「成長」そのものにべつに価値はないよというお話

一昨日に引き続き、「ありまよさんはどのようにキャリアを積んできたのですか?」という相談に対する回答をつらつらと書いていきたいと思います。
前回のまとめはこんな感じでした。

・そもそも全員が「キャリアを積む」必要はない
・口当たりのいい表現をやめて欲望をもっとゲスに言語化しよう
・それは仕事以外では実現できないのか一回考えよう
・煽り系オ●ライ●サロ●には入るな
・モンスターと真っ向から戦うな

「キャリア」という言葉のなかみを噛み砕いて、病まないゴール設定をする方法をいろいろ書きました。じゃあゴール設定は適切に終わりましたよ、と。今回は実践編で、「そんで日々の仕事ではどういうことに気を付けてくといいの?」という点を、ハマリやすい罠とともに紹介していきます。

前提:あなたの成長はお客さんにとってどうでもいい

20代前半~半ばくらいの子の相談に乗っていると、「自分がどれだけ成長できているかわからなくて不安です」「もっと成長できる環境があるのかもと思ってしまう……」と話してくれる子が、すごく多いです。皆まじめだなぁと感心しつつ、毎度うまーく言えない違和感を持ってしまうので、今日はその「違和感」の正体を、がんばって言語化していきたいと思います。

たとえば、あなたがそこそこいい値段のする和食屋さんに入ったとします。雰囲気も気さくだし、お料理も悪くないし、いいお店だな~と思ったあなたはカウンターに立つ大将に話しかけます。「いいお店ですね、ここは長いんですか?」「はい、今年でやっと3年目になりました」「まだ新しいお店なんですね!」と返したところ、大将に「でも最近、自分が成長できてるのか不安なんですよね……」と言われたら、どんな気持ちになるでしょう? 「え、知らんがな」と思って終わりですよね。

だって、こっちはお客だし。そこそこいいお値段払ってるし。店を構えてる時点でプロだし。100年の老舗も3年目の新店も関係ないし。今この瞬間に、できるだけおいしいものをできるだけいいサービスでできるだけ安価に提供してほしい。お客さんの願いはそれだけです。「この店、3年前に比べてめっちゃ成長しましたね!」なんて喜んでくれるのは、身内だけですよね。

解決策① 成長にフォーカスするのをやめよう

もちろん、この世界には「人間の成長」にフォーカスしないといけない人もいます。たとえばマネージャー、あなたの上司ですね。あなたの上司はあなたが適切に成長するように支援していくのが「仕事」なので、脳みそを振り絞って、心を尽くして、あなたの成長に取り組まないといけません。
あとは、会社の人事部なんかもそうです。特に新卒一括採用が根強く雇用の流動性が低い日本企業においては、「右も左もわからん新卒を何とか一人前に育て上げる」のは、人事部の重要なミッションのひとつです。

でも、あなたが「自分が成長すること」が自分の仕事だと思っているとしたら、それは大きな間違いです。寧ろ求められているのは、今この瞬間に、できるだけ良質なものをできるだけ良質なサービスでできるだけ安価に提供してほしいという部分の方です。「成長したい」というのはあなたの「欲望」であって、ミッションではありません。ここを混同しないようにしましょう。

私は出版社とIT、二つの業界を経験していますが、「成長」というワードは、出版社にいた2010年前半にはほとんど耳にしなかったように記憶しています。業界の違いなのか、世代の違いなのかはわかりませんが、メディアの影響も大きいのかな、と思っています。人事系メディアの皆さん、そろそろ若者の「成長」を煽るのはやめにしませんか……。皆、余計な不安を抱きこんでるだけに見えるよ……。

解決策② 何でもいいからチームでNo.1になろう

誰だって、おいしいレストランとまずいレストランなら、おいしいレストランで食事をしたいと思います。同じおいしさなら、安いレストランの方がいいし、同じ値段なら、雰囲気のいいレストランの方がいいですよね。

同様に、サラリーマンとして仕事をするなら、誰だって3~5年目の成長途上の若者よりは、10年目の中堅や20年目のベテランと仕事がしたいでしょう。3年目の新店が100年の老舗と戦っていかないといけないように、あなたは社内外の中堅の先輩やベテランの大先輩と戦っていかないといけません。そのためには、「成長」なんてものを優雅に待っている暇はないのです。今この瞬間に、一つでもいいから、目の前のベテランよりもできる要素を、何らか持つ必要があります。

先輩が10年かけて築いたお客さんとのネットワークや信頼関係、業界知識や商品知識を羨ましく思っても、一朝一夕でそれに追いつくのはたいへんです。年次をさしおいて、「何だったらこの人に勝てるか」「何だったら今この瞬間、チームで一番になれるか」熟考してみましょう。たとえば、「一番若くサービスのターゲット層に近い」とか「SNSにやたら詳しい」とか「どれだけ残業しても毎朝誰よりも早くくる」とか、何でもいいです。もし「ここはそこそこ自信があるけど、某先輩が強すぎてNo.1になれるほどじゃないなぁ……」という場合は、2つ組み合わせるやり方もあります。「数字に強い上に酒も強い」とか「レスポンスが早くて記憶力がいい」とか。

ここで大事なのは、「一番」というのは必ずしも「クオリティ」の問題ではなく、寧ろ「ポジショニング」の問題であるということです。「一番になろうとたくさん努力する」のではなく、「少ない努力で一番になれそうな領域を見つける」ことが大事です。

飲食店のたとえに一瞬戻ると、「街で一番おいしいお店」になるためには努力と成長が必要でも、「街で(Wi-fi飛んでるレストランの中では)一番おいしいお店」とか、「街で(16時までランチやってる中では)一番おいしいお店」なら、今この瞬間めざせそうじゃないですか?

