去りゆくもの。


ゆらゆら揺れる、
あの影の中に
昔、天国に行った人がいた。


影は小さく、なぜその人がいることに気づいたのか、今でも分からない。



色はないのに、
その人は昔気に入ってよく着ていた、緑色のパーカーを来ていた。
あぁ、年をとってない。



天国に行った時のまま、6才のまま。



足が速かったから、鬼ごっこでいつも鬼をやりたがった。あっという間にみんなを捕まえて、得意顔してたっけ。




あの日は、雨のあとで、地面がぬかるんでいて、走りづらかったんだ。
いつものように鬼ごっこをして、わたしはなぜか、滑り台に隠れていた。
ぺたん、とくっついて。
見えないと思ったけど、やっぱりすぐ見つかって。そもそも、かくれんぼじゃないのに。
その子が、滑り台の上から嬉しそうに滑ってきて、わたしは慌てて…



気づいたら、その子、落ちていたんだ。






忘れていた記憶。






影の中のその子は、あの時のまま笑っていて、今にもこちらに走り出しそうだった。




私を捕まえにきたの?と、思った時、その子は影の中に去っていった。





ゆるされたのか。



涙がぽとり、と落ちた。







おしまい。




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