスカイツリーラインという愛称が付けられ、
スカイツリーブームが世間では巻き始めていた。


勉強カフェはというと、
4月に初のFC加盟店として池袋東口から徒歩で通える抜群の立地、そしてカラーリングもオレンジやグリーンのビタミンカラーを活用した
斬新なデザインの池袋スタジオをオープンし、


さらに6月にはこちらも初の取り組みとなる、イタリアンレストランの居抜きを活用したキッチンやバーカウンターがあり、従来の「ラーニングルーム」や「イベントルーム」のない全く新しい形式での、勉強カフェ・青山ソーシャルキッチンスペースを銀座線・外苑前駅近くにあるピーコックストアの2階にオープンさせ、勢いづいていた。



そこに、立て続けに今度は自分が担当する
「勉強カフェ横浜関内スタジオ」のオープンが8月末に決定。



様々なご縁がタイミングよくマッチしたとはいえ、
相当なスピード感で毎月ごとに何か違うことが起こるような、
成長途中のベンチャーならではの期待感に満ち、
かつて経験したことのないほどワクワク感に満ち、
そして慌ただしく過ごしていた。


自分としては、田町スタジオのマネジャーとして半年が経過し、
業務ルーチンにある程度慣れ、目指した通りのコミュニティは徐々にでき始めていた。


「バーベキュー交流会を、スタジオの外に出て、都立潮風公園でやろう」



など会員様から企画が上がり、
新たな企画も進めながら、一方で関内へ向けて引き継ぎをスムーズに行う準備にも取り掛かっていた。


まず最初に、勉強カフェ横浜関内スタジオオープンに向けて、

クリアしなければならない項目があった。



今回、直営店舗ではあるが、契約の組み方として内装工事費などの初期投資を負担してもらい、運営をブックマークスで請け負う「ビルオーナー向けプラン」による出店であり、条件があった。



「果たして、横浜にニーズはあるのか?」



こちらはビルオーナー的にも当然の疑問であり、
この疑問を解決して、初めてGOサインが出る。


条件として、オープン前に「WEB仮入会」をHP上で募り、



ある一定数の「仮入会申し込み」が確保できたら、
契約成立=オープンに向けて工事開始という条件が加えられていた。



(オープンできない、ってことはないよな・・・)



店舗オープンというのは、契約成立直前まで
何が起こるかわからない。


どれだけ前段階で盛り上がっても、資金調達・テナント側の方針転換、などどこかがひっかかれば、店舗オープンは破談となる。(この後破談を何度も経験する)



一抹の不安はよぎったが、WEB仮入会の募集を始めて、初日。


1人目のお申し込みがあった。


そこから立て続けに、日をおうごとに2名、3名、と増えていって、



最終的に目標値を大きくオーバーすることができ、
無事、胸をなでおろした。


(やっぱり、同じように横浜にもニーズはあるんだ。)


僕は確定した未来に、テンションが上がっていた。




初めての、店舗立ち上げ。そして、久しぶりの横浜。

とてつもなく、新鮮であり、僕の心は燃えていた。




【考えていたことが実現する】

(本当に、実現した。根拠は、特になかった。

ただ、単純に、こうなったらいいな、と思って、目標を掲げたこと。

目標を掲げたから、実現したのか・・・・
それとも、どっちみち実現していたのだろうか。

いや、自分は基本的に刹那的な人間だから、
易きに流れ、本当の楽しさを知る前に、
目の前に提示された「楽な道」に翻弄されるのが、自分の癖だ。

だから、目標を見据えて方向性を定めるのは、
ものすごく大事だ。)


2009年から利用している、クラウドメモツール・「Evernote」の中に、
< Destination >というタイトルをつけて、目標をひたすら描いていくノートを作っている。



上京前に、勉強カフェで行いたいことを羅列していたのだった。



300個ほどの目標を立てた記録が今でも残っていて、継続中のものも多いが、


・「勉強カフェのオープニングマネジャーになる」
・「みなとみらいの近くに住む」


を当時の直近目標に設定していた。

今回、勉強カフェ横浜関内スタジオがオープンすることになったことで、
二つとも現実となった。


だから、引っ越しもした。


新しい居住先は、「横浜市営地下鉄ブルーライン阪東橋駅」から徒歩4分。


恵比寿のボロアパートからは、幾分ましな、
中古物件をリノベーションしたマンションだった。


勉強カフェ横浜関内スタジオまでは、徒歩15分程度。
その先にあるみなとみらい周辺も、徒歩20分で行けた。

この距離なら、今後はランニングコースにもできると思い、
MR時代に、僕は激太り(大学4年時体重:50kg→MRピーク時→72kg)しており、まだその贅肉が残っていた現状があったのでそれも込みでランニングも、新生活に取り入れた。



