アイコン男5

嬉野 雅道(水曜どうでしょうディレクター)

高瀬川沿いに歩くとその小学校は見えてきました。鉄筋コンクリート3階建て、なんとも贅を尽くした設えでした。当時の小学生も、手を引いてきた父兄もこの校舎を見上げて息を呑んだことでしょう。「さあ、ここはお前たちの小学校なのだよ」。優しく両手を広げて迎え入れるように、その建築には威圧感がありません。立誠に通い学ぶことは長く子どもたちの誇りだったろうと思います。それが小学校を初めて前にしたときの、私の正直な印象です。校舎建築の陰には、心の豊かさを先取ろうと理想を見つめた人々がいたのでしょう。それは、校舎が長く愛され、若き芸術家のイメージを刺激し続けてきたことからも容易に偲ばれます。私はこの小学校の建築の中に鋳込まれた人間の理想を見上げた日のことを、この先もずっと覚えていると思います。

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