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集英社の新刊発表会とその翌朝

昨夜は、集英社主催のメディア向け新刊発表会だった。場所は、神保町の如水会館。これから出る新刊をどーん!どーん!と発表するのだ。

いますぐ結婚式をあげられそうな華やかな会場で、みんなビシッとスーツを着こんでいる。普段はパジャマを着たままパソコンに向かい、ひたすら頭をかきむしっている人間には、全てがキラキラと眩しすぎる。

そもそもなんでこのような会に私が出席しているのか。
ふっふっふ、なんと「空をゆく巨人」を自分の言葉で語るという機会を頂いたのだ。数多くの新刊の中からそういった機会があるのは10冊ほどらしいので、ありがたい限りである。控え室は、なんと今年「ファーストラヴ」で直木賞を受賞した島本理生さんと一緒。控え室のテーブルの上にはカツサンドとコーヒー(ハムサンドではなく、カツサンドですよ)。もはや、まるで自分が「重版出来!」のなかに放り込まれた気分である。 

第1部は、PR映像のあと、自らプレゼンタイム。ただ、与えられたのは2分半というごく短い時間なので、緊張する暇すらなく一瞬で過ぎて行った。
その後は、姜尚中さんなどの新刊発表などが続き、控え室でモニターを見て楽しむ。そして、第2部は編集部ごとにブースができ、メディアの人々が自由に寄れるという展示会方式がつづく。

第2部の会場に入ると、わおー!すごーい!
なんと「空をゆく巨人」ブースもできていた。大きなポスターが貼られ、モニターには今回の本のために作られたPR動画も流れている。空に浮かぶような不思議な廃船に「空をゆく巨人」の文字が浮かび上がる。テーブルの上にはどーんと積まれたパイロット版の山(宣伝用の本で、基本的には書店さんやメディア関係者だけに配布されるもの)。

次々と記者の方たちがやってきて、質問をうけたり、名刺交換をしたり。名刺はたくさん持ってきたけれど、けっこうな勢いでなくなっていく。とはいえ、全てが初体験なのでこれでうまくいっているのかどうかはよくわからない。
とにかく必死に何かを話しているうちに、私は途中から出がらしのお茶状態になってしまい、なぜかテーブルの上の瓶ビールばかりが目に入ってくる始末。それでも、なんとか終了五分前まではビールも飲まずによく頑張った。家にもどると同時に娘と一緒に10時に就寝した。

それにしても、こんな風に色々とよくしていただくと、もしかしたら自分はすごい作家なのではないか、この本はすごくヒットするのではないかという恐ろしい勘違いをしてしまう。
そのような勘違いは人生に良い影響は何もないわけだが、すぐに図に乗れる人間にとっては自ら勘違いを正すのはなかなか難しい作業だ。はて、どうしたらよいだろうか。

そこで、一夜空けた本日、家の近所にあるT書店に速やかに向かうことにした。そこは、商店街の一角にある小さな書店なので、店頭にあるのはベストセラーや雑誌ばかりである。ここで私の本を見かけたことは一度もない。そして、書店の隅々までよーく確認したが、期待通りに今日も私の本は一冊もなかった。

ああ、ありがとう、T書店。おかげで今日も私は勘違いすることなく地味にマイペースに生きていけそうです!

でも、いつかこのT書店で自分の本を見かけたならば、その日こそは祝杯をあげよう。そうしよう! と決意しながら今日も自転車を漕いだ。



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