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『狙いすましてなりたい自分になる』ファッショニスタ・POPPYインタビュー【後編】

『可愛い格好しておいしいものを食べる活動をしています』ファッショニスタ・POPPYインタビュー【前編】

◎どうして「仕上がる」ことができたのか

―POPPYさん的には、自分の着たいお洋服を着て、やりたいこと…、自撮りを撮るとかおいしいものを食べるとか、やりたいことをただひたすらやっていたら今のようになっていったっていう感じですか?

たぶんオレどこそこの展示を見たっていうツイート多めなのでそれあっての今なのかなあ、っていうのはある。

―確かに私もそれ関係のリツイートで目にする機会は多めかも。でも他の人が着たいもの着て食べたいものを食べてどこそこの展示を見に行ったってツイートしてもPOPPYさんと同じ感じにはならない。なのにPOPPYさんはPOPPYさんになったっていうことに面白さを感じます。

それはほんとに謎なんだよねえ。

―それってでもほんとに才能ってことだと思います。

自覚してないってところでね。ただ仕上がり方っていう話があったけど、それは本当に、狙いすましたことができるようになってきたっていうのがある。

―狙いすましたことができるようにっていうのは、『こう見せたい』『こういう像が作りたい』が実現できるようになったっていう意味合いですか?

ツールが揃ってきたっていう。

―この記事を読んでいる人は、何かを目指す過程で今POPPYさんがこの状態でいるのかなと思っている人もいるんじゃないかなと思うんですけど、そうじゃなくてただその時々選び取ってきたものの結果として今POPPYさんがこうであるってことですよね。

「どういう活動をしてるんですか?」って聞かれるのは確かにたぶん「なんかこの人は目的があるのだろう」と思われてるんだろうね。

―例えば「モデルになりたい」とか、そういう目的の過程で今ここにいるわけではないっていうことじゃないですか。

そう。なんか絶対被写体の依頼が来ないってことがわかったんだよね。あ、自分はそっちの方向じゃないんだっていうのがわかった。自撮りを上げ始めたのはなんか、「もしかしたら被写体の依頼があるかもしれない」とかそういう心はあったのかもしれないけど、今はもうまったくない。だからもう自分で撮る。そのクオリティを上げる。だから、狙いすましてるのはそれか。自撮りのクオリティ。

◎演劇、会社員、そして介護福祉士への道へ

―私たぶん何回もPOPPYさんに言ってるんですけど、POPPYさんの昔のブログ(数年前一時期POPPYさんは自分のお仕事について綴るブログを書かれていた)が好きだったんですよね。

あれねー。あれ、出来は悪い。あまったるい…。感傷的で。その前のmixi時代があって、それは面白かった

―mixiではどういう交流というか、どういう輪の中にいたんですか?

演劇。ENBUゼミナールにいたから。でも今演劇クラスはなくなっちゃったね。あと映像だけ。だからオレ小劇場バブルの真っ只中にいて、それがはじけて散っていく様を見ていたから…。

―小劇場バブル…。そっか、そんなころがあったんですよね。

あったあった。昼夜で4クラスぐらいあって、で巣立って、自分で芝居を打つじゃない。それがことごとくつまんないから。それで観劇人口が、減ったんだろうねえ

―そして今POPPYさんは介護福祉士として働かれているということで、手に職がありますよね。

うん。ある。そこからばっと広がった。(介護福祉士になる前に働いていた)割と大きい会社の事務っていうのは、その会社に特化した業務を一生やってる感じなので、つぶしが効かない。だから、このまま定年までやるビジョンが持てないなって時につぶれちゃったので、逆によかった。コミュニケーションに特化した仕事は意外と向いていたっていう。それがわかってよかった。

―会社がつぶれて、それで介護福祉士になったっていう…。介護福祉士への転職と資格取得ってどっちが先ですか?

転職が先。3年実務やって、試験。

―なるほど。あと私、「介護福祉士になって、ENBUで習ったことが生きている」っていうPOPPYさんの話がすごい好きで…。

空間認知と意識の分散とコミュニケ―ション。それをワークショップでゲーム形式で死ぬほどやるわけよ。なんかあの方法で介護のワークショップできるんじゃないかと思う。

―特にその入所されている方とのコミュニケーションの中で、演劇で学んだことが生きたと思った瞬間はありましたか?

ガワを被る。水谷豊のガワを被ってお客様と対峙する。ああいうかんじで、そう。で、それに慣れてほんとに自意識ってものもなくなったなあ。それ、私生活でもいいなあっていう風に。たぶんオレって話題豊富な人でもないし。とっつきにくい人だし。ガワを被ることでなんか色々開けた。
介護福祉士になる前に勤務していた会社で、最後に配属された事務仕事っていうのが売掛金管理とシステム監視とメンテだったので。事務なんだけどそれまでと打って変わってずっと誰かと喋っているお仕事で。問い合わせ業務とか。なんかそれが意外と自分に気持ちよかった。だからじゃあ次何かあるなら接客かなんかだなあって。

―接客も色々仕事がある中で介護福祉士を選んだのは?

結局資格制度があるから。公共の職業訓練で勉強ができる。あと「ババア萌え」っていう…のがある。なんでだろうね、よくわかんないけど。

―好きなんですね。

好きなんだよね。で、たぶん、向こうも好き。POPPYに対して耐性があるっていうか。年配のご婦人なので。男性アイドルがなんの断りもなくジェンダーレスだったっていう時代を見ている人達はたぶんすごいPOPPYがとっつきやすい。お互いに居やすい。

―POPPYさんはPOPPYとしての自分と、介護福祉士として働く自分の繋ぎ目というか一致している部分ってどういうところに感じますか?