解決策③ MP消費の少ない領域を自覚しよう

最近、仕事で非常に印象的だった出来事がありました。「この人、同い年の中で一番仕事ができるのでは?」と思っている他社のPがいるのですが、その人に「まよちゃんは映画とかマンガとかいっぱいインプットしてて本当に偉いよねぇ……おれはやらなきゃと思いながら苦手意識がありすぎて、ついメールとか返すのに逃げちゃう」と言われたことです。ついメールとか返すのに逃げる……!? まったく意味がわからない……。
たしかに彼はメールの返信が早すぎて「まったく寝てないのでは?」「実は2人いるのでは?」という疑いが常につきまとう人なのですが、彼にとって「メールに返信する」というアクションはMP消費0でできて、でも「プロジェクトの下準備のためにマンガを読む」はMP200くらい消費するので、元気がないとできないらしい。普通逆じゃない? わたしは「アーあのメール返さなきゃ……」と頭の片隅で思いながらついマンガを読んでしまうタイプなので、これは結構衝撃的でした。

前回の解決策③ 「頑張れる上限」を線引きしよう では、「モンスターは案外ゴロゴロしてる」と書きましたが、「モンスター」というのはクオリティの高い仕事がめっちゃできる能力の高い人のことではありません普通の人にとって苦になることが、まったく苦にならない人のことです
10年目の先輩よりクオリティの高い仕事をするのは結構な難関ですが、10年目の先輩が苦手としていることが、もしあなたにとって「え、これって皆はできないの?」ということだったら……。何となく、チームの役に立てたり、 何なら一番になれる気がしてきませんか?

解決策④ 苦にならないことをいっぱいやろう

人間は、「苦労して身につけたこと」を、どうしても「自分の得意分野」と思いがちです。でも本当に「得意なこと」というのは、自分にとっての常識だったり、当然すぎて気が付いていないことの方が多いです。もしあなたが「毎朝始業時間の15分前に会社に着く」のを当たり前にしているとしたら、それはあなたの「得意分野」です。「いや、そんなん社会人としての常識だし、強みでも何でもないでしょ……」と思うかもしれませんが、世の中には毎晩「あああああ明日も9時に会社に行かなきゃ……仕事は好きだけどまじで出勤が鬱……世界滅びないかな……」と思いながら床につき、ギリギリの戦いの果てに、MPを500くらい消費して、どうにか始業時間に間に合ってる人間が五万といるのです(わたしとか)。

世界は広いので上には常に上がいて、特に3~5年目くらいだと仕事では経験も知識も上の人ばっかりなので、「能力」とか「クオリティ」とか「成長」などの「縦軸」で成功しようとすると、思うように結果が出ず、結果が出ないので自己肯定感も下がり、がんばってるのに病んでしまう……という負のループにハマりがちです。能力が足りないからこそ、「得意・不得意」とか「ポジショニング」とか「バリエーション」などの「横軸」を意識した方が、結果も出やすいし、人にも重宝されるし、自己肯定感を維持しながら、たのしく働けると思います。

「キャリアを積みたい」悩みへの返答まとめ(後半)

社会人生活は、長いです。「サラリーマンにとって一番重要なことは何ですか?」と聞かれたら、私は「ポテンシャルが高いこと」でも「成長意欲があること」でもなく、「病まないこと」だと迷わず答えます。

と、えらそうに書いてますが、私自身は「できる人」になりたくて、25~28歳前後くらいまで割と病み病みでやってきました。30歳くらいでようやく、「どうもそういうことではないんじゃないか……?」と薄ボンヤリと気付いて、編み出したメソッドが今回書いた内容です。まとめます。

・成長にフォーカスするのをやめよう
・「今この瞬間」年次に関係なくチームでNo.1になれる領域を探そう
・↑ができれば自分にとっては「当たり前」の領域だと尚◎
・苦にならない(けどほかの人は苦手)なことをいっぱい積み上げよう

この記事が、成長に悩む人への一滴の福音になれば幸いです。

記事上で想定している社会人3~5年目の方、わたしと同じ10年目の中堅の方、あるいは20年目のベテランの皆さまの、「ここが分かりにくい」とか「同意しかねる」とか「いや、成長にフォーカスしてこそ俺はここまでこれたわ」みたいなご意見も、たくさんお待ちしてます。TwitterまでリプとかDMください~。 @arimayoco

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