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「おばあちゃんとBLとJK」が描くヲタク賛歌~「メタモルフォーゼの縁側」を読んで~【前編】

おはようございます。この夏お気に入りの梅系のお菓子は「ノリと紀州梅の挟み焼き」です。あらいです。

今日は鶴谷香央理さんの漫画「メタモルフォーゼの縁側」について書こうかと思います。

早朝、漫画喫茶にて。

この漫画との出会いは、東京でのライブを終えて宿泊した漫画喫茶でした。隣の人のいびきの止まざることイノシシのごとし、って感じで眠りも浅かったので若干早く予定より起床。


「せっかく漫画喫茶いるし漫画でも読むか~」


と本来の漫画喫茶の使い方を思い出し、早朝の誰もいない本棚をうろうろ。すると、ひときわ目を引くタイトルの漫画がありました。それが「メタモルフォーゼの縁側」でした。

「メタモルフォーゼ」と「縁側」だけでもカルフォルニア巻き的な、和洋折衷感に引き寄せられちゃうのに、表紙には、おばあちゃんが描かれてるではありませんか。
「おばあちゃんと縁側」
ならしっくりきますが
おばあちゃんとメタモルフォーゼ
はもうなんのこっちゃですよ。この時点では「おばあちゃんが自分の家の縁側と合体してロボとなり悪を滅ぼすために戦う」感じな可能性も捨てきれない訳ですよ。もうちょっとわくわくしてますよ。でもさらに僕は、読んでびっくり、を味わうことになりました。

まずはあらすじ

まずは簡単にあらすじをご紹介します。

75歳の老婦人・市野井雪手はある日何気なく立ち寄った本屋で、その美しい絵柄に惹かれて一冊のコミックスに出会う。それがなんとBL漫画だったことから、その後の対応をしてくれた書店員である女子高生・佐山うららと仲良くなっていき...?

こんな感じでしょうか。きょうは初めてどこからも引用せずにあらすじを書いてみました。褒めて。

このあらすじだけで僕はもうわくわくしてくるんですが、その理由をまずはご紹介。


融合感がすきって話


僕が好きになるシーンや作品の共通点に「融合感がある」というのがあります。てめぇの好みの話は知らねぇよって感じなのは100も承知ですが、この作品の魅力を語る上で大切な要素だとおもったので、しばしお付き合いくださいな。


相まみえることのなかったモノの共演、というのは極上のわくわくだと僕は思っています。笑っていいともの最終回しかり、ライダーものの劇場版の大集合っぷりしかり、FNS歌謡祭しかり、「エイリアンVSプレデター」しかり。味がぼやけちゃっててもいいんです、なんかとんでもなくわくわくしたな、っていうのが僕は大好きなんです。

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僕の中でそれと同等のわくわくを生み出す融合感として、異世界(かそれと同等の隔たりをもつ場所)からきた何かが、その物語世界の文化に触れてキャッキャしてるところ、ってノがあります。カッパのくうの夏休み的な、劇場版のドラえもんで行った先の世界をみんなで楽しむ感じ的な、「アラジン」とかでお城から抜け出したプリンセスが下町の好青年と庶民の暮らしとか食を楽しむ的な、あの「楽しそ~!!俺もそっちいきて~!!」って感じ、最高にわくわくしますよね。

その、後者の「異文化交流」の楽しさが、この作品にはあるのです。

おばあちゃんが「素敵な絵だわ~漫画なんて何年ぶりかしら」
とそれをBL本と知らずに手にとってわくわくしながら持ち帰るシーン。
読み進めていくうちに、男同士の恋愛の話だと知って衝撃を受けながらも
「キッス(原文ママ)」に完全にときめき、きっと久しく触れていなかっただろう恋愛とストーリーを味わう魅力で胸がいっぱいに鳴ってしまうシーン。そのすべてがたまらなく愛しい。
つまり、この作品は「おばあちゃんとBL」という全く新しい融合感を楽しめる作品なんです。

「粋」な描き方


次に、この作品に僕が引きこまれたのは「描き方がとんでもなく粋である」という点です。僕は、物語の中で、「それは文字で書かなくても(わざわざ言わなくても)こっちで受け取れてるのに」っていう瞬間があるとすぐ興ざめしてしまうんですが、この作品は一切そういうポイントがない。キャラの表情のワンカットや、仕草、風景の変化などで各話が締めくくられ、

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という読解の余白を残しつつ、物語に見過ごせない余韻を感じさせるのです。まるで落語のオチのような、


「ん?終わり?えっと、うーん…あ!!あぁ~!!そういうことか、なるほどねぇ…だからラストのコマはこのカットか、くぅ~憎いね鶴谷!!」


っていう読後感の虜になってしまうこと間違いなしです。そして、この余白のある各キャラクターの変化の描き方だからこそ、誰かと感想を語らいたくなるっていうのが、この作品の本質と共鳴するところがあるような気もします。

ということで次回後編では、この作品の僕が思う本質へと迫っていきたいと思います。更新までに「メタモルフォーゼの縁側」①~③巻を読んで待っておくように。ではまた。

記事を読んで「メタモルフォーゼの縁側」が気になった方はこちらから~

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