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映画『TENET』感想

 **明示的にネタバレは書いてないですが、観ている前提で書いてます。未鑑賞の方はご注意ください。**

 久々に知恵熱が止まらない映画だった。自分が語彙力がある方じゃないのは重々自覚してるけど、ここまで「よくわからなかったけど、なんかスゲかった!!」とテンプレ通りの小並感をリアルに言わさせる映画も珍しい。

 本作とのファーストコンタクトは、(おそらく多くの人と同じだと思うけど)『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』上映時の予告。

 普通よりも圧倒的に長い尺の予告に、最初は入るスクリーン間違えたのかな?と焦ったあとで、予告とわかると「これは絶対に映画館で観なければいけない作品だ!」と勝手な使命感に駆られたのを覚えている。

 楽しみにしていたものの、コロナによる延期や仕事の多忙さもあって、結局観られたのは、この週末の土曜日。そして一夜明けたものの、今に至るまでほぼ『TENET』の考察サイトや解説動画を眺めることに時間を割いている。それだけ難解だった……。

 感想としては、Twitterにピッタリのイラストがあったので引用させてもらう。

 そもそも大変残念なことに、わたしは本作のテーマであり、もっとも重要な概念である「時間の逆行」を観賞中に理解しきれてなかった。これが今回の主たる敗因である。いや、何に負けたわけではないんですが。

 「時間の逆行」はよくあるタイムスリップと同じように、ピンポイントでその過去に戻れるわけではない。10年前に戻りたかったら、10年間逆行世界で過ごさなければいけない。10年かかけて時間を逆行するのだ。

 こう書くとそのままなのだが、本編中はマジでわかってなかった。

 当然この概念がわかってないと、作中の時間軸もよくわからないし、あのカーチェイスのシーンなんてもってのほか。とりあえず「ひっくり返っている車が元に戻るシーン、SUGEEEE!」で思考は止まってしまう。

 まぁどうやらカーチェイスのシーンは、作中でも屈指の複雑なシーンのようでネット上にも多くの考察が上がっていた。自分は鑑賞後、考察サイトを読むことで、やっとあのシーンの全体感を把握したわけだ。(細かいところを理解したわけではない)

 しかし「時間の逆行」の設定を理解した=この映画が理解できるではない。むしろスタートラインで、そこから新たな謎や疑問が満載である。

 例えば、逆行弾。序盤では、未来から送られてきたオーバーテクノロジーで、時間を逆行する性質を持った銃弾みたいな説明がされる。

 けれど、中盤から登場する時間逆行装置である回転ドアが出てきてから、その位置づけがよくわからなくなる。

 逆行時間で撃った(なんの変哲もない普通の)銃弾が、順行時間では逆行弾に見えるのか。それとも逆行世界、順行世界関係なく、時間を逆行できる性質を持った特殊な弾なのか。イマイチ判別つかなかった。

 主人公が、逆行弾の説明を女性科学者から聞くシーンを見る限りは後者のような気がするが、カーチェイス後のキャット拷問のシーンを見ると前者の気もする。

 こういった作品の世界観、設定を受け入れきったとしても、結局曖昧なところが出てきてしまうところ。これがノーラン監督作品の歯がゆいところだし、魅力なんだろうなと。

 デヴィット・リンチ監督作品みたく最初っから「よくわからん部分がある」と割り切れればいいのだが、ノーラン監督の作品は、その映画の世界観上ならロジカルに詰め切れれば、本編にある情報だけで、すべてのシーンに込められた意味にたどり着けるのかな?と期待してしまう。

 実際はそんなこともなく、先のカーチェイスのシーンもいくらタイムテーブルを整理しても、本編の描写だけではわからない情報が出てくるらしい。(自分はまだその域に達しておらず、考察サイトのタイムテーブルを理解するのでいっぱいいっぱいだけど)

 それでも、例え全部の解答が用意されてなくても、理解できる範囲で理解したいと思うのが心情である。なので、わたしはしばらく考察サイトばかり見てしまい、『TENET』のことばかり考えてしまうだろう。

 その気持ちに駆られる時点で、まんまとノーラン監督の術中にハマってる気がする。

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