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WRA #3-1 「ワイドビューのための動きとグレ男さん」J1最終節 G大阪-清水 (家本政明主審)

目次に重要度を星で示しています。お忙しい方は星の多い物のみ読んでみてください。

今回は全6回(15分×6本)の今までのフォーマットで分析します。(次回は投票にあった前後半計2本で行きます!)

この試合はTwitterのアンケートで分析試合を決定しました。ご協力いただいたみなさんありがとうございました!

今回は、家本政明さんが担当するガンバ大阪対清水エスパルスの試合を分析します。

審判団紹介

主審 家本政明さん
広島県出身の1級審判員で47歳。元国際主審で、イングランドのFAカップを海外出身審判員として初めて経験するなど非常に大きな経験値を持った審判員。この日は、J1の通算担当試合が316試合目で、現役審判員では2番目に多い。
今年からNote・Twitter・Instagramのアカウントを開設し、現役トップレフェリーとして生の声を伝えてくださっており、私のような審判員にとっては非常に勉強になっている。

今回の分析では、以下の記事で家本さんが提唱されていた「3‐5‐2」の意思決定のフレームワークや家本さんのnoteに出てきた理論を用いて分析する。「参考文献」付の学術的っぽい分析ができるということも家本さんの発信のおかげであるし、家本さんの高度な分かりやすく言語化する力のおかげである。無料でこのような記事を読める時代にも感謝である。

ポジショニングやメンタルなどについても家本さんはご自身のNoteで発信されているので、適宜その部分を引用して紹介しつつ、分析する。

副審1 越智新次さん
愛媛県出身の国際副審で、45歳。越智さんは地元愛媛新聞によると建築業を営んでいるそうだ。(2013年現在)この日はJ1通算170試合目の担当で、J2の通算担当数が170試合であったため、試合数が並んだ。

副審2 西村幹也さん
鳥取県出身の1級審判員で、41歳。この日はJ1通算47試合目の担当。近年1級審判員昇級が低年齢化する中で、34歳の時に1級審判員になった審判員であり、その年齢からJ1担当に上り詰めている。選手だと多くの人が引退する年齢ではあるが、審判員はこのように30代以降が脂ののった年齢である。

第4の審判員 西山貴生さん
香川県出身の1級審判員で、37歳。今シーズンJ1で主審デビューを果たした審判員で、J1通算1試合の主審担当。J2では60試合の主審、J3では47試合の主審担当と39試合の副審担当をしている。

公式記録
ガンバ大阪 0-2 清水エスパルス
審判団 主審 家本 政明 副審1 越智 新次 副審2 西村 幹也 第4の審判員 西山 貴生
警告 退場 なし
シュート数    G大阪 12-10 清水   
コーナーキック数 G大阪 11- 4  清水
フリーキック数  G大阪  8 - 7  清水
(J. League Data Siteより作成 https://data.j-league.or.jp/SFMS02/?match_card_id=24193)

0:00 キックオフ (14:03)

G大阪ボールでキックオフ。ポジションに関しては、ロングボールが入ってもいいように先取りをしていた。

★ 3:49 ボールが自身に近づいてきた時の避け方

G大阪が清水陣内に攻め込んでいる中で、ボールを奪った清水30金子翔太選手がボールを奪う。ボールを奪った金子選手は、ワンツーパスをして斜め横方向にセンターサークルに向かって突っ込んでくる。その時、家本さんはセンターサークル方向にいたためプレーエリアに入りそうになったが、前後左右どちらにも動かないことで、プレーエリアに入ることを未然に防いだ。

私は上図のやりがちな動きをすることで、距離が離れてしまい、理想とする距離に行くためにある程度速い速度でのスプリントをしなければいけないことがある。スプリントをすると、視野がぶれてしまうためあまり好ましくない。

しかし、家本さんはその場に留まることで、選手を邪魔しないこと次のポジションにスムーズに移動することの2つのことを同時に達成した。

冷静に考えると、金子選手を含む清水の選手たちは、攻撃をしているのだから、前方に進んでいくことが予想される。下がらずにその場にいれば、勝手に前に出てくれ、自然と邪魔しないポジションに入ることができるのである。もちろん状況によっては、全くの横移動をすることもあるため、一概には言えないが、私自身の引き出しとして非常に勉強になった。状況を見て、泰然自若と動かないことも大切であると勉強になった。

また、7分まで反則は一つも起こっていない。その中で見えてきた家本さんのポジショニングの特徴があるので、見ていきたい。

★★★ 家本主審のポジショニングの特徴

家本さんは、質問企画をしていた際の「タッチライン際の判定を見極めるためにはどうすればいいか?」という質問の回答で、テクニカル面として以下のようなことを答えられている。

