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[文字起こし]SHOWROOM前田さん×コルク佐渡島さんのラジオ対談(前半)


【トークも選曲も神だった深夜25:30】


こんにちは。

今日の朝ご飯もうどんでした。うどん県出身の西川恭平です。


昨日、SHOWROOM前田さんのTwitterで流れていた「SHOWROOM主義」というラジオ番組に関するツイートを見て初めて聞いてみたのですが、べらぼうに面白かったので、ほかの方にも知ってほしいなと思い、書き起こししてみました。

「SHOWROOM主義」とは、前田さんが毎週土曜日の深夜25:30~26:00にやられているラジオ番組で、毎回ゲストを呼んで、軽快なトークを繰り広げていくトークショーです。「radiko」っていうアプリダウンロードして、「SHOWROOM主義」で調べたら、聞けます。


今回のゲストは、株式会社コルクの代表 佐渡島庸平さん。『宇宙兄弟』『インベスターZ』などのヒット作を数多く手がけられてきた編集者さんです。

そんな佐渡島さんとのトークセッションが本当に面白かった!!

夜も更けた25:30~のリアルタイムだったので、目がショボショボになりながら聞き始めたのですが、トークが進むにつれ、どんどんテンション上がって逆に眠れなくなりました。っていうくらい面白いです。

来週に続くようなので、まだかなり触りの部分だと思うのですが、佐渡島さんが取り組まれている「編集者の新しい価値の創造」、「どうやってストーリーを創るのか」、「リアリティのある具体と紋切り型の具体の違い」など、エンタメ業界に携わる身としては、かなり勉強になる話がいっぱい聞けました。(あと、新人作家の奥さんの「奇行」の話、などなど。これは、確かに驚きハンパない。。。)


お時間のある方は、この書き起こしではなく、是非ラジオを聞いてほしい。なぜなら、お二人の耳に優しいトークが生で聞けるのと、ラジオの挿入曲の一発目が、

SUM41の「We're All To Blame」だったから!!


深夜の25:30~の1発目にこれをぶち込んでくる前田さん、ヤバい。いやー、正直これで眠気の80%は吹っ飛んだといっても過言ではない。

SUM41はほかにも名曲がたくさんあります。

「Still Waiting」とか、「The Hell Song」とか、「Over My Head」とか、「No Reason」とかとか。

SUM41ももちろん最高のバンドなんだが、僕はMy Chemical Romanceを是非お勧めたい。史上最高のアルバム『The Black Parade』のオープニング曲「The End.」から繋がる「Dead!」への流れは、いつ聞いても破壊的。この2曲は2つで1つ。そのほかにも、「Welcome To The Black Parade」とか、「Mama」とか、「Helena」とか、「I'm Not Okay(I Promise)」とか、もうマジ名曲だらけなので、ぜひ1度聞いてみてください。

あとはOff Springとか、Nirvanaとか、日本だとPay Money To My Painとか、、、

何が言いたかったかというと、前田さんの選曲マジ最高。




はい、書き起こしは、ラジオの4分30秒あたりからです。

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(以下、敬称略)

前田:SHOWROOM代表の前田裕二がお届けしている、「SHOWROOM主義」。

今週のゲストは、株式会社コルク代表の佐渡島庸平さんです。こんばんは。

佐渡島:こんばんは。

前田:ということで、あの、すごいなんか不思議なご縁ですごく仲良くしてくださっている佐渡島さんなんですが、あの、本の話ってここでしちゃってもいいのかな?

