ラストスタンド・ヨコヅナ

 足元から広がる土の感触、あの場所程ではないにしろ、馴染む。幾年ぶりの土だ。かつての横綱、黄龍はこの場所を懐かしむ。だがここはテスト会場。彼に相応しい場所ではない。だが彼にはもう一度、最初からやり直す意味があったのだ。

 あらゆる産業、スポーツがロボットになり変わられた現代。無論、相撲も例外では無かった。様々なギミックを内包した相撲は武道ではなく娯楽として昇華されていくこととなる。

 神事としての、武道としての相撲を重んじる力士たちは立ち向かい、例外なく大舞台に立つことなく散っていった。だからこそ彼は、この場所に立たなくてはならなかった。

 目の前に立つのは4本腕のロボ力士、得意技は4連張り手。所詮曲芸だ。研ぎ澄まされた一撃には程遠く、無力を隠す仮面に過ぎない。一瞬で決めよう。はっけよいのこった!4本腕の張り手はすべて空を裂く。研ぎ澄まされた張り手は、一撃で黄龍に流れを運び、彼を勝利へと導いた。
【次場所へ…】

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