思い出の学生旅行

夏休み、友達の佐藤と飯塚と僕と
3人で旅行に行く計画を立てた

大学生最後の夏休み
それぞれ就職先は決まり、あとは
だらだらと学生生活を過ごすだけだ
旅行の計画を提案したのは佐藤だった

「なんか夏らしいことしよーぜ」

僕も飯塚も夏休みのスケジュールは
真っ白だった、彼女でもいれば
話は違ったかもしれないが。

「いいね、何する?海とか花火大会とか?」

僕は佐藤の提案に乗った

「野郎同士でいってもつまんねーだろ、あ、でも可愛い子いっぱいいるだろうな」

「だいたいカップルじゃないか?あとは家族とかさ」

飯塚は冷静に言い放す

「女同士もいるって!そこに男グループの俺らが声かける!みたいなさ!いいじゃん!行こうぜ!」

「う、うん」

中学、高校と男子校だった僕は
しばらく女性と関わっていなくて
どう話したらいいんだ?
と、思うくらい接し方を忘れていた

家に帰り、旅行の準備をしていたら
妹に「おにいちゃんなにしてるの?」
と言われて友達と旅行に行くんだよと
話していたら、お母さんに
「海行くんだったら気をつけなさいよ、さっきニュースでやってたけど女性が溺れて亡くなったらしいから」
と忠告された。大丈夫だろ、俺は泳げるし。
でも死亡事故があった後にいくのは少し怖かった

旅行の日当日、駅前で待ち合わせ
アルバイトもしていない僕の生活は
昼夜逆転していて久しぶりに朝日を浴びた
光が痛いくらい目を攻撃してくる
言い出しっぺの佐藤が車を出してくれると
言ったので、素直に甘えた
助手席に飯塚が乗り道案内をする
ぼくは後部座席に乗り、目をこする

着いたらすぐ海にいこーか
いや、飯が先だろ
早く可愛い子みたいじゃんかー

他愛もない話をしながら数時間
僕たちが宿泊する旅館に着いた
作りは木造で横開きのガラス扉
いかにも日本の旅館という作りだ
ガラガラと開けるとすぐにお線香の匂いが
漂ってきた

「すいませーん!予約した佐藤でーす」

すると男性が来てスムーズに
部屋まで案内してくれた

「よしっ!海行こうぜ!海っ!」
耳鳴りがするくらいの声をあげた佐藤
日焼けするの嫌だなーと思いながら海へ向かった

最初はあまり乗り気ではなかったが
いざ遊んでみると意外とはしゃいでしまう
水で遊ぶなんて小学生の時、授業で
プールに入った以来だ
じんわりと汗をかいた体を一気に
快感へと変えてくれる塩水

「お前、肌白すぎないかっ!?女子かよ」

「うるせーなー」

小馬鹿にされながらも3人で遊んだ
すると佐藤が小声で

「なぁなぁなぁ、あそこにいるピンクの水着の子スッゲー可愛いじゃんか!なぁ、二人とも行こうぜ」

女性に声をかけるなんて無理だと思ったが
久しぶりの水遊びに興奮したぼくは
なんの根拠もないがいける気がした
声をかけたのは佐藤だった

「ねぇ!遊ばないっ!?ご飯くらいなら奢るからさっ!」

ショートの茶髪、ピンクの水着を着ていて
「え?マジで?いくいくー!」と
ノリがいい、名前は高崎さん
佐藤が可愛いと言った人だ

もう一人は、黒髪のロング
青い水着を着ていて、高崎さんみたいな
ノリの人とまるでつるみそうにない印象
うちで言えば飯塚みたいなポジションかな?
みんなをまとめるというか冷静というか。
僕の推測は間違っていなかったと思う

「どうも、高橋です」

と一言だけいうと後は高崎さんを
監視するかのようにくっついている
正直、話しかけにくいオーラが出ている

そして最後の3人目
前髪は目にかかるくらいまで伸びていて
ぶつぶつと何かを言っている
名前を聞くと「‥武田」と蚊の鳴くような声で言うとまたぶつぶつと話し始めた
海という楽しい場所とはかけ離れている人柄
だけど綺麗な顔立ちで僕のタイプだった

6人で海に入り夕方まで遊んだ
「はぁ〜っ!!楽しかった!
疲れたしそろそろ帰るわっ!」
と高崎さんの声で終わりを迎えると
また遊ぼうよ、連絡先をーと
佐藤が話している
次またあった時に教えてあげるわー
と軽くあしらわれ、旅館へ帰った
すると

「ああっ!高崎ちゃんじゃん!」

「うそ、あんたたちもっ!?」

「また会ったから連絡先っ!」

さっきまで遊んでいた3人も
僕たちと同じ旅館だった
一度部屋に戻り、食堂へ向かった
6人で夕食をとることになったが
大人数でのご飯は苦手だ
食事が終わり、部屋に戻り休んでいると

コンコンと扉が叩かれた
出ると高崎さん、高橋さん、武田さんが立っている

「やっほー遊びに来たよぉ〜!」

「おっマジで!いいよいいよ!」

トランプをしたり枕投げをしたり
修学旅行の夜のような事をして遊んでいたが

「夏といえば怖い話じゃない?」
と佐藤が切り出し、部屋の電気を消すと
怪談大会が始まった
こんな人たちの話なんて怖くないだろと
思っていたが一人でトイレに行けなくなるくらい怖かった
が、こんな時に限って尿意をもよおす

