クソゲーを作ろう! ―『エルダア・クエスト』リメイク計画― 第二話

「勇者がやってくる」その知らせが獣人の村を震撼させたのは、戦士が村を訪れる三日前のことであった。
五人組の若者がゲーム開始地点であるビヤンコの村から旅に出たという。「ゲーム」が開始したのだ。

「一昨日ビヤンコを出たって言うならココに着くのはいつ頃だい!」
「は、早いと7日……」
「いや、今日はまだアカガネの洞窟から出てないというからあと11日はあるかと」

狼と人間のハーフの獣人達が全身の毛を逆立ている。皆の脳裏には二十年前の惨劇がありありと浮かんでいた。獣人の森に乗り込んできた勇者達が草むらに分け入り、獣人を殺し、経験値とドロップアイテムを集め、また殺す。そんな殺戮が5日続いた。

「もうダメだ! もうオシマイだ!」
恐怖のあまり狂乱する者が周りに取り押さえる。
実際のところ、この一人だけでなくこの場にいる全員が泣きわめきたかった。当時を知らない子どもたちも大人たちのただならぬ雰囲気を感じ取り母親にすがりつく。

「ど、どうするんだよ……」
「どうするって……」勇者五人組がまるで退屈な作業の様に淡々と自分の親を兄弟姉妹を狩っていく光景が思い起こされる。当時幼かった者はみな物陰に隠れ災いが去っていくのを待つしかなかった。

「殺せ! 五人全員ぶっ殺してやる! 奴らの首を村の社に吊るしてやる!」
取り押さえられた獣人が涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら叫ぶ。
「馬鹿野郎、そんなもんみんな返り討ちさ」
「うるせえ! こんなもん、殺すか殺されるかだ!」
「死にたいならお前一人で勝手に死ね!」
「今度こそ、刺し違えてでも彼奴等ぶっ殺してやる!」

「皆のもの落ち着けい」
話し合いが紛糾しかけたけたその時、嗄れた声がその場を制した。
「長老……」
老齢の獣人が歩み出た。
「僅かな可能性だが上手くいくかもしれない方法が一つある」
「そ、それは一体……」

「勇者を倒すにはこちらも勇者を用意するのじゃ」
誰もが息を呑んだ。

【続く】

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