大手法律事務所所属弁護士は一弁二弁に偏っているのか?

日本では,各地方裁判所に対応して弁護士会も存在しています(弁護士法32条「弁護士会は、地方裁判所の管轄区域ごとに設立しなければならない。」)。例えば,北海道には4つの地方裁判所があるため,4つの弁護士会が存在します(札幌,釧路,旭川,函館)。

そのような中,東京についてのみ,地方裁判所が1つなのに対して3つの弁護士会が存在しています。東京弁護士会,第一東京弁護士会,第二東京弁護士会です。これは,現在の弁護士法が定められる前にこのような状況になったために,存続が許されているという状況のようです。なお,これら3つの弁護士会のどれに所属していようが,弁護士としての活動については何ら差はありません。

東京に3つの弁護士会があることの理由については今回はさておくとして。最近,この3つの弁護士会(以下「東京三会」といいます。)の中で,財政面での差が出ていることが話題となっています。東京弁護士会は,財政的に逼迫しており,第一東京弁護士会と第二東京弁護士会が弁護士会費を全会員について2000円減額したのに対し,東京弁護士会は若手のみ(65期以降)にとどめざるを得ませんでした
減額前:https://www.toben.or.jp/news/2019/03/2019kaihi.html
減額後:https://www.toben.or.jp/news/2019/06/2019-5.html

そのような状況の中,このようなツイートを目にしました。

東京弁護士会は経費を多めに払っているというような事情があるのですね。
四大法律事務所の弁護士は,初年度から高額な報酬を受け取っているのは事実でしょうが,だからといって「四大の弁護士からたくさんとる」なんていきなり言い出すのはどうなのでしょう。疑問を差し挟む余地が多すぎる気がします。

ともあれ,今回はこのツイート内容の是非を考えるわけではありません。そもそも大前提として,大手法律事務所の弁護士は東京三会のうち第一東京弁護士会と第二東京弁護士会に本当に入るのか,興味本位でちょっと調べてみました。

調査対象:東京に本拠地を構える(外資系法律事務所の日本支部を含む)企業法務系法律事務所で,所属弁護士人数が50人を超えているもの。
調査方法:2019年9月5日現在の日弁連弁護士検索を用いた。

数分でざっと作ったので多少ミスがあるかもしれません。確かにいわゆる四大法律事務所は第一東京弁護士会,第二東京弁護士会に登録している弁護士が多いように見えます。何故か長島・大野・常松法律事務所は圧倒的に第一東京弁護士会に登録している弁護士が多く,逆に森・濱田松本法律事務所は圧倒的に第二東京弁護士会に登録している弁護士が多いという面白い発見がありました。
五大法律事務所とされる場合に加わるTMI総合法律事務所(この表を見ると実は森・濱田松本法律事務所よりも人数が多いですが…東京三会以外に登録している弁護士の人数で逆転するのかもしれません。)は,ほぼ均等に弁護士が東京三会に分かれているようです。
いわゆる四大法律事務所を除いた大手事務所には,東京弁護士会に登録している弁護士が多い事務所もあります(シティユーワ法律事務所,ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業)。

以上,特に有益でもないかもしれない情報ですが,せっかく個人的な興味で調べたので共有してみます。司法修習生などは東京三会のどれに登録しようと迷うこともあるかもしれません(現に私もどれが良いのかと聞かれることが結構あります)。それに対する私の答えとしては,残念ながら現状では東京弁護士会を勧めることは厳しい状況です。このまま会費の差が生じ,また特別東京弁護士会に入りたいというインセンティブが働く状況も見出し難い以上,自由に選べる状況であれば(最初に所属する事務所のボスの所属する弁護士会に入る新人が多いと思いますが),今後若手弁護士が東京弁護士会を避けようとする可能性は高いように思います。

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