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【フランス】サン・ジャン洗礼堂

場所:ポワティエ(フランス西部)
時代:メロヴィング朝フランク王国

サン・ジャン洗礼堂

サン・ジャン洗礼堂は、おそらくフランスに現存する最古のキリスト教聖堂で、その起源はローマ帝国末期の5世紀頃にまで遡る。建造後もメロヴィング期の6~7世紀、カロリング期、11世紀と増改築が行われてきたが、その後の戦争や革命などによる破壊を免れ、同国の文化遺産として、現在はメロヴィング朝時代の彫刻や石棺などのコレクションを展示する博物館となっている。メロヴィング朝はクローヴィスがキリスト教に改宗した481年に始まったが、彼の死後は領土を4人の子供に分割相続させ、それ以降各王家で内紛を繰り返し衰退した。そんな中で王家の宮宰カロリング家に乗っ取られた形で、メロヴィング朝は751年に終焉を迎えた。ところで、この時期の建造物は現在フランス国内だけでなく、周辺の国にも数えるほどしか残っていない。教会のクリプトなど建物の一部分として残っているものは他にもあるが、ほぼ唯一完全な建物として残っているこのサン・ジャン洗礼堂は非常に貴重な存在となっている。

西側ファサード

ここには2003年9月に訪れたが、本に載っている写真でみたような黒ずんで煤けた外壁ではなく、きれいに洗浄・補修されていてピンク色に近いレンガ色となっており、1500年の時の流れを感じるにはいささか拍子抜けした気がした。しかし現在の建物周囲の地面は建物の土台部分よりかなり高くなっていて、長い年月の差を感じることができる。出入り口のある西側ファサードは11世紀の増築分だが、南側や東側ファサードはメロヴィング期の古い文様がよく残されている。

南側ファサード
壁面のデザイン
建造時の地面と現在の地表の差

2003年の訪問時、残念ながら聖堂内の写真撮影は禁止されていたため、内部の洗礼用沐浴槽や壁面装飾、メロヴィング期の石棺など展示物の画像は残っていない。なお洗礼堂のすぐ側にはサントクロワ美術館があり、そこにも同時代の遺物を含め、たくさんの彫刻・彫像が展示されている。記憶が曖昧になっているが、ここポワティエで最も有名な教会が町の中心にあるノートルダム・ラ・グラン教会で、この周辺にメロヴィング期の地下墓所が発掘されたところがあり、小さいが道路沿いにガラス張りにされていて、中を窺うことができる場所があったと思う。

メロヴィング期の地下墓所
サン・ジャン洗礼堂(ポワティエ)

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