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日記:最近話してねぇフォロワーのスペースに入った話

長年Twitterを続けてると、
避けられない事がひとつ…………

「最近あのフォロワーと全然話してねぇな…」

という状況。単に会話する機会が無かったり、気付いたら何か別のコンテンツにハマってたりと、まあ仕方ねえな〜と言えば仕方ない所でもあるのだが、やはり、少しばかり寂しい。
かと言って唐突に話しかけるというのは気が引けるし、肝心の話題もコレといって特に無い。フ〜ン、八方塞がりってワケね‥‥二方だけで塞がってるが?

そんなままならない日々を送っていた中、
あるフォロワーがスペースを開いていた。

『作業スペース』

あまりにもシンプルなスペース名。
そのスペースの主は、正に前述した
「最近全然話してねぇフォロワー」だった。

そのフォロワーは、アイマスの2次創作小説を書く方だった。昔は同じコンテンツを愛する者同士何かとよく話していたのだが、いつからだろうか。あまり互いに言葉を交わさなくなっていった。別に、何か仲違いする様な強いキッカケがあった訳ではない。その逆だ。何も無さすぎた。それだけだった。

そして、月日は流れ、気付いたら。



その人は、担当アイドルのエロ小説を精力的に
執筆する様になっていた。



その人は、担当アイドルのエロ小説を
精力的に執筆するようになっていた。





あまりの驚きから2回も書いてしまった。
いや、本当に何か気付いたらそうなっていた。
どしたん?何があったん?話聞こか?



その人の普段のツイートはよく見る。芸能人…特に、お笑い芸人が好きらしい。そしてジャンプ漫画や忍者と極道などの定期更新ウェブ漫画の感想を勢いのあるネタツイに絡め日々発信していて、己が童貞である事を苦にしているが、風俗店へ行くのは何か負けたような気がするので今日この日まで貞操を保ち続けており、元々アメフトをやっていたようで筋骨隆々、時々上半身裸になったり、メイド服を着た自撮りを投稿したりする。こう書き下してみると本当に意味分からん人だな………。


取り敢えずそんな人がスペースを開いてくれていたのだ。しかし、少しだけ違和感があった。



「あれだけ普段から賑やかな人なのに、

彼以外誰もスペースに居ないし、入らない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





彼がスペースを開いてから既に20分程が経過しているのを、自分は知っている。何故ならば「俺、本当にスペースに入ってもええんやろか……」と20分程逡巡していたからだ。

優柔不断すぎ❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️


もう流石に『意』を決せや……行くわよ!!!!!
と清水の舞台から飛び降りるが如くスペースに飛び込んだ。そして、そこで漸く理解した。




何故、この人のスペースに誰もいないのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




そこにあったのは。
『苦しみ』としか、形容が出来ない物だった。


延々と続くタイプ音。少しばかりの静寂。
タイプ音。タイプ音。静寂。そしてタイプ音。


段々とその音の強みを増していくタイプ音は、
ある種、暴力的な物にさえ聴こえてくる。



そして、一切の音が止む。



体感で、1分程だろうか。宇宙開闢以来なのでは
ないかと思えるほどの『無』の時間。



そして、その『無』の時間は、ビックバンの如き『叫び』で唐突に終わりを告げた。










「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぉ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!!
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!!!!」


「なんで……なんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…………」


「死んでくれ…………本当に………………」











        初めて見た。
   この人が、ここまで苦しんでいたのを。

普段の底抜けに明るげなツイート童貞故の苦悩の吐露、そしてエッチな自撮りDMを日々渇望する彼の姿からは、想像も付かぬような慟哭。焦燥なのか、苛立ちなのか、己の不甲斐無さなのか。恐らくそれらの全てを掛け合わせたとしても、ソレを正しくは著しきれない。そんな『苦しみ』に塗り潰された叫びだけが、そのスペースを満たしていた。


彼に何て声を掛ければ良いのかは
分からなかったが。

彼に何て声を掛けてはいけないか・・・・・・・・・・・・・・・
分かっていた。

少し長めになってしまうので掻い摘んだ形での紹介となってしまうのが実に心苦しいのだが、自分の好きな作品、『パンプキン・シザーズ』という漫画にこういった言葉がある。


「絵を生業とする者が、居るとするだろ?」

「食えてはいる…けれど──どうしても、
納得できるモノにならず苦悩する」

「その あまりの苦しみように」

「善意から『苦しむだけなのだから、絵描きはやめなさい』と止める者がいるかもしれない」

「或いは『自分が好きでやっている事なのだから、文句を言うな』と諌める者がいるかもしれない」


「違う 違うのだ」
「この”苦しみ”は」
”武器”であり”感覚器”なんだ」


「苦しいのが良いわけない」

「でも、苦しみを喜びに近付ける戦いに
勝つ為には」

苦しみという器官で打破すべき不可視の敵影を
捉える必要があるのだ」

Pumpkin Scissors 22巻 第111話『5日目:獅子の独白』より






そう。彼は正に戦っている最中だった。
苦しみを以て、何かを捉えようとしている。
自らの作品を、より良いものにする為に。

そんな彼に、中途半端な同情や優しさのようでその実何も彼に寄り添えていないような言葉を送るのは憚られた。

きっと、ほかの人も同じ事を思ったのだろう。
だからこそ、このスペースには誰もいない。

彼に生半可な言葉を送る人は、誰もいない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分も他の人に倣い、そのスペースを出て行くのが正しかったのかもしれない。彼にとっての不可視の敵影は、彼にしか捉えられないのだから。

他人にできる事なんて、ひとつも無い。


ひとつも無いのか?