佐渡島:うん。

前田:『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE』。これ、もう、めっちゃコミュニティの教科書だと思って、もうボク超好きなんだけど。

佐渡島:ありがとうございます。

前田:なんか、コミュニティについて語らせたら、ホントに右に出る者がいないんじゃないかぐらいの佐渡島さん。あの、だから今回、佐渡島さんが考えているコミュニティ論と、あの、例えばいま、自己発信力を増やしていきたいけど、自分の周りにコミュニティを作っていきたい、ファンを増やしたい思っているけど、なかなかそれが叶わない人たちに対して、なんかヒントになるような会話ができたらいいなって思って、今日はちょっと来てます。

佐渡島:なるほど、はい。よろしくお願いします。

前田:なので、本も読んでない前提で、まったくゼロベースで、これ聞いている人が、TwitterとかInstagramとかFacebookやっているときに、、、まぁ、Facebookはフォロワーって考え方はあんまりないかもしれないけど、InstagramとかTwitterやってるときに、もっと多くの人に見てもらいたいなとか、自分の味方を増やしたいという人たちに対して、なにかこう、ヒントになるような話ができたらいいかなと思います。

佐渡島:はい。

前田:で、大前提として、まずコルクっていう佐渡島さんが立ち上げた会社について聞いていきたいんだけど、これは、かつて無かった作家のエージェンシーとして設立と。

佐渡島:うん。

前田:確かに、作家のエージェントというか、作家をマネジメントする会社ってあまり無かったんだね、そもそも。在りそうで。

佐渡島:あの、世界的にはね、それが在るのが当たり前で。

前田:日本には無い。

佐渡島:日本には無くて、だからタレントエージェンシーって考えると、アミューズだったりとか、ホリプロと変わんないんだけど、出版社の力が日本はすごく強くて、だから、出版社の編集者に可愛がってもらうのが、一番作家にとっては大事なことだったっていう状態だったから。独立的に何か自分で決める必要があまり無かったのが、結局、出版社以外の作家の活躍先っていうのが出ようとしている、という時代が来ていて、そういうエージェントみたいなのが必要になってくるだろうなと思って、創ろうと思ったんだよね。

前田:なるほど。2つあって、質問が。1つは、なんかそもそもそれって、出版社からすると、あまり耳障りの良くない話というか、出版社の価値をちょっと否定するような流れだと思うんだけど、出版社の人たちから反発みたいなものはなかったのか、というのが1個と、2個目は全然あれなんだけど、作家のエージェンシーとして自分たちの価値を出せるっていう自信が本当にあったのかというか、その時に出せる価値ってなんだっていう仮説で立ち上げたのか、っていうのがあって。

佐渡島:なるほど。まず、変化っていうものには常に反発があるから。

前田:じゃあ結構あったんだ。

佐渡島:うん、あった。すごくあったんだけれども、でもそれって、なんだろな、例えばテレビ局がタレントの事務所がなかったらすごく困っちゃうでしょ?だから、本来的には役割が違うはずなの。だから、出版社がその本を流通させるっていう仕事と、作品を創るっていう仕事と、作家をマネジメントするっていう仕事を全部兼ねてたんだけど、作家をマネジメントするっていうところだけ外出ししたほうがいいと。さらに、僕らは出版社からお金をもらわないで、作家さんからもらうから、実は出版社の懐っていう話で言うと、何一つ変わらないビジネスモデルだから、それに対して反発が生まれる必要っていうのはあまり無かったんだけど、コンロトールができなくなるとか、今までと習慣が変わるっていうことで、やっぱり反発を持った人もいるけれども、でも世界的にみると、そこは協力し合っているから。だから、アメリカなんかだと、もしも作家になりたい、、、だから今回、例えば前田くんが『メモの魔力』を出そうと思ったら、出版社であって担当編集の箕輪さんに喋るじゃん?でも、アメリカだったらどうなるかというと、前田さんが箕輪さんに連絡すると、箕輪さんが、「あの、すいません。それちょっと1回エージェント通してもらっていいですか?」っていう風に答えるわけ。

