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重版出来! 「パリでメシを食う。」は誰が読んでいるのか?

「パリでメシを食う。」(幻冬舎)が重版し、7刷りになったとのニュースが飛び込んで来た。先日の新刊発表会のときは、脳内で「重版出来!」ごっこをしていたが、これは現実である。かなり嬉しい。これで、ついに3万部を超えたのだ。

出版から8年かかって31000部。これを多いと見るか少ないと見るかは、見る人次第だけれど、この本が売れない時代に、やっぱり相当な数ではないかと私は感じてしまう。

なにしろ、この本は「絶対に売れない」と数多くの出版社から太鼓判を押されていものなのだ。「普通の人の普通の人生を、しかも無名の著者が書いたいた本なんて、売れるわけない」。いやまさしく正論、そうでしょうとも。しかし、捨てる神あれば、拾う神あり。幻冬舎の女性編集者・Oさんは、「試してみたいです」と言い、8年前の夏に出版。めでたく最初の本となった。

しかしながら、この本は「文庫書き下ろし」という形態なので、誰からも注目されることなくひっそりと出版された。書評とか著者インタビューはほぼ皆無。一度だけパリで配られているフリーペーパーに取材をうけたけれど、それが唯一。そして、私自身もフェイスブックに書き込む以外の宣伝はしなかった。当時は本が出るだけで満足だったので、ひたすら色々な本屋さんに巡っては、「ああ、ここにも本があるぞ!」と見守ったり、写真を撮ったりするだけだった。(上の写真は出版直後にパリのエツツのアトリエで)

それが、気がつけば3万人近い人が本を買ってくれてるなんて、もう奇跡じゃないですか? 
中学時代からの友人のKは、「すげー! 本持っている人だけで日本武道館と横浜アリーナを満席にできるぞ!」という友人泣かせなコメントをくれた。うん、そう言われると確かに「すげー!」。

3万人という数はどういう数なのか。さらに悦に入りたくなり、3万人で検索するとイタリアの横にあるサンマリノ共和国の人口とほぼ同数なことが発覚。おお、「すげー!」。

それにしても、みなさん、どうやってこの本と出会っているのでしょうか?
今や、私自身はこの本を書店で見つけることはほとんどできない。目撃情報も入ってこない。そして、新たな媒体に掲載されることもない。もちろんたまに書店のフェアに入れてもらったりとかはあるのだけれど、せいぜい1年に1度がマックス。だから、みんなが、どうやってこのイリオモテヤマネコみたいな本を探し当てているのか、もはや私にとってはミステリーに近いのだ。
                                 ***

少し哀愁あるカバーイラストを描いてくれたのは、大学時代からの友人のツチヤヨースケ。とても好きな絵だ。パリの小さな窓辺でカフェオレを飲んでいる誰かの部屋を、美しいラインで捉えている。

パリの窓辺でカフェオレを飲む。
普通の人の普通の人生。何も特別なことがない。
もしかしたら、みんなが「だめだ」といったそれこそが、よかったのかもしれないと思ったりもする。

いや、わからない。それも、今思えばの後付けだ。どんな本がどんな風に売れるかなんて結局は誰もわからない。

だから、今日はこの本を買ってくれた大勢の方に。

ありがとうございました。

おかげさまで、今日も元気で生きてます。

(写真は発売された日にとったもの)


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