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初めてつないだ手のひらにこみあげた愛しさが逃げてしまわないように

#平成最後の夏


ソースの焦げるにおいと賑やかな音と光
大人ぶりたい僕が、きになるお姉さんを誘ってみた花火大会。

リクエスト通りの浴衣で来てくれた。
なんでも言ってみるものだ。「今を戦えない者に次とか来年とかを言う資格はない。」、バッジョのいう通りだ。

とはいうものの、何をどうすることもなく歩く。
中身があるようで無いような会話は途切れなく続くけど、ピタリと寄り添って恋人のそれのようなことはなく、屋台の並ぶ土手を歩く。

川の向こうでは、暗がりの中でせかせかと動き回る姿が見える。

いい感じの場所がまだ空いていたのでそこで場所をとり、花火が上がるのをまつ。

なるほどな、うなじなんていく部位は女性にしかないのだ。
普段から出てないものが出てるからうなじはうなじなのだ。
見とれている間に、どうでも良いことを考え始めてしまった。多分少し前に読んだムラカミなんとかの影響だ。

世界中の恋人たちってのはどうやってそれになったのだろうか。
段取りがわからない。でも、今の僕とアナタはまぁそれのような空気な気がするんだけど、昨日と一緒と言われれば、まぁそうだとも思える。

とかなんとか考えてるうちに、最初の花火が上がる。

周りに人も集まって来た。

周囲に気を使うように間を詰める二人、触れ合う肩。

幾重にも上がる花火を肩を寄せ合いながら眺める。
どちらからともなく、互いの方へ顔を少しずらす。

最後の花火があがる。大きな音が広がる。
唇に残る余韻をあじわうように黙る二人。


子どもの僕だって、この夜がずっと続くものじゃないなんて知っている。
知っているけど、それでも、今は、赤青黄に映ったアナタの横顔をみつめていたい。

初めてつないだ掌にこみあげた愛しさが逃げてしまわないように。


画像出典:http://free-photo.net/archive/entry11259.html

100人共著プロエジェクト第6弾「100人で書いた本~色篇~」に寄稿した作品を一部修正しました。

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