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20230902 小田原

金曜日、顧客と楽しく飲んだ帰り道、大船で乗り換えるつもりが熟睡し、目覚めた時に電車は国府津に止まっていた。深夜の国府津にはR134号線と海しかない。そのまま終着駅の小田原まで行き久しぶりに万葉の湯に泊まった。

土曜の朝はしっかり目覚めるまで寝て、起きた時には風呂は清掃に入っており、トイレで腸が悲鳴を上げて体の自由を奪うところまで確認し、万葉の湯を後にした。
妻から短く大丈夫かとLINEが来ており、顛末を報告する。今日は何もないというのでそのまま小田原界隈を散策することにする。

代えの洋服を無印良品で買い、スマホで探した輸入タバコを扱う店でいつものガラムを仕入れ、やはり探しておいた喫煙のできる喫茶店へ行く。どの町にも、まだ一、二軒はこうした頑固というか、時代に寄り添わない店が残っている。

おしゃれ横丁という、場末感の漂う駅正面の裏道を少し入ったところに目当ての喫茶店を見つける。ブレンドが数種類。焙煎機が回っている。夜は酒でも出していそうな、ギリギリ店の体裁を残したいい感じのくたびれた店内。半白のオヤジさんにノーマルのブレンドをもらう。

腹を下したばかりで食欲があるわけでもないけれど、せっかくなので蕎麦でも食べようと、あまり派手派手しく観光を押し出していない老舗に当たりを付ける。小田原城そば。店から徒歩5分ほどらしい。

道すがらこれもいい具合に枯れた店構えの鰻屋がある。城へ向かう道は、観光地として商業的なノスタルジーの演出、今風の高層ビルを建て始めた駅前の賑わいには乗り遅れたようで好ましい。うなぎを楽しく食べられる自信がなくそのまま蕎麦屋へ。

腹がと言いながら、昼の蕎麦屋では飲まなければならないので、ビールと桜天せいろを頼む。桜えびが取り立てて好きなわけではないのに、普段の街でないことを意識した。鴨せいろもうまそうだったな。普通においしく揚がったかき揚げ、気取らない、気負わされない蕎麦。

せっかくだから日帰りの温泉に行こうと決めていたが、せっかくなので小田原城の天守閣を拝みに少しだけ登った。昔は象がいたんじゃなかったか。小さな猿の檻で茹っている猿を眺める。敷地内は暑さのせいか人もまばらで晩夏の光が白く空っぽだ。

湯本まで箱根登山線で移動する。一駅ごとに小さく意識を無くしながら、少しずつ山を登っていく。久しぶりの箱根湯本駅。一年ぶりか。近くの日帰り施設の迎えのバスに乗ってさらに坂を登る。

到着2時ごろと、変な時間だったためかガラガラのバス。意識を遠くしながら門をくぐった。90分くらい、ほぼサウナと水風呂を行き来しつつ、周りの景色を眺められる露天風呂に浸かったりしているうちに、何も考えられなくなっていく。

風呂上がりにビール、という気持ちにもなれずジンジャーエールを買って喫煙所で最終レースを少し眺める。風呂に浸かっている間は感じなかった暑さが今ごろ戻ってくる。

ジタバタせず下山、駅ビルでトイレがてら有隣堂を覗くが、あまりに寂しい平台、棚。駅ビルは薬局以外、全てやる気がなく見える。どうしてもアイスクリーム的なものが食べたくて最初の喫茶店に戻りアフォガードを頼む。


ジタバタすることをしない気持ちが強く、そのまま東海道線へ。混んだ電車に乗りたくなくグリーン車を奢る。銀だこのたこ焼きを食べながら1日ぶりの東へ。グリーン車は2人掛けがまるまる空いていない混雑ぶり。休日夕方の登りは熱海方面からの観光客が多い。一般車両にしなくて正解だった。

すぐそばの小さな観光地。まる一日かけて呆けてしまった。『サマー/タイム/トラベラー』を読んでいるうちに帰り着いた地元は、なんだか知らない街みたいな顔をしていた。

なお写真は、電車内と湯処のもの以外はLUMIX DCーS5に F.ZUIKO AUTO 50mm f 1.8 で撮影した撮って出し。

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