前田:編集者がエージェントを通す、と。

佐渡島:その、出版社は全部、アメリカの場合はエージェントとしか仕事をしないの。

前田:そういうことか。

佐渡島:うん。いっぱい色んな作者が来ると、選別するのがめんどくさいから。エージェントに登録されている人で、エージェントから売り込んでもらってからしかビジネスが始まらないっていうのが、アメリカとかの出版業界の仕組みなんだよね。だから、そういう風に考えたら、自然な流れかな、と思っていて。で、どういう仮説なのかというと、例えばタレントって、テレビの時代って、テレビに出るのが一番重要な有名になる方法だったじゃん?そうすると、プロデューサーとかにどんどん挨拶していくっていうのだったりが事務所の人の一番重要な仕事だったよね。それと同じで、作家の人っていうのは雑誌に連載をして単行本を出す、っていう以外に世の中に出る方法がないんだよね。だったんだけれども、雑誌に掲載して単行本を出すってなると、経済条件がほとんどどの出版社でも一緒なんだよね。それに対してアプリだと、全部ビジネスモデルが違うわけ。1話ごとに売ってたり、1巻ごとに売ってたり、無料で広告で読ませたりとか、そうやって全部ビジネスモデルが違うところにどういう風に作品を許諾していくのか、っていうのって、付き合うときに持たないといけない知識とか交渉が全然違うじゃん?で、出版社と付き合っていると、1年に1作しか本出さなかったら、出版社との交渉って1年に1回しかないけど、過去のコンテンツを新しいアプリが出したい!とか言っていると、作家のところに10個も20個もどんどん交渉が来るんだよね。だから結局、出口が今まで安定的で1個大きかったのが、小さい複数に変わっていくっていうのは、もう不可避な流れだったから。ってなると絶対に、その優先順位を決めてどのようなブランディングをしていくのか、作家自体を、ということを、長期的な目線で考える人が絶対に必要となる、と。

前田:なるほどー、面白い。そっか、自分では自分を客観視して、さっきの出先、出口とかメディアの選別とか優先順位付けや自分のブランディングっていうことは中々出来ないから、それをやってあげると。

佐渡島:作家は絶対に、虫の目にならないといけないから、作品を書くときは。でも、虫の目と鳥の目を短時間で行き来するのはすごい難しいから、やろうと思えばやれる能力があるとしても、そこは役割として、違う人間に分けたほうがチームとして機能するだろうな、と思って。

前田:それは確かにそうだな。

佐渡島:これだけの勢いで『メモの魔力』が売れてるのって、幻冬舎と書店の日ごろの関係性がないと絶対に無理なんだよね。

前田:絶対そうだね。

佐渡島:で、そこが実は出版社のすごい価値で。それで、、、それがあるから作家が集まってくるんだよね。だから、出版社の価値っていうのはそこで、それで、編集者っていうのは、ある種それに無償でついてくるサービスなんだよね。だから、よくさ、代理店がさ、広告のCM枠を買ったらクリエイティブが無料でついてくるじゃん?っていうので、編集者とクリエイティブのところって、出版社とか代理店に関する本来の価値に対して無償でついてくるサービスだったの。でも、代理店のクエリエイターの人たちも独立してさ、制作だけでお金をとりたい、って思ったりするじゃん?それと同じで、編集力ってものだけでお金を取りたい、っていうか、そこに対してしっかりと、、、お金を取りたいっていうとちょっと語弊があるかもしれなくて、そこの価値が顕在化するようにしていきたい、っていうのが、僕がやりたいと思ったことなんだよね。

前田:面白い。めっちゃ面白い。

佐渡島:なんだけれども、それをやりだして6年間くらい経って、それで人の気持ちってやっぱり変わるし、すごくありがたい気持ちっていうのとかも忘れるし、だから、会社としてメンバーを増やしていって安定的になるためには、もう少し顕在化するものっていうのを価値提供していかないと、会社としては大きくならないなって思うわけ。だから、SHOWROOMっていうのも、明確なプラットフォームがあるじゃん?で、SHOWROOMがあるとないとで、全然収入が違うっていうのがあるのって、明確な価値じゃない?で、その今僕がやっている編集っていう作業自体は抽象的だから、それを明確な価値に落とすビジネスモデルっていうのは何なんだろう、っていうのを今すごく考えているんだよね。

前田:なるほど。一作家の視点を足すと、そこの価値もちゃんと紐づけてほしいよ、って思ったときに、それはコルクとしては、ちゃんと作家に対して、さっきの出版社の顕在化しているわかりやすい価値である「書店との関係性」、「流通の強み」みたいなところを、コルクとしても繋げてあげることができる?

