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解説するびとろ 第8回 J1第5節

本日もやってきました #解説するびとろ のコーナーです。今回は判定について色々あったJ1第5節から3つのシーンを取り上げます。

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VARはどこまでさかのぼれるのか特集

VARが介入する際APP(アタッキング・ポゼッション・フェーズ)と呼ばれる時間的区間内にあるかどうかが介入の基準になります。簡単に言うと、一連の攻撃の中にあるかで、時間的ではなく「流れ」として一連の中にあるかということです。

競技規則には以上にある通り「攻撃を組み立てている間」と書かれており、VARのハンドブックにはより長く丁寧に書かれていますが、流れということで「主観」が大切になる概念です。

そのため、本当にAPP内にあったか議論を呼ぶことは大いに考えられます。そのようなシーンが2シーンJ1第5節にありましたので、そちらについて見ていきます!

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判定×VAR◎ 福岡ー鹿島 犬飼選手の得点取り消しと松村選手への警告

主審 今村義朗さん VAR 松尾一さん AVAR 川崎秋仁さん

(該当シーンにジャンプします)

概ね以上のツイートに書いているのが結論です。公式記録を確認すると松村選手の警告理由は「反スポーツ的行為」となっていましたので、チャンスとなる攻撃をつぶしたことで警告になっています。

ここでは、判定自体についてとVARの介入について分けて考えていきます。

判定自体について

まず、今村主審は見極めたいシーンでしたが、エラーが起こってしまった理由は主に2つあるかと考えます。

①距離が近すぎたこと

距離が近いと判定しやすいと思われる方も多いかと思いますが、意外と近すぎるとフォーカス(集中)が一点に集まりすぎて、エラーが起こりやすくなります。

今回の場合、ボールにフォーカスが集中しすぎたため、ボールの転がりを見て、松村選手がボールにコンタクトしたように見えてしまったと考えます。

しっかりと松村選手の足にフォーカスができていれば、ノーファウルと判定できた可能性は上がるかと思います。

②松村選手のタックルとボールの方向が自然に一致したこと

今回松村選手のタックルが入った方向とタックルを受けたエミル・サロモンソン選手が触ったことによってボールが転がった方向が全く同じになりました。そうなると、人間の目の限界で松村選手のタックルがボールに当たって転がったと誤認しやすくなります。

以上の要件が重なったことで、今回今村主審は正しい判定をできず、「松村選手がボールにコンタクトしたためノーファウル」と判断しました。この鍵括弧部分が後程大切になりますので、是非頭に入れておいていただけると分かりやすいかと感じます。

VARの介入について

VARの介入について考えるときに2点の主な論点があるかと感じます。1点目は、松村選手のタックルがAPPの範囲内か、もう1点は松村選手のタックルについての判定が「はっきりとした明白な間違い」に当たるのかです。

①松村選手のタックルがAPPの範囲内か

こちらについては、松村選手のタックルでボールを奪ってから犬飼選手がゴールネットを揺らすまでは相手に渡ることなく、鹿島の選手のボールポゼッションが続いていたため、個人的にはAPPの範囲内にあり、さかのぼって松村選手のタックルについて判定を修正することは可能であると考えます。

松村選手のタックルについての判定が「はっきりとした明白な間違い」に当たるのか

次に重要なのは、松村選手のタックルについての判定が「はっきりとした明白な間違い」になるかです。VARは正しい判定を追求するためのツールではなく、語弊を恐れずに言えば「大誤審」を修正するためにのみ使うツールです。

その中で、先ほど述べたように今村主審は「松村選手がボールにコンタクトしたためノーファウル」と判断しています。スロー映像を確認すると、松村選手のタックルはサロモンソン選手にヒットしており、今村主審の説明と実際の映像に「はっきりとした明白な間違い」が存在しています。そのため、このシーンではVARはオンフィールドレビューを勧めるのが妥当なシーンで、オンフィールドレビューをした以上ファウルをとるのが妥当です。