かつて幾度となく言葉を交わした人が、
こんなにも辛そうにしているのに?


本当に無いのか?

何か、あるんじゃないか?


自分は、彼の力になりたかった。
彼が往かんとする道の中で味わう辛酸を、
ほんの少しでも和らげることが出来たなら。

衝動的に、スピーカーのリクエストを
送ってしまっていた。

彼に、何と声を掛けるのが正しいのだろう。

「頑張ってください」?

誰がどう見たって頑張っているだろうが。

「応援してます」?

最近まともに話してすらいない人間が
言うような言葉か?

考えが纏まらない内に、
リクエストは承認されていた。

「あ、どうも、ありめさん……」

ああ、自分の事を覚えていてくれたんだ。
そんな場違いな感想が思考を妨げる。

もうミュートボタンを解除すれば、声が届く。

ボタンを押す。マイクが着く。何かを伝えようと
心を絞り出すように自分の口から溢れ出た言葉は。







「フフッ………苦しんでいますね?」












俺は神か何かか?

あんだけ悩んでおいて実際に出力されたのは、
『火の鳥』の人類をナメくさってるクソ鳥みたいな言葉だった。


ヤバすぎ〜❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️



「はぁ………」


フォロワーの返事からも明らかに
「何だコイツ…」感が溢れている。

当たり前だ。創作で死ぬほど苦悩している中で
何か急にお高く止まってるオタクが現れたのだから
「はぁ………」程度で収めてくれたのは
彼の人徳の高さ故に他ならない。

申し訳なさすぎ〜❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️




「………今は、どんな作品を執筆していらっしゃるんですか?」

落ち着け、早急に軌道修正を図らなくては。
このままでは、イカれた天上人みたいなイメージをフォロワーに植え付けてしまう。

そうだ。次の言葉で、立て直せばいい。
教えてくれフォロワー、一体何を書いてるんだい?







「あぁ…まあ何というか…アイドルとSEXをします







「わぁ、SEX…!それは………頑張らないといけませんね❗️❓❗️❓」









もう誰か俺を殺してくれ。



何が「わぁ、SEX…!」だ。
情緒とモラルを全て持っていかれた千雪さん*¹か?

牛丼に素直に喜ぶ桑山千雪さん(23)


✳︎1…桑山千雪。大人気アイドル育成ゲーム
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の
登場アイドル。誰もがその慈愛心が溢れながらも
時折子どものように天真爛漫な振る舞いを見せる
彼女に愛を込めて『千雪さん』と読んでいる。

因みに千雪さんは絶対にそんなこと言わない。



千雪を穢すな 頼むから死んでくれ
お前のような者は生まれてさえ来ないでくれ



おむすび恐竜*²ならぬおむすび黒死牟*³に成り果てた
俺は、既にパニック状態に陥っていた。
次に何を言い出すのか当人の俺ですら分からない。


G.R.A.D.編コミュ 『千雪って人が』より抜粋


✳︎2…千雪さんがMCを務めるラジオのお便りコーナーで「いつも聞いてるよ、千雪」などと、書き出しから馴れ馴れしくも千雪さんを呼び捨てたオタクのハンドルネーム。コミュ実装当時、おむすび恐竜のアンチスレが立った。

✳︎3…そんなものはない。



「あ、そうだ!スパイダーバース観ませんか!?メチャクチャ面白いですよアレ、アマプラに追加されたんで良い気分転換になると思います!!!!!」

本当に何なんだコイツは?

「そうなんですか、でも自分……あまりマーベル系?の作品知らないんですけど、大丈夫ですかね?」

最早フォロワーも俺を哀れに思ってくれたのか、
あちら側から話を合わせてくれていた。

情けなさすぎ〜❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️❗️

「あ〜大丈夫です!予備知識なくても楽しめるタイプのヤツなんで……実際自分もマーベル系作品はほぼ知らなくて………ホント『映像美』って感じの作品で………誇張抜きでカートゥーン系アニメの最先端を行っていると言ってしまっても過言ではない作品っていうか…………」

ここから先の俺はもうスパイダーバースの事を
ただただ褒め称え続けるだけの存在と化していた。
フォロワーの方を褒め称えろや。


そんなこんなで。


何だかんだあったが、最後あたりにはフォロワーも笑ってくれていた。失笑に近い物だった気もしないでもないが、あの苦しみに満ちたスペースの空気は幾らか和らげられた様だった。

「すみません、色々と煮詰まっていたんですが、
人と話せて少しばかりガス抜きが出来たと思います ありがとうございました」

どれだけ人が出来ているんだろう、この人は。
まるで千雪さんだ。『包容力』という言葉を優しく捏ねて、人間の形に仕立て上げたような存在。
童貞だなんて些末な事に思える恭しさである。

いえいえ……と辿々しくも礼を返す。
斯くして、フォロワーとの久々の交流は
幕を下ろした。


この駄文を読んでくださった方の中にも、もしかしたら「最近、あの人と話せてないな…」という心当たりがある方もいらっしゃるのではないだろうか。「今更何か話すことなんて…」と思うかもしれないが、実際話してみると意外と相手も貴方の事を見てくれていて「最近、この人と話せてないな…」と思ってくれていたりするものだ。
親愛なる隣人相思相愛相互フォロワーってワケね…

𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬………



まぁ何と言いますか。
ほんの少し、気分転換がてら。
久しぶりに最近全然話してねぇフォロワーと
話してみるのも、悪くないものですよ。



つまり、何が言いたいのかというとですね。

皆さま、スパイダーバースを観てください。

\Amazon Primeにて絶賛配信中!/


ありがとうございました。


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