佐渡島:そうそう。著者の人が本を出したいって言ったら、僕らがその本に対する最適な出版社を選んで、とかっていうことはもちろんやるんだけれど、そこも、例えば、その著者の人が安定的に本を出すようになると、1回初めに繋いだ僕らの価値ってなくなるじゃん?だから、継続的に価値を出さないといけない、っていう風になると。それで、その鳥の目、虫の目になってくるっていうのも、ある種ブランディングも確立できちゃうと。僕、いま新人にすごく教えてて、その1年間くらいで、1,000人くらいしかフォロワーがいなかったのが一気に50,000人くらいまでいったりとかっていう風になって、この調子でいくと、3年くらいたつと、20万、30万くらいフォロワーいますってなるけど、20万、30万いて自分が発信すると皆に一瞬で伝わるっていう風になると、どういう風にそこまで増やせばいいのかってアドバイスした僕のことって、全部ある種無くなるし忘れると思うんだよね。その無くなったり忘れたりするのってひどいよ、っていう風に言い出すと、なんて言うんだろな、ドロドロした関係になっちゃうから、そこはしっかりビジネスのほうがいいだろうなと思って。全部忘れ去られてOKです、と。人って忘れるものです、っていう前提でビジネスモデルを構築しないといけない、っていうのが今思っていることなんだよね。

前田:なるほどなー。なんか、芸能界の独立の問題と結構通ずるっていうか、あれも、時間とお金を投資してきたのに、そこでその時間とお金の投資によって、今の君のステータスや認知度があるのに、私の能力なんだ、っていう風に、ある種すげ替えてしまって辞めるってどうなのかね、っていう議論があるじゃない。かなり近いよね。

佐渡島:うん。でも、過去のことはお互い言いっこなしのほうが、健全な現在が築けるだろうなぁ、っていう風に思っていて。だから、相手がね、そこに対して何一つ忘れてたとしても誠実に付き合えるっていう仕組みを作ったうえで、そういう風な人間関係がある状態をつくりたい、っていうのが今思っていること。

前田:なるほど。ちょっと後半、そのフォロワーが数100人、数1,000人しかいない人が、何万人、何十万人になっていく過程で、例えば、どんなこと言うのかっていうのを、少し深掘っていきたいと思います。

(間奏曲:Every Tear Drop Is A Waterfall/Coldplay)

前田:ちょっと前半で、コルクの佐渡島さんがやられていることの価値、みたいな話があって、エージェントとして作家に対してアドバイスをしてファンを増やしていく、コミュニティ形成のお手伝いをするっていうお話があったんだけれども、具体的にどんなアドバイスをするのかなって思って。例えば、「今100人しかフォロワーいません」、と。作家として、すごい才能があるけれど、その人は創る才能しかなくて、届ける才能は今のところないです、っていう状態の人に対して、まずどういうインプットをしていくの?