1.選手同士が被らないよう広い視野角を常に取る(ワイドビュー)
2.視野内に「じゃま」が入らない場所を取る(クリアビュー)
3.遠すぎず、近すぎずの距離をとる(目安は15〜25m)

4.ボールの軌道と回転だけは絶対に目を離さない、ボールの音も意識する
5.選手の微妙な顔つきや仕草や反応に " ニラミ " を利かす
6.できるだけ静止かゆっくりした状態で見る
7.視点を一箇所だけに集中させない
(下記リンクのnoteより引用)

このうち、下4つに関しては、タッチジャッジに特化した内容であると考えるが、太字で示した上3つに関しては、タッチジャッジ以外のポジショニングでも応用できる考え方だと思うため、その考えを応用して、家本さんのポジショニングの特徴を見ていく。

家本さんが理想としていると思われるポジショニングの3項目を生かしたポジショニングは以下の図になる。

上述の通り、家本さんは理想的な距離として、15~25mをあげている。

その距離をとるとなるとペナルティーエリアの長さが16.5mであることから考えると、縦方向の理想的な位置を考えるとゴールラインから約30m~40mの距離に入れば、ペナルティーエリアの中外の境目の判定においては理想的な距離となる。ペナルティーマーク付近の判定となると、ゴールラインから約25m~35mの距離が理想となる。

この距離をとると、自然に家本さんがおっしゃる「選手同士が被らないよう広い視野角を常に取る(ワイドビュー)」の位置をとることができる。また、この広い視野角をとるためには、「R-B-A」を作って、外からの監視をする方法と内から下がり目で監視する方法があると考えるが、家本さんは典型的な後者のレフェリーであるといえる。前者の典型的なレフェリーとしては、西村雄一さん(#1で分析済み)が挙げられると考える。この2つの方法論の違いから中盤の動きでも、お2人には下の2図のような違いがあると考える。

上図は#1-1で分析した西村さんのポジショニングである。西村さんは、上の図にもあるようにレフェリーサイドの外にボールが展開されたときに、大外のポジションをとることがある。そのため、中盤での横移動は横幅が広めであるし、ビルドアップのときの隠れようとするポジションは若干高めになる傾向があるといえる。西村さんは、基本ポジションとして上述赤のポジション(ボールを持っていないチームの陣内)を自陣のDFの保持でも取ることが多いと分析する。

(ポジショニングは試合によって異なる上に、両チームの戦術によっても異なる。正解は全くなく、極論判定が正しくできたポジションが正解のポジションである。その前提に立ってお読みいただけると幸いです。)

次に、家本さんのポジショニングを見てみる。

家本さんは、「ワイドビューを確保」する上で、距離を長めにとって、広い視野を確保するということを意識されていると考える。つまり、サイドにボールが出たときも後方から広い視野で、中に入った時にも移動せずに落ち着いて判定することができるということを目指して移動を行っていると考える。

そのため、西村さんと比較すると、家本さんは横移動の幅が小さくて済むし、縦で取る位置も争点から15m~25mの位置をとろうとするために、やや低い位置をとることになる。そして、家本さんは自陣でのDFのボール保持時は、ボール保持しているチームの自陣内の位置をとっていることも多いように見受けられる。こうすることで、争点と意図的に距離を離す作業をして、「ワイドビューを確保」しているように見受けられる。

また、今回G大阪も清水もコンパクトな布陣を敷こうとしていたということもあって、このポジショニングが如実に表れたともいえ、ポジショニングは結論ありきではなく、試合にのっとって水のように変えるべきだということがよく分かった。本当に勉強になることばかりだ。

結果として高いレベルの判定をし、選手からの信頼が厚い審判員お二方の動きにも差があるということは興味深い。サッカーの戦術でも、「バスを止める」戦術があれば、「美しいパスサッカー」を目指す戦術もあり、そのいずれもが、「勝利」という喜びを目指している。そのような方法論の違いなのである。

審判員が目指すべき、「美しいサッカー」のための「正しい判定」という観点で考えると、ポジショニングはあくまでも目的ではなく、手段なのである。このことは、私自身忘れてポジショニングの追求に走ってしまうこともあるが、はき違えずに選手がプレーしやすい環境を整えるという目的のために行動したいとこの試合を見て強く感じた。