久しぶりの横浜、そして好きだったみなとみらいが近くにあるのが嬉しくて、山下公園や、大さん橋の海沿いのラインには何も用事もないのによく観に行った。




(夜の大さん橋は、夜景も最高で、本当に静かだ。

夏だから、虫がちょっと多いけど。


久しぶりだなあ。。。

もう、4年も前なんだよな。よく来てたの。

関内。石川町。伊勢佐木長者町。野毛。桜木町。

馬車道、日本大通り・・・からの元町、中華街。


また、始まるのは感慨深いなあ。


オルソ<当時知り合いがやっていた石川町に焼肉屋>もたくさんいけるようになるなあ。TESSHOとか、ママスにもいけるなあ。


きっと、石川町に行く回数は、増えるだろうな。。。)



久しぶりの横浜生活で、これから増えるであろう楽しみを空想していた。


< 思考は現実化する >



今までを振り返ると、この言葉通りであった。

自分という人間を分析すると、
他の人よりも観念的なものを少し信じやすいところがあり、
それが盲目を呼び全体を見失うもろさにつながらないように気をつけてはいるが、
「思考は現実化する」については、それが心の底から実現したい場合においてのみ、経験を持って本当、だと思っている。


京セラ・第二電電(現・KDDI)を創業し、経営的危機に直面していた日本航空の改革を成功させた、
稲盛和夫会長の講演をやたら聞いている時期が、22歳〜23歳の時にあった。

指針なき自分の方向性に、何か指針を見つけ出そうともがき、手にしたのが、
稲盛会長の「どう生きるか、なぜ生きるか」というCDブックであり、
山口に住んでいたMR時代の、営業車の中で、ひたすら流しては聞いていたのだった。


「強烈な願望として、寝ても覚めても四六時中そのことを思いつづけ、考え抜く。頭のてっぺんからつま先まで全身をその思いでいっぱいにして、切れば血の代わりに「思い」が流れる。それほどまでにひたむきに、強く一筋に思うこと。そのことが、物事を成就させる原動力となるのです。」



この言葉が、
まるで教徒が牧師の話を聞くかのごとく、心の中に、すっと入ってきたのだった。


「思考は現実化するのかもしれない」という仮説が無意識下にあって、
誰かがそれを断言してくれた時、確信に変わるという状況だったのだろう。


仮説を信じてみたくて、稲盛会長から放たれる言葉を反芻した。


これは、よくあることと思う。


つまり、自分の仮説を断言してくれる誰かを待っていることがある。


自分だけで断言できない時、客観性が必要になる。



だから、僕と同じような人がいたら、
経験から出た言葉を使って、断言し続けようと思っている。


勉強カフェを初めて「思考」してから、
現在、大阪にいるという事実まで。


会員の方々が目標を達成されるまでのプロセスも、
眼の前でたくさん見てきた。


目標を立てて、達成する。

当たり前だが、すべて実際に起きたことだ。


この経験(実際に自分の身に起きたこと、目標を達成された方を見てきたこと)を今度は勉強している人たちに伝えて、
人生を引き上げるきっかけをたくさん作るのが、役目でもあると思った。


だから、僕は勉強を応援する存在でもあり、目標は願い行動すれば
達成できるものである、ということを断言する存在を目指していこうと考えている。


それによって、少しでも自分自身に可能性を感じ背中を押され、実際に勉強するなどして、結果につながる人が一人でも増えれば嬉しい。



2012年8月11日(土)

金髪の、かなり高めのヒールを履いた自分より背の高いイケイケ風の女子・・・が勉強カフェ田町スタジオの受付にやってきていた。


「面接のお願いをしていたK野です!!」


(・・・ギャル!?)



「宜しくお願いします。


ヒール高めっすね(笑)」


勉強カフェ横浜関内スタジオのオープンが決まり、
オープニングスタッフ募集をかけて、何名か面接をさせてもらっているうちの一人、K野さんとの初めての会話だった。


勉強カフェの面接は、ほとんどの場合、店内では行わず、
別のカフェに移動して行う。


移動の間、もともとの身長もそれなりにあり、さらに高めのヒールを履いている彼女は身長161cmの僕からすれば完全に見上げる形で会話をしていたことを今でも覚えている。


これだけ見上げたのは、のちに同じく関内スタッフになってくれる爽やか
がウリの180cm越え男子スタッフ・I田君以外に記憶にない。


・・・カフェに移動して、様々に話をした。


普通の面接で聞くようなことももちろん聞くのだが、
一方で、勉強カフェのことをあまりイメージできてないケースも
多いため、勉強カフェはどういう場所で、どんな仕事で、
どういうものを目指していくのか、を一生懸命話した。



