人前で話をし続ける1週間

この一週間は、「空をゆく巨人」関係のトークイベントや講演が続いている。たくさんの人にあえて楽しい反面で、普段は地味にパソコンに向かう日々なので、なかなかヘトヘトになる。

7日 平第六小学校、草野中学校で全校生徒の前で講演(いわき)
8日 ヤマニ書房(いわき)のトーク&サイン会。
10日 開高健記念会主催のボージョレーの会 (東京)
11日 早稲田大学津田大介さんの授業のゲスト(東京) 
           毎日メディアカフェで鼎談(東京)
14日 readin' writin' 佐久間裕美子さんとの対談 (東京)

小学生から大学生、大人、年配の方までそれぞれぜんぜん違うオーディエンスなので、毎回何をどう話すかを考える。いまのところ、一番受けがいいのは小学生だ。

「ねえ、みんな冒険って何かわかる?」
「山に登る!!」「遠いところにいく」「洞窟ー!洞窟、洞窟!」
「北極では何を食べるのかな?」
「さかなつる!」「しろくまー!とる」

あたりでわたしも爆笑。子供達の目がすごく綺麗で、まるで吸い込まれるよう。最後に質問がある人?と聞くと、「はい!」「はい!」と大勢の子が手をあげてくれた。その質問がまた実にしっかりしている。

「次回に書くテーマはなんですか?」とか「今まで本を書いてきて印象にのこったできごとはなんですか」とか。先生にあとで聞いたら、全く仕込みはなく、本当にリアルな質問だそうだ。わお、君たち、みんな記者になれるよ!

一番難しいのは年配の方が多い会だ。何しろ、静かで反応も薄めなので、もしかして、つまらないのかもしれない。。。ああ、今からでも違う話の方がいいのかな、などと色々不安になってくる。まあ、己を信じて突き進むのみだ。

人前で話すのは難しい。決して得意なことではない反面、そう苦にもならない。たぶんソルボンヌ大学で毎週3時間英語とフランス語で話していたのが、今に活きているような気がする。そうそう、経験の全てがなんらかの役に立つのだ。

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開高健記念会主催のボージョレーの会は、歴代の開高賞受賞者が来ていて、それぞれの話にすごく刺激を受けた。「最後の冒険家」の石川直樹さんはヒマラヤに登っていると話、「誕生日を知らない女の子」の黒川祥子さんは、その後も家族や子供の問題をテーマに取材を続けていると熱く語り、昨年の受賞作「黙殺」の畠山さんはやはり選挙の現場を追い続けているという。受賞当時フィリピン在住だった水谷竹秀さんは、いまはドヤ街の簡易宿泊所に住みこんで取材をしているという。佐々涼子さんは、現在何を書いているのかは「秘密!」だそうだが、受賞作の「エンジェルフライト」は今度、映画になるのだそうだ。

ああ、みんな取材が好きなんだな。誰かに何かを伝えたいんだなあ。ノンフィクション愛に溢れた会で、ノンフィクションってやっぱりいいな!と幸せな気分で帰途についた。

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昨日の横浜美術館の逢坂さんと荻上チキさんとの鼎談では、逢坂さんの言葉が特に心に残った。

「アートは規制や枠組みから自分を自由にしてくれるもの。わたしは20代の頃の自分より、60代の頃のいまのほうがしなやかだと思う。今までみてきたアートや、一緒に過ごして来たアーティストのおかげだと思う」

素晴らしいー、わたしも年をとるごとにしなやかさを増していきたい。そんな生き方をしていきたいと思う。
打ち上げの席では、逢坂さんや横浜美術館スタッフが限られた予算のなかでいかに展覧会を成功させるために、こつこつと地味な努力を続けてきたかを聞いた。おかげで2015年の蔡國強さんの展示「帰去来」は存命のアーティストとしては最高の9万人の来場者数があったそうだ。

ああ、それにしても本当に小さな努力の積み重ねなのだ。館長自らここまでやるんだなあ!と知って深く胸が打たれた。帰りのタクシーでもずっと一緒にアートについて語り続け、本当に素晴らしい時間だった。

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さて、残すところは、金曜日の佐久間裕美子さんとの対談のみだ。18歳以来の友人同士なので、実に気楽な気分だ。とりあえずは、昨日届いたばかりの「My Little New York Times」を読もうっと。



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