★★ 9:53 1stファウル G大阪14 福田 湧矢⇒清水6 竹内 涼

この試合の1stファウル。G大阪GK1東口順昭選手のロングボールから競り合いが起こり、こぼれたボールを清水6竹内涼選手がタッチライン際で拾う。竹内選手に対して、G大阪30塚元大選手と14福田湧矢選手がチャレンジする。このシーンについて、「超簡単! 誰でもできる " 3−5−2 " (基本編)」を用いて、見てみる。「3-5-2」に行く前に、家本さんによれば5+5の大切なことがある様なので、引用させていただく。

はじめにやること 5選
➤ なにかを決断するときに " 脊髄反射 " 的に決断しようとする自分を " やめる "
➤ 冷静かつ " 客観的 " に問題と " 向き合う "
➤ 問題を “ 分けて “ 考える(軽いものと重いものを一緒に考えない、など)
➤ 問題を " 順番に " 考える(何が軽くて何が重いか、など)
➤ 問題を " 比べて " 考える(" 部分 " にとらわれず " 全体 " で考える)


つぎにやること 5選
➤ " 白黒 ◯✕ " だけで考えない
➤ " 曖昧さ(グレイ)" を取り入れる
➤ " 細かすぎず 雑すぎず " 考える
➤ " 点ではなく 幅(枠)で " 考える
➤ " 白黒 ◯✕ " は最後に決める

超簡単! 誰でもできる " 3−5−2 " (基本編)」より引用

とっさに判断するのではなく、要素分解して、順序通りにかつ、程よいおおらかさで、白黒つけようとしすぎないことが大切であるとおっしゃっているので、その意識を忘れずに分析していく。

家本さんのおっしゃる「3-5-2」のうち、最初の3択である。竹内選手は倒れているし、まっ白プレイとはいえない。ただ、福田選手は肩で正当にチャージしたようにも見えるからまっ黒プレイともいえない

ということで、グレイプレイと判断して、次の判定ステップに移っていく。

判定ステップ② 迷った時の5択 どれくらいの「グレ男」?

家本さんが次に推奨しているのが、どれぐらいの「グレ男」レベルなのか考えることである。Noteから引用し、定義を見ていく。

【グレ男 1】 ファウルの可能性 10 〜 25%
一般的には、余裕で許容できるもの、全然だいじょうぶ、と思うようなものです。

【グレ男 2】 ファウルの可能性 25 〜 45%
一般的には、まあいいかな、どちらかと言えば OK かな、と思うようなものです。

【グレ男 3】 ファウルの可能性 45 〜 55%
一般的には、いやー、わかんない、まじで、決められない、を強く思うようなものです。あるいは、人の意見が6−4、5−5で分かれるようなものです。

【グレ男 4】 ファウルの可能性 55 〜 75%
一般的には、まあ問題かな、どちらかというとダメかな、と思うようなものです。

【グレ男 5】 ファウルの可能性 75 〜 90%
一般的には、絶対とは言わないけど、いやいや問題でしょ、そりゃあダメでしょ、と思うようなものです。

超簡単! 誰でもできる " 3−5−2 " (基本編)」より引用

ここでは、定義のみを書いたので、それぞれのグレ男の解説については、度々引用させていただいているnoteに非常にわかりやすく書いてあります。是非ご覧ください。

このように、5段階で自身がみたものをもう一度分けてみるという作業が必要だとされている。では、私自身の「どのグレ男とするか」の作業をしてみたいと思う。

グレ男①・グレ男②⇒肩だけじゃなく足も当たって倒れているということは違う


グレ男④⇒福田選手が足をけるもしくは当てることで竹内選手が倒れているからグレ男④じゃないか!

⇒ファウルにする

やり方が正しいかは分からないが、グレ男①・②ではないと思うし、足をけるような形になっているので、グレ男④にして、反則とする方がいいと感じる。

家本さんの頭の中でこのような動きになるのか分からないが、私自身見てみるとこのような思考プロセスで、ファウルは正しいと思う。

ファウルをした後に、チャレンジした福田選手と塚元選手が「なんで!」といった様子で、手を広げた。その反応に対して、家本さんは福田選手を手で示し、足をこつんとする動作をしていた。「肩で行ったじゃん」であったり、「俺じゃないよ」であったりする反応のようにも見えるG大阪の選手たちの動作を、誰が反則をしたか特定し、ジェスチャーで軽く説明することで落ち着かせて、試合に集中させるこのマネジメントは非常にわかりやすく、選手のためになっていると感じた。

判定が正しくできるという前提があってこその部分ではあるが、非常に勉強になる。

★ 12:46 & 13:00 ノーファウルへのジェスチャーで選手をプレーに集中させる

12:46のシーン
このシーンでは、清水のDFからのフィードに清水30金子翔太選手がトラップしようとした。その時後方からG大阪27髙尾瑠選手がボールにチャレンジして、競り勝った。