佐渡島:なるほど。ただ、実は、コンテンツって自分から届く力があるから。漫画とかも勝手に読まれていくっていうことがあるから。

前田:なるほど。じゃあ、その創る力と届ける力はそもそも不可分であると。

佐渡島:かなり不可分なんだけれども、ある程度のところまで創る力がいったら、届ける力ももちろん必要なんだけれども、ほとんどの新人は、まず創る力が弱いんだよね。

前田:あー、超本質的。

佐渡島:で、実は、そのほとんどのやっているアドバイスは、『メモの魔力』に書いてあることと近くて、「自己分析が大切」っていうことを言っているけれども、結局、面白い物語みたいなものがフワフワと世の中に漂っていて、それをキャッチするってことが物語を創るってことではなくて、その人が何を語ると面白いか、なんだよね。だから、自分が最もよく知っていることを話すことが大切。で、例えば昨日ね、新人と打ち合わせをしていてアドバイスをしていた時に、その新人がいろいろなキャラクターを描くんだけど、全部リアリティがないわけ。心配性とか、いろんなね、なんかこう考えてやるんだけど。どうもなかなかリアリティが出てこないと。で、「ちょっと待て」、と。「じゃあ1回、作品について考えるのは辞めよう」、と。「奥さんのことで一番気になっている話教えて」、っていうわけ。そうすると、「いやー、なんか妻が子供のころに、友達がみんなお泊りに来た後、みんなが寝ている顔見て、この人って寝てる時こんな顔するんだぁ、って言って全員の顔をじっくり見た。」、っていう話をしてて。

前田:おもしろー!!

佐渡島:「それが忘れられないんですよー」、っていうわけ。「いやいや、それもう主人公のエピソードで入れれるじゃん!」、と。「それを入れれると、キャラが立つんだよー」、とかっていう風にアドバイスしていくの。

前田:鳥肌立った!めっちゃ分かる。めっちゃ分かった。そういうことだ。それめっちゃ価値あるな。

佐渡島:だから、そのキャラクターに対して具体を入れてってあげないといけないんだけど、その抽象と具体のところで、リアリティを感じる具体と、なんか紋切り型と感じる具体があって、そのリアリティを感じる具体のところまで降りていけるように、自分の記憶だったりだとか、周りの人のエピソードとかを集めたりする、っていうやり方を教えていく、っていうのが一番初めに新人にすることなのね。

前田:超面白い。やばい。これ、ホントにいろんな人に聞いてほしいな。めっちゃ面白い。なんか作品創りたくなってきたな、それ聞くと。面白い。

佐渡島:だからね、こんだけ具体と抽象をいろいろやっていると、その中で、どっちかっていうとなんだろな、ビジネスに役立つことを考えてたんだろうな、と思うのね、前田君は。

前田:あー、そう思う。

佐渡島:そうじゃなくて、なんか、聞いた瞬間に人が、それってなんとなく魅力的、って言って説明できない具体、っていうのを考えるっていう行為をやっていくと物語を創るっていう行為になっていくんだよね。

前田:面白い!この学びを自分の企画に当て込めば自分の企画が上手くいくとか、事業アイデアがより精緻化するとかではなくて、なんか魅力的なんだよなってことを抽出して持っておくことで、そっか、クリエイティビティというか、作品を自分が創れるようになる、と。面白いな。

佐渡島:例えば、夢について語るっていうことがあったとするじゃん?それ自体は抽象的な、、、行為としては具体なんだけど、夢について語るっていうと、色んな夢の語り方があるから、実はそれ自体は具体的行為ではなくて抽象的行為なんだよね。で、その行為自体が生き生きとしているようにするためには、すごい具体が必要で、それで様々な具体の中で、みんなが「それって超魅力的だな」って思う具体と、思わない具体っていうのがあって、、、

前田:なんなんだろう。その違いを科学するっていうのはないんだ?

佐渡島:そこは感覚。

前田:へぇー。そこを科学したいっていうか、そこの理屈をみつけたいっと思っちゃうんだよなー。無いんだ。

佐渡島:いや、それはね、僕もいつも思ってるんだけど、うーん、1次情報を元にされてる具体っていうのは、よく聞いた話でも何らかの輝きがあるんだよね。

前田:なるほど。最近よく言っているのは、「AなのにB」みたいな、落差があることだ、っていう話をよくしてて。秋元康さんがめっちゃ面白い話をしてて、あるグループの曲をどんな風にプロデュースするかっていうときに、基本的に見た目がかっこいいときは、どちらかというと曲は下世話に寄せる、というか、歌わせる中身についてはちょっとダサくなくてはいけないんだ、っていうのって、すごい分かって、そのバランスを意識してプロデュースしてるっていうのを耳にしたときに、結構衝撃を、、、