「あ、ちょ、ちょっとトイレに」

今時、部屋にトイレがついていないなんて珍しい
廊下に共同トイレがあり向かう
ようをたしてトイレを出た時に後ろから

「ガタン」

となにかが倒れるような音がして驚いてしまった
さらに驚いたのは音がなった方を向くと
武田さんが立っており、あれ?さっきまで
部屋にいたはずなのに?と思った。
僕が部屋を出た後に同じくトイレにでも行ったのか。

「何してるの?一緒に部屋に戻ろうよ」

武田さんは無言で僕の方へ近づいてきた

「何してたの?」

「お手洗いに」

「あっ‥ごめん、聞くことじゃなかったよね」

デリカシーのないことを聞いてしまった
廊下に出てるならトイレくらいだろう
部屋にないんだから。

「今日楽しかった?あんまり笑ってなかったような気がして」

「‥」

「うちの佐藤、うるさかったよね。海に行ったら女の子に声かけるんだーって張り切っちゃってさ」

「‥」

「高崎さんと高橋さんとはよく遊ぶの?意外な組み合わせというか、性格がバラバラな気がするからさ」

「‥‥っ」

「ん?なに?」

「‥」

ボソボソと言っていたが上手く聞き取れなかった
仲良くなろうとすると空回りしてしまう
僕ばかり話しかけすぎたかな

部屋に戻ると僕が話す番になり、困ってしまった
そう言った怖い話は持っていなくなにを話したらいいか。
あ、そうだ

「怪談って話じゃないんだけどね、最近海で女性が亡くなったらしいんだよ、しかも僕たちの遊んでた海で」

「えぇ?マジ?そういうのが1番怖いんだけど」

食いついたからよしとしよう。
話していないのは、武田さんだけだ

「武田さんは?」
と、僕がいうと答えたのは飯塚だった

「武田さんが部屋に来るわけないだろ」

「いやだってさっき廊下に」

「廊下にいるっつうか、廊下くらい誰でも歩くだろ」

「違うって。高崎さんの隣にいたじゃん、武田さん」

高崎さんはすぐに部屋の電気をつけた

「ちょっ、ちょっとやめてよ、話だけならいいけどこういうのはシャレになんないって」

「え?」

「さっきから言ってる武田って‥」

「いやだからそこに‥」

さっきまで高崎さんを真ん中にして
左に高橋さん、右に武田さんと座っていたはずだが姿がない
こんなに武田さんにこだわっているのは、タイプだしあわよくばと思っていたからだ

「そうだぞ、高崎ちゃんがかわいそうじゃないか」

佐藤は高崎さんの肩を持つ

「てか、武田って‥なんで知ってんのよ」

「なんでって言われても遊んでたしさ」

「‥私、忘れようと思って海で遊んでたのに。後悔してんだから」

「どういう事?」

話を聞くと一週間前、3人で遊んでいた時
武田さんが海で溺れてしまい助けに行った人も含め
2人とも亡くなってしまったらしい

「だからさっき海で亡くなった人がいるって言われて、ニュースでもやってたし、やっぱみんな知ってんだなーて思って‥」

「え、高橋さんは‥?」

「‥え?名前出てないはずなんだけど‥、なんで知ってんの?」

高崎さんに海で遊んでいた時のことから全て話した

話し終えた瞬間、部屋の電気がバチっという音と共に暗くなった

「ひゃっあぁっ!?やめてよ!」

『お客様にお知らせです。ただいまトラブルにより停電が起きました。大変申し訳ございません。原因を確認いたしますのでそのままでお待ちくださいませ。』

「な、なんだ停電‥、あれ高崎さんの後ろに2人」

「こんなときにほんとやめっ‥!?」

電気がついた後、改めて
飯塚、佐藤、僕、高崎さんと話したが
全員が同じ声をしっかりと聞いていた
2人の女性の声で

「クルシイクルシイクルシイクルシイクルシイクルシイクルシイ」




旅館の名前は「武田旅館」
亡くなったのは僕たちを案内してくれた男性の娘さん
高崎さんはお線香をあげた後、1人で海に行き
僕たちと知り合った

「やっぱり私、2人に恨まれてんだ‥ごめんね、ごめんね、私泳げなくて、ごめんね‥」

旅館の別室には仏壇があり僕たちも手を合わせた
高崎さんは泳ぐことができずただ立ち尽くしてしまったらしい
武田さんを助けに行った高橋さんと2人、溺れているところを。

でも、決して恨んでいるわけではないと思う
高崎さんが泳げないからこそ高橋さんは助けに向かった

就職してからも高崎さんと僕たちは
連絡を取り合ったりしている
高崎さんはインストラクターとして
子供達に泳ぎを教えている
あれから泳ぎを一生懸命練習したらしい
繰り返すことがないように。

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有野優樹(ありのひろき)

ここにはコラムとショートストーリーを投稿。マガジンに考えとストーリーと分けております。是非。【連絡先】arino.hiroki@gmail.comブログhttps://lineblog.me/hiroki0731/

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