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横浜赤レンガ倉庫での加藤訓子さんと中村恩恵さんのクセナキス公演

昨日2月10日は、横浜の赤レンガ倉庫1号館3Fホールで行われた、加藤訓子さん(パーカッション)と中村恩恵さん(ダンス・コリオグラフィー)の公演「PSAPPHA- A MUSIC THEATER」の公演に出かけてきました。

クセナキスのマルチ・パーカッション・ソロのための作品「プサッファ」を軸としたプログラムで、加藤さんの打楽器と中村さんのダンスに加え、映像とマルチスピーカーを使用したイマーシヴなサウンドインスタレーションもあって、期待斜め上の特別な体験ができました。

赤レンガ倉庫のホールは初めて行きましたが、イベントで大賑わいの外の空間から一気に隔絶されるような静謐で洗練された空間。素敵ですね。階段教室的になっている空間で、フランスはナントのLFJでよく訪れた旧ビスケット工場内のステージを思い出しました(あれもそういえば赤煉瓦倉庫だったような!)。

ホールに通じる廊下の窓からの眺め


冒頭の「ルボンa.b.」は加藤さんのソロ。続く「響・花・間」は1970年の大阪万博の委嘱作品。武満徹や高橋悠治が関わったかの「鉄鋼館」は、自分が生まれる前の「伝説に聴く館」のような、憧れだけが募る存在だから、赤煉瓦内の素敵な空間でこの作品を聴ける日が来るとは、ありがたい。サウンド・インスタレーションを挟み、「プサッファ」へ。「響・花・間」からは続けられたので、正直切れ目が私にはハッキリとはわからなかったのだけど、マルチスピーカーのインスタレーションが厚みのあるホワイトノイズに収斂されていく感じとても気持ちよかった。

加藤さんと中村さんのパフォーマンスを目の前にして感じたのは、やはり身体表現の芸術としての美しさ。打音で音楽を構築していく加藤さんの動きは洗練の極み。それが視覚芸術として生み出される中村さんのソリッドでキレのあるダンスと、ごく自然に合って、それぞれに突き詰めた結果が同じ到達点となりました、というような、ともに生み出す独特の美しさは唯一無二だと思った。

クセナキスの音楽はどこまでも無国籍風で透明感があり、杭を打つように強打される大きな太鼓の音は少し怖かったけれど、「プサッファ」の饒舌なリズムなどがとても面白かった。
中村さんのダンスは終始上品だった。抽象的な動きにもかかわらず、少し早口でエレガントな「山の手言葉」が全身から聞こえてくるみたいだった。コミカルな動きでさえも、ソリッドでかっこいい。あらゆる角度から表情を滲ませる能面のように、中村さんのお顔がとても美しかった。

お二人が作る空間はクールで知的なのだけれど、それと同時に色気があった。どんなに素早い動きでも、抑制された所作の一つ一つに宿る、大人の女性の色気。
すばらしい体験をした。終演後はすっかり暗くなり、倉庫周辺の昼の賑わいはすっかり落ち着いていました。

横浜のきらびやかなこと。


撮影機材:Leica M10-P、Summicron 50mm 2nd


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