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山小屋的イノベーションのススメ

今日は朝からギャラリー山小屋にて雑誌『Forbes JAPAN』の取材を受けた。『Forbes JAPAN』と極小ギャラリー。奇妙な組み合わせだ。
しかも、「イノベーション女子」というページだそうだ。

イノベーション、イノベーションってことはリノベーション、スローモーションじゃないよな、別に「イノベーション=技術革新」らしきことは何もしていないのだけど……、と思ったけれど「人生をイノベートしてる」ということで良いのだそうだ。

話は前後するするが、「山小屋」とは、私と妹と母の3人で、6年ほど前から運営している小さなギャラリーである。そのミニミニっぷりといったら群を抜いていて、ギャラリーとしては日本全国でも五本の指に入るだろう(たぶん)。なにしろ堂々の6平米!トイレも水場もない。あるのは、ただ恵比寿駅前の忙しい通りに面したガラス張りの小さなスペースである。

しかし、この空間はなぜだか多くのクリエーターに愛されてきた。たぶん小さいこと、そこにこそ意味があるのだ。

まずは私が思い出せる伝説的な展示をあげてみよう(順不同)。

■ エツコ・コバヤシ(エツツ)の「今日からこの小屋に住みます。絵を描きます。展。」(2016年) エツツとパートナーのブルーノが一緒にこの空間に住んで絵を描くという展示。ふたりは、本当にここに布団を持ち込み、夜は「おやすみなさい」と眠りについた。ふたりいわく「居心地よかった」。いま思い出しても愉快で、あれをきかっけにエツツは3年連続でここで展示をしている。

■ 「香りの温室展」。約20万部のベストセラーを持つアロマセラピストの和田文緒さんが、「香り」という目に見えないものを展示した。すごい人気企画となり、恵比寿ガーデンプレイスでのスピンアウト展示に発展。有緒の文章と文緒さんの香りのブレンドのコラボレーション作品も生まれたなあ。5つのブレンド、どこかで復活できないかな。あ、そうか、山小屋でまたやればいいのか。

■ 「Suri COLLECTION ヨシダナギ 写真展」(2015年)いまやクレイジージャーニーやPENで大活躍のヨシダナギさんの初めての個展をやったなんてアンビリーバボー。スリ族の写真がくると山小屋がアフリカになった。小さな入り口の前にずらーーーーーーと大行列ができて、ここはルーブル美術館かと思ったわ。

■「旅のなかほど、山小屋で。」(2013年)私のバウルの旅のパートナー、中川彰さんを偲んだ展示。様々な旅先での写真と言葉で構成。一角では、急逝した中川さんのが大切にしていた並べた「遺品バザール」も開催。誰かの大切なものを誰かに引きつぐ小さなバザールは、いま思い出してもとても素敵な試みだった。ああ、彼に会いたいものだ。

■ 「Pantieology - パンティに宿る哲学 -」山小屋がパンティだらけになった一週間! パリ在住の秋山あいちゃんは、すべてのパンティーには哲学が宿るという信念に突き動かされ、女性(または女性の下着を着用している人たち)の所有するパンティーを調査・取材・ドローイング。「学問的アート」と新たな分野を打ち立て、入るのを恥ずかしがる男性を「アートですよ」「学問ですよ」と説得して呼び込んだのであった。

ああ、他のも「バー・シャポー」(山小屋が砂浜に)や「七夕写真館」(涙なしに語れない素晴らしい手紙と写真の数々!)や「タラブックス」(板橋美術館との同時企画ですごい混雑!)、「比佐食堂」と、もういっぱい思い出がありすぎて全ては書ききれない。

どうして、私たちは「山小屋」を運営するのだろうか? 
それは、たぶん自分たちの中にある泉を枯らしたくないから。素晴らしいクリエイションやクリエイターの手仕事に日々触れることで、自分の中の泉からこんこんと水が湧いてきて、何かを生み出す力になる。
そして、小さい場だからこそ、誰もがやらないハチャメチャなことにチャレンジできる。失敗してもノープロブレム。ただ、みんなで一緒に過ごす楽しい時間が残るだけだ。
だから、実はここには失敗も成功もない。
それって案外奇跡的なことなんじゃない?


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