「正直、自習室の受付って思ってたので、
そんなにお客さんとコミュニケーションをとるとかは想像してなかったんですけど、話を聞いて、むしろより働きたくなりました!!」




・・・・一緒に働く人が決まった。



勉強カフェ横浜関内スタジオオープンに向けて、やるべきことはたくさんあった。


(何を目指す。

今、そのために必要なことは。

最速で、軌道に乗せるには。

田町を・・・どう引き継ぐ。)

思考は巡り続けた。


Ever noteを見返すと、
2012年の8月20日で更新が止まっているノートがあった。
「関内 展開計画」というタイトルだった。
(当時の視点で書かれていて、意外に忘れがちなこともあり、
今見ると結構勉強になる。思考を何かに残しておくことは、大事だ)


なんといっても、店舗のオープンから関わるのは、初めての経験である。


その中に記載されていた、
特に大切なこと、それは「採用」であった。


「オープニングスタッフ募集」を求人媒体に乗せて、
募集していた。


応募があった順番に、
面接の日程を組んで行った。

面接を行う、というのも初めての経験であった。

どういったところを重視すればいいのかは、
経験がないのでわからないので、
話した時の直感を大事しよう、と決めていた。


採用は、頭で考えるより、直感。

これは、一緒に働いてくれる
勉強カフェのスタッフを選ばせてもらう、において、
とても大事な要素だ。


会員様とのコミュニケーションをとる毎日は、
「印象」の繰り返しであり、
面接の短い時間の中で何かしら、
「好印象」を持つ=直感を働かせてくれる、
そんな人は会員様にもいい印象を与え続けてくれるのだ。


結果からして、直感で一緒に働いてくれることになった、
今回のK野さん、そしてもう一人の重要人物、S沢さんは、
勉強カフェ横浜関内スタジオのオープンから僕が横浜を去るまでずっと、
常にスタジオのクオリティを維持してくれる大きな支えになってくれた。

二人がいなければ、相当大変だったのが予想される。本当に感謝だ。


そして、K野さんは勉強カフェ卒業後も大手IT企業にて活躍するステージを
移し、S沢さんは今でも続けてくださり、関内の午前中にいなくてはならない存在になっている。

勉強カフェで活躍してくれていた子達は皆、何かしら次のステージでも
その幅を大きくし、活躍して世の中に羽ばたいている。
カフェで働く中で、様々な世代・職種の方と接することで社会性が身につき、次のステージでも活躍できる下地が出来上がったのだろう。




ーーーーーーーー採用が決まると同じくらいの時期に、
もともと美容室だった空間が、どんどん勉強カフェに生まれ変わって行った。



毎日完成に近づいていく瞬間をたどって観ることができるのは、
このオープン前だけだ。
毎回、この出来ていく過程が楽しみである。


天井をあえて作らずに解放感を優先したり、部屋用の壁を設置したり、
音響設備やインターネット環境を整えたり。


ビルをつくるためのチームに参加させてもらい、
ビルオーナーがしきり、電気工事や設計担当者などを集め、会議を行ったり。


こうやって、店舗はできていくんだな、ということを体験でき、のちの大阪オープンの際につながるいい経験となった。


そして、新しく働いてくれるオープニングスタッフ、
K野さん、S沢さんの二人の研修も開始された。
オープン日である8月28日の一週間前からで、スケジュールもタイトで、かなり凝縮して行った。


オープンが近づいてくると、店内に必要なものの買い出しに、うだるような暑さの中、100円ショップや雑貨屋に何度も往復したり、ばたついた。



仮入会申し込みは、60名を超えており、
このままだと、オープンしてからしばらくの間も入会手続きラッシュでバタつくことが予想された。
必要以上にお待たせして、迷惑もかけてしまうかしれない。



なので、少しでもそのバタつきを軽減するために、
今回「オープン前日入会」というのを取り入れた。


7名の方が予定を合わせて来てくださった。



が、初めての同時手続きにかなり戸惑い、スムーズにいかなかったところが反省ではあるが、無事気に入っていただき、そこに来てくださった方は後々までかなり愛着を持ってお使いいただけることになった。


慌ただしく過ごしていると、気づくと夜になり。


これから始まる日々の成功を祈り、明日のオープンを楽しみに、僕は床につくのだった。


第8話に続く

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作者 : 荒井浩介 株式会社ARIA代表取締役
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勉強カフェ大阪本町/大阪うめだ official WEB : http://benkyo-cafe-osaka.com/
※勉強カフェ®は株式会社ブックマークスの登録商標です。 勉強カフェ大阪本町/大阪うめだは、勉強カフェアライアンスのメンバーです。


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