このシーン、「グレ男」であり、グレ男③に該当するシーンであると考える。

グレ男③に該当するときは、次の最終段階の2択に行くよう家本さんがアドバイスしてくださっているので、最終段階に行ってみる。

判定ステップ③ 白と黒を「ゲームの精神と自分の信念で」

この試合では、家本さんは自分の信念とゲームの精神に則って、「エイヤー」「自分のサッカー観と審判観」に基づき、判定をノーファウルとしたと考える。

このシーンでは、後方から金子選手に対して高尾選手は接触しているが、ボールにコンタクトできており、タイミングもボール接触と同タイミングだったといえる。

このシーンに関しては、おそらくファウルとする審判員もいると考えるどちらの判定も尊重できるシーンだといえる。このようなシーンで大切なのは、グレーゾーンを許容し、その審判の判定を尊重することであると感じる。もし、吹かれたとしてもその審判のサッカー観と審判観によるものなのである。そのような白黒つけられないスポーツがサッカーなのであるという共通認識をすることが大切である。

このような白黒つかないシーンでは、片方のチームの不満が上がる可能性がある、その時に要求されるのがマネジメントであると考える。家本さんは判断をした直後即座にボールを指さした。家本さんのサッカー観としておそらく存在する、「ボールにチャレンジしきれていて、けがをさせるような接触でなければファウルではない」ということを表現するジェスチャーであり、素晴らしいマネジメントだと感じる。

このように示したことで、接触を受けた金子選手も何も言わず、プレーに戻った。その信頼関係を作り上げるマネジメントを前半の早い時間から丁寧に積み重ねることでタフでスピーディーなゲームを作ることを助けているといえる。

13:00のシーン 

このシーンではG大阪18パトリック選手にくさびが入ったところに清水2立田悠悟が後方からチャレンジする。接触したパトリック選手は倒れるが、ボールにチャレンジしたことで、以下のようなプロセスでノーファウルと判断したと考える。

判定ステップ① グレイ
判定ステップ② グレ男③ 
判定ステップ③ 家本さんのサッカー観からノーファウル

判定直後に、ボールを指さすジェスチャーをこの場面でも行っている。12:46のシーンとも基準も統一されており、このジェスチャーを受けてパトリック選手はすぐに立って、不満も示さずにプレーに復帰した。まさに、家本さんの表現力の賜物で、サッカーというアートを傷つけない素晴らしいシーンだった。

ただ、繰り返し言うが、接触をファウルとする審判員もいると思うし、それはその審判の競技規則の精神の理解と信念に基づくものである。そのスタイルの違いに関しては、尊重することが大切であると考える。

★ 14:28 1stアドバンテージ G大阪19 キム ヨングォン⇒清水18 エウシーニョ

このシーンでは、右サイドでポゼッションをしつつ、ペナルティーエリアへの侵入を伺いつつパスを回していた清水。パスを出した清水18エウシーニョ選手に対して、遅れてG大阪19キムヨングォン選手が蹴ってしまう。これは、判定ステップ①の時点で明らかに不用意なので、簡単に判断できる。ステップ④での判断として警告の必要があるかの判断が必要になってくる。

判定ステップ④ まっくろくろすけかグレ男かピカチュウか

ここでは、ファウルと決めた後にする最初の3択が紹介されている。

【その1】 " まっくろくろすけ ” を探す(警告の可能性 0 〜 10%)
【その2】 " ピカチュウ ” を探す(警告の可能性 90 〜 100%)
【その3】 悩むなら " グレ男 " を選ぶ(警告の可能性 10 〜 90%)

超簡単! 誰でもできる " 3−5−2 " (発展編)より引用(下記リンク)

絶対警告が必要な「ピカチュウ」というわけでもないし、警告のいらない「まっくろくろすけ」でもないので、家本さんの勧め通りさっさと次の5択である「新・グレ男 with まっくろくろすけ」に登場してもらおう。

判定ステップ⑤ 伝家の宝刀「カード」を抜くのは慎重に 「新・グレ男 with まっくろくろすけ」

ここでは、新たに「3-5-2」の次の段階である「新・グレ男 with まっくろくろすけ」に登場してもらう。
その前に警告を考えるうえでは、下記の8項目が大切だとおっしゃっているので、確認しておく。