かなり一致してるんだよなあ。こないだ採用面接を受けにいった時も「あなたの強みはなんですか?」って聞かれて「見た目のインパクトとスター性です」って答えた。元々用意していた答えではなかった。でもそれだなって。で結局コミュニケーションだから、相手が自分に興味を持ってくれていれば、そこで3プロセスぐらい飛ばせるわけ。『だからこれ言って落とされたらオレには向いてないな』っていう。なんかスターってどの現場にもいないとダメだなって。

◎ジェンダーについて

一切ジェンダーの話にならないのがイイよね。

―確かにPOPPYさんをよく知らない人がこの企画を組んだら真っ先に触れるのはそこかもしれない。でも私はなんか今回あえて話す必要がない部分かなって思ってて…。

オレのこと知らない人はオレのことどう思ってるんだろうね。あら男の人だったわみたいな人いないんだよね。オレってどう思われてるのかなあ。

―POPPYさんもゆっきゅんも、スカート履いてもイコール「女装を目的にしている人」とは見られないと思うんですよね。だって女装するつもりでスカートを履いているわけじゃないってことは見ていて明らかだから。でもジェンダー観…じゃないですけど、昔POPPYさんと大森さんの握手会で一緒に並んでた時、ばってん荒川の話になったことがあって。

あったね。

―で、私がばってん荒川がお米ばあさんに扮装して夕方のローカル情報番組に毎日出てるのが当たり前みたいな世界観の熊本県で生まれ育って、その後思春期に嶽本野ばらを通ってきているからなのか、スカートを履く男性に「それであなたのジェンダー観は?」って話をすぐ振りたがる世界観には全然ピンと来ないなあって話をPOPPYさんとしたことをずっと覚えているんですよね

そうだよそれで前の職場でなんとなくオレのPOPPYムーブを面白がってくれていた人が熊本生まれでっていうさ

―私も女の子を愛でる活動をたくさんしているからか、ごくまれにレズビアンですか?って聞かれることがあるんですけど、なんかそれも全くピンとこなくて。その人の活動とジェンダーを結びつけるということが。

それはだから高度に政治的な話なんだろうね。

―現場とかで周りの人から聞かれることありますか?ジェンダーにまつわることとか…。

ない。そこらへんをもしかしたら腫物のように扱っている人がいるのかなあっていう…。デリケートだと思われているのか。だからこそオレのアカウントをみんなだまーって見ているのかな。

◎最終進化形。「狙いすましてなりたい自分になる」

美少女画作家の細川成美さんと緊縛師でパフォーマーの吉井だりあさんっていう人がいて、8月のある日にそのお二人の展示を立て続けに見に行って感想を述べてるうちにおんなじ結論になっちゃって。「人は平等であるっていう建前はあるけどでも美少女が一番優れているよね」っていう。それは動かしがたいよねって結論になって。で、バキってわかる?漫画。

―読んだことはないですけど、名前はわかります。

男子に生まれたらまず、誰もが地上最強を目指すっていう思想が大前提になってて、オレはそれだなっていう。少女最強だから少女になろうとしてるんだっていう。

―じゃあPOPPYさんの最終進化形が美少女?

だから橋本愛ちゃんだよねー。最終進化形。あと二次元だと、化物語の戦場ヶ原ひたぎちゃんと、阿良々木月火ちゃん。結局、なりたいものがわかってきたっていうのが、狙い澄ませるようになったっていうのかな。それはツールに助けられてきたっていう。以前はすごい漠然とPOPPYをやっていたんだよね。

―狙い澄ませるっていうのは自撮りのクオリティであり、自撮りのクオリティっていうのを突き詰めると、「なりたい自分になれる」っていう。

そう。今年メイクをジルスチュアートに全部変えて。いい画材なんだよね。今まで何年も、塗ってもなんかよくわかんないし、これがどう功を奏しているのかわかんなかった。

―今日もメイクはジルスチュアートですか?

そう。

―ジルスチュアートも「狙いすますためのツール」の一つ?

そうそう。あとオレが仕上がっているっていうのは、縷縷夢兎の展示会にいってボコられないためっていうか、格闘家がさあ、っていうね?それはあると思う。縷縷夢兎の展示会に行って(展示会に来た他のお客さん達の気迫に)気圧されないことが強くなるってことなのかな。

―今後のビジョンとかってありますか?

オレのことをほんっとうに面白がってくれてる20人くらいの人達がほんとにゆかいな思いをしてくれればいいなって。たぶんそんなに広がらないとは思うんだ。なんかのご縁が合ってオレの使い道がわかるのかなあって。たぶん思いつくより前に始めていることがその人にとってのアレなんだよなあ。こういう服を着てこういう格好をしているのも、思いつくより前に始めていることで。だから、あまり決心して物を始めるのは自分にとってはよくない。『でどういう活動をされてますか?』『可愛い格好しておいしいものを食べてます』っていうのも、おとといくらいに思いついた。
自分の思想を伝えたいということよりも、若い人には割のいい生活をして欲しい。ほんとにだからジェンダー界隈の人間ではないし。思想がないっていうイメージで解釈されるのはなんかすごいしてやったり感がある。だからとにかくオレのこと面白がってくれてる人達がほんとに幸せになって、割のいい人生を歩んで欲しいよね。

『可愛い格好しておいしいものを食べる活動をしています』ファッショニスタ・POPPYインタビュー【前編】

POPPYさん twitter
https://twitter.com/poppy_cute_sexy



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