妹の墓参り

久しぶり、また来れて良かった。そういえば人生で初めて花を買った。来る途中の花屋で。この二束だけで1400円もするんだぞ。

 感謝しな。『松のや』だったらトンカツ定食が3回くらいは食えるぞ。俺とお前で頼んでも1回分ギリ行かないくらいお釣りが来る。ついでにコロッケとかを頼んでも良いかもね。コロッケ、自分で作るの面倒だし。松のやは弁当作るのが面倒な時とかによくお世話になってる。普段はアプリクーポン使ってるけど、Twitterの公式アカウントで時々限定クーポンが出ているから毎日チェックしてる。でも自我持ってるタイプの公式アカウントだから、いつも半目で見てる。

 こんな何もなくて、年に一度や二度くらいしか人が来ない所じゃ暇だろうし最近の話でもしようか。仕事を辞めて一瞬だけホストになってみた。俺でもなれるんだな、あれ。テーブルマナーとかは覚えるの面倒だったけど、意外と慣れればながら作業で出来る様になる。色んな人を見たよ。急にアルコールと胃液だけの透明な吐瀉物を撒き散らす先輩ホストとか。キッチンの中でやられたものだから、本当に大変だった。

 1番印象に残ってるのは元地下ドルのホス狂かな。アイドルと話すの、人生初だわ〜記念日にしてもいいかなどと適当な事をほざいていたら、アハハ、と笑われて「こんなの、誰でもなれるから」とカラッと吐き捨てるかの様に返された。





こういう、心底どうでもいい話を。

貴方と、ずっと続けていたかったな。





 沖縄の墓参りの風習には『うちかび』という紙幣を模した冥銭を焚き、死後の世界へ仕送りをする文化がある。毎度思うが、死んだ後に金を渡されてもせいぜい地獄の沙汰くらいでしか使い道がないだろう。もう四十九日なんてとうの昔に終わってるし、閻魔様が再審をしてくれるという話も聞かない。
 旅立つ際に不要物を全て売り払っていたくらいにさっぱりした性格の妹の事だから、こんなのはもう要らんと火でも点けて「どうだ明るくなったらう」とか言ってそうな気もする。


 いつの日か妹と会えた時、既に身銭を燃やし尽くしてたらどうしようか。お前らしいなぁと笑って、一緒に松のやでも探そうかな。特に貴方に何かをしてあげられたような出来た兄ではなかったけれど。まあ、1400円くらいなら。こんな自分でも、奢ってやれると思うから。

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