互いを「死なせない」ために共に生きる
朝日新聞デジタルの連載の頃から拝読していた。
壮絶だ。
回復記録なのかなと思って読んでいたが、びっくりするくらい話は暗転していく。「妻」さんは、自ら生死の境目に足を運び、その線の上を日々歩いている。
ありのままに描かれていて、そしてそれがとても壮絶だ。
でも、だからこそ、この本を必要としている人がたくさんいる。「妻」さんの「私みたいに苦しむ人を、もう出さないでほしい」との願いが叶うためには、1人でも多くの人に知ってほしい。
…でもそう思いながら、なかなか誰かに紹介する、ということができずにいた。だって、ただ「壮絶だから」というのは、私がこの本を紹介する理由じゃない。
著者が自身(と「妻」さんの)の問題として向き合っていった日本における精神医療の問題、貧困問題、患者家族の問題、いずれも切実に、かつ鋭く書かれている。…でも、何か引っかかる。
それは、なぜ著者は「妻」さんと離婚しなかったの?ということだった。
今回改めて書籍を手にとって、著者名で検索するとこの出版後のインタビューで、答えてくださっていた。
自分が逃げ出してしまったら、目の前のこの人はこのまま死んでしまうだろう。
例えではなく本当に、実感をもってそう思ったとき、人が逃げ出すのは難しいことなのかもしれない。もちろん、これを美化するのは危ない。逃げ出せなくて、ギリギリまで頑張っての介護殺人や心中は今日もどこかで起きている。
一方、改めて、「結婚」ってそういう仕組みだったんだなと思った。著者と「妻」さんに限らず、多くの人にとって、多かれ少なかれお互いが「死なせない」ための仕組み。
そう思うと、本書のタイトルはそのまま、このことを言ってるんじゃないか、と思えてきた。
「妻はサバイバー」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?