佐渡島:あの、いいプロデュースっていうか、いい作品って、相手に感情を引き起こすんだと思うんだよね。それで、共感って言ったときに、それが悲しみの気持ちだったりとか喜びの気持ちだったりとか、様々な感情が起こりえるじゃない?それで、その共感の前には、これは僕が見つけたっていうよりも、高崎卓馬さんっていうCMのクリエイターが表現の技術の中で言語化してたのね。なんだけど、「感情の前にはすべて必ず驚きがある」、と。だから、ちょっとした感情くらいだったらいきなり、「あー、なんかちょっとそれ悲しいなぁ」、とか、「それうれしいなぁ」、とかあるんだけど、おっきい感情の前には必ず絶対驚きがあるんだよね。つまり、それは落差っていうことでもあるんだけれども。

前田:なるほどー。

佐渡島:だから、感情を揺さぶるためには驚きが必要、ってことなんだよね。

前田:なるほどー。じゃあさっきの寝ている顔の話は、もうちょっと脚色すれば、人の感情をもっと動かすかもしれない、っていうか。そうか、あれは単なる特徴でしかない、特徴というか、その人の性質の1個でしかないけど、あれをストーリーにこう落とし込んだら、わかんないけど、なんでそういう生態をもってるか、という、、、実は、過去に、、、とかっていうことが、人の驚きにつながれば、それが1つのストーリーとして成立する。

佐渡島:そう。

前田:なるほどな―。めっちゃオモシロ!そういうことか。でも、驚きっていうのは、元々持っていた想定との乖離っていうことだから、そこの想定を理解して、どれくらい乖離させるかっていうことを意識して飛ばしていく、っていうことなんだろな。なるほどー。

佐渡島:うん。で、ほとんどの人の創るものっていうのは、いきなり驚きを与えようとする。なんだけれども、いきなり驚きを与えるっていうことは、想定していることが自分と一緒である、っていう前提があるんだよね。でも、想定していることがずれてたりするから、想定をそろえてあげるというか、、、

前田:超面白い!なるほどー。

佐渡島:その、こういう風な感じだよー、っていうことを伝えてあげないといけないわけ。だから、その物語を読んでいる時に、全物語が作者にとってなんでも有りなはずなのに、つまらないときに、「なんか何でもありすぎて、、、」、っていうつまらない理由をいう人がいるじゃん?でも、「それ面白い物語も何でもありだよ、作者の。」、っていうので、それは実は批判になってなくて。

前田:確かに。それよく聞く。

佐渡島:それは、前半っていうか、物語が始まるときの前提条件の伝え方が失敗しちゃってて、違う想定を生んじゃってるから、だから作者としては驚かせようとしたことが驚きになってなかったりとか。で、ドラゴンボールの何がすごいって、そのいろんな車の形とか、そういうのが近未来だったりするわけだけど、ちょっとした車とかで、どのくらいの技術力の文明なのかっていうことがめっちゃ想像しやすいわけ。だから、ドラゴンボールとかって、バイクが出てきたりとか、なんつーの、ホイホイカプセルが出てきたりとか、ほんのちょっとだけで全ての前提条件が伝わっちゃうわけ。

前田:テクノロジーがどんだけ進んでいるかの前提が伝わっちゃう。

佐渡島:そう。キン斗雲があり、とか。並存してもOK、とか。「キン斗雲のほうが飛行機より早いんだっけ、、、?」、とか、気になんないじゃん?「追いついちゃっていいのかな、、、?」、とか、「空気どうなってんのかな、、、?」、とか思わなくていいのは、思わせないような表現方法の仕込みがすんでんだよね。

前田:なるほど。超面白い!

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(次週に続く)

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