1.相手(選手)としっかり 向きあう
2.相手(選手)の感情を 受けとめる
3.相手(選手)を大きな心で 包みこむ
4.相手(選手)に語りかけ 協力を求める
5.相手(選手)の状態や試合の状況を よく理解する
6.相手(選手)ではなく 自分をコントロールする
7.蝶のように舞い、蜂のように刺す(厳しさは最後に示す)
8.小事にこだわらず 大事を常に意識する

超簡単! 誰でもできる " 3−5−2 " (発展編)より引用

そして、カードはコントロールの手段であり、目的ではない。そして、サッカーは「11人対11人」でやってこそ美しいということも紹介されている。そのことを忘れずに、次の新・グレ男を使って、どうするかを決めていく。

【グレ男 1】 警告の可能性 10 〜 25%
これは、フリーキック(FK)だけで " 十分受け入れられる " ようなものです。
【グレ男 2】 警告の可能性 25 〜 45%
これは、FKだけでも受け入れられるけど " ちょっとイヤ " だなあ... というようなものです。
【グレ男 3】 警告の可能性 45 〜 55%
このグレ男が " 一番悩ましい " でしたね。人の意見が6:4、5:5で分かれるようなものです。
【グレ男 4】 警告の可能性 55 〜 75%
これは、フリーキックだけでは " 物足りない " 、かなり " 警告の匂いがする " ようなものです。 ですが " 脊髄反射 " は危険です
【グレ男 5】 警告の可能性 75 〜 90%
これは、" 絶対警告!とは言わない " けど かなり問題、というようなものです。

超簡単! 誰でもできる " 3−5−2 " (発展編)より引用

以上で言うと、状況からしても(チャンスをつぶそうとする意図)、事象自体の危険性からしても、グレ男①~グレ男②くらいであるといえる。そのことから警告をする必要はない。しかし、少し嫌な感じがするため、キムヨングォン選手には注意をしたいところである。しかし、パスがつながり、チャンスになる流れだったのでアドバンテージを採用した。
試合の流れもスムーズになったので、素晴らしい判断だと感じる。一方、注意はできていないので、#3-2で出てくる16:00にマネジメントがなされている。

★14:53 オフサイドキャンセル

清水のロングフィードに対して反応した33川本梨誉選手がオフサイドポジションにいた。副審2の西村幹也さんは、GK1東口順昭選手との接触の危険性も考え、早めにフラッグアップした。GKの接触を考えた上では、ベストのタイミング。勉強になる。

家本さんは、フラッグアップを認識しながらも、東口選手がキャッチしたため、キャンセル。川本選手との接触もあり、東口選手は倒れるが、川本選手がフェアプレー精神をもって、起こしたためプレーを継続した。試合を途切れさせない素晴らしい配慮で、家本さん・西村さん共に素晴らしい判断だと感じる。

0分~15分までのまとめ

たった15分ではあったが、家本さんの特徴があふれ出る15分だった。試合を途切れさせずに続けようとする家本さんの基準を理解して、選手たちも吹かれなければ続けるという互いのリスペクトを感じられる内容だった。

ポジショニングについてもNoteで記していたことの一端が伺える内容であり、哲学を感じられるポジショニングだった。

選手への声掛けのマネジメントを行うことで、選手がプレーに集中する環境を整えたのが、良く表れていたのが13分のパトリック選手への声掛けとその後のパトリック選手の切り替えだと考える。自身が倒されてしまうとどうしても不満を示すことはあるが、そんな不満を一切見せずにプレーに戻ったということには家本さんの丁寧な声掛けが一因となっている。素晴らしいマネジメントで、判定後の振る舞いも大切であることを示していた。

正直、ノーファウルにした2シーンは、私はファウルとすると思う。それは、担当する試合のレベル的にあのプレーをノーファウルにすると荒れると思うからである。家本さんがご自身のNoteでおっしゃっているように、プロとアマチュアは違うし、レベルが違うと同じ判定をしたとしても違う方向性に行くことはある。そのような理由もあり、ファウルとする。家本さんの基準やポジショニングはプロ基準で、私のようにアマチュアの試合を担当するときには難しいなと正直感じた。

しかし、判定は白黒つけるものではなく、サッカーを上手く「美しいサッカー」に昇華させるための調味料だと感じる。そのため、一観戦者として家本さんの判定基準はプロのサッカーを見るうえでは最高だし、私にとっても大好きなレフェリーである。

ただ、私のような未熟な審判員にとっては難しく、猿真似をすると足元をすくわれてしまう。家本さんのように30年間の経験がなせる業が、現在の家本さんのレフェリングである。そのことを忘れずに、今後も精進していきたい。

試合ハイライト

DAZN映像(2021/1/18まで)

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