以上の理由で今回のシーンは、判定自体はよろしくないですが、VARが介入した結果正しい判定にすることができたという意味で、VARがポジティブな使い方をされたという風に言えます。

また、オンフィールドレビューの結果警告に値するファウルが確認できたときには、主審の判断でイエローカードを提示することができるシーンですので、松村選手へのカードも妥当です。

感情的には納得しがたいシーンだと思いますが、これがVARですので、理解する必要もあるように感じます。

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判定×VAR◎ 横浜FM-徳島 前田選手2点目の取り消しとマルコス・ジュニオール選手への警告

主審 清水勇人さん VAR 中村太さん AVAR 鶴岡将樹さん

(該当シーンにジャンプします)

こちらに関しては、簡潔に説明します。

①判定について

このシーンに関しては距離・角度は非常に良い位置でしたし、フォーカスのミスがエラーの原因と推定します。一方、傷んでいることで踏んだことを推測するのはあまり良い方法ではないですが、可能なので止めてしまうのもありだったかと感じます。

②APP内か

徳島の選手がマルコス選手のボールをヘッドでクリアしていますが、そのボールを即座に拾って前田選手がゴールネットを揺らしていますので、APP内なのは妥当かと感じます。

③「はっきりとした明白な間違い」か

このシーン清水主審は踏んだことを認識できていません。そういうことは「はっきりとした明白な間違い」に該当するため、ファウルをとるのは妥当で、足裏で踏んでしまっているからイエローカードも妥当です。(故意でないのはよく理解できますが、ケガの危険性は高いため警告が妥当です。)

一方、イエローカードのだし方には再考の余地があります。説明する意識がなく、無言でカードを提示しています。やはりゴールを取り消すことは重大ですし、見逃したファウルに警告を出すのは大きな事象です。警告自体もマルコス・ジュニオール選手は警告に該当すると思いもしないシーンだったため、言葉の壁もありますが、キャプテンをうまく使ってでもしっかりと丁寧に説明した方がマネジメント上よかったと考えます。

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判定○~△ VAR◎ 鳥栖-柏 田代選手のタックルは退場に値するか?

主審 西村雄一さん VAR 笠原寛貴さん AVAR 野田祐樹さん

DAZN1:24:55から視聴すると分かりやすいかと感じます。

こちらのシーンは解説するびとろの投稿フォームにいただいたシーンです。ありがとうございます!

このシーン質問者の方も、いわゆる「オレンジ」のシーンで警告でも退場でも理解できるシーンとして、VARがオンフィールドレビューを勧めなかったことに違和感は感じなかったという風におっしゃっていましたが、その意見に全面的に賛同します。

このシーンタックルをした田代選手の足は「ボール⇒大谷選手」の順で接触しています。大谷選手に接触した際には足裏が足首付近に接触しているため、レッドカードとする審判員もいるかと感じますが、個人的にはボールコンタクト後に、伸び切っていない形で足裏が接触したことから警告は妥当だと考えます。

このシーンでは一発退場かどうかということでVARの介入要件に入りますが、西村主審の説明と映像に大きな差異がなかったことやイエローカードとする考えも理解できるということから、「はっきりとした明白な間違い」に該当せず、VARがオンフィールドレビューを勧めないのは妥当です。

ツイートにも書いた通り、非常に近い位置かつ、視野外から田代選手がスピードをもって飛び込んできた中非常に難しい判定でしたが、しっかりと事象を見れており、西村主審の判定を尊重するのは妥当と感じます。

一方、足裏が脛付近に接触しているため、退場と主審が考えた場合にはその判定も尊重すべきと考えます。

鹿島関川選手の退場との違いはボールコンタクトと足の伸び加減だと考えます。足が伸び切っているとケガの危険性は上がるため考慮事項に入るかと考えます。

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以上3シーンについてでした。いかがでしたでしょうか。ご意見・感想お待ちしております。

本日もお読みいただき、ありがとうございます!引き続きよろしくお願いいたします。

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