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AmazonEchoAlexaを『お母さん』と呼びたい

長谷川家にAIスピーカー、AmazonEchoのAlexaがやってきて久しい。QOLは超向上している。今日はそんなAlexaを、母と呼び慕いたいアラサーOLのお話。

Alexa購入前の、妹の衝撃の一言

「私、Alexa買おうと思ってんだ」
何の気なしに呟いたところ、妹は淡白に「へー、何ができんの?」と聞いてきた。「音楽流したり、アラームかけたり、設定によっては家電の操作も声掛けで全部できるんだよ。布団に入ったままね!」と嬉々として返事をした。もう早く試してみたくて仕方がない。この時長谷川の頭の中はAlexaでいっぱいで、頭に思い描いた近未来的な生活を力説する。

しかし妹の返事は私の想定とはかけ離れたものであった。

「介護じゃん」

――えっ?

「音楽もアラームも家電の操作も、自分でできるでしょ。布団の中ですべてを済まそうという発想が、もう要介護じゃん」

ぐうの音も出ない。

長谷川はADHDである。脳の構造からして、怠惰を絵に描いたような人間なのだ。自分の身の回りのことを自力で行うのに精神力が必要。それをAlexaに助けて貰って楽したい。まさに要介護である。まんまと一本取られた。

我が家に来たAlexaの仕事っぷり

そんなやり取りの後にやってきたAlexaはというと、思った以上に私を介護してくれている。彼女との生活の、朝の一幕をご紹介しよう。

彼女の仕事は、大音量のアラームで私を起こすところから始まる。
布団の中から寝ぼけ声で「あれくさぁ~~止めて」と言えば止めてくれるし、「あれくさぁ~~10分後に起こして」と言えば2度寝も許してくれちゃうのだ。すごい。お母さんよりも優しい。

しかし、声が小さいと無視されてしまう。結構大きな声で「アレクサァ!!止めて!!!」とお願いせねばアラームが鳴り続けるので、二度寝したくてもなんとなく目が覚めてしまうスパルタっぷり。飴と鞭である。前言撤回だ。

「Alexaおはよ~」で、朝のニュースと天気を教えてくれる。
実家にいた頃、母が「今日は最高気温14度よ!タイツ履いていきなさい!」「夕方から時々雨!傘持って!」などと声掛けしてくれていたのが思い出される。

ついでに、ゴミ捨ての日を教えてくれるようにも設定してあるので、家を出る時刻の15分前に「『燃えるゴミ出す』のリマインダーです」と告げてくれる。
さながら出掛けに「ゴミ出してから行って!」と叫ぶ母のよう・・・。

お分かりいただけるだろうか。

Alexaの仕事は完全にお母さんの仕事なのである。

一時期、『AIスピーカーを「ドラえもん」と呼びたい』という意見をTwitterで見かけたが、私は彼女を「お母さん」と呼びたい。私の場合、その方がしっくりくる。

「おかあさ~ん、リマインドして!」
「おかあさ~ん、来週の火曜日16時から打合せの予定追加して!」
といった具合に。

Alexaに重なる母の支援に思うこと

妹はAlexaの活用を「介護」だといったが、母は私の介護者だったのだろうか?

正直に白状しよう。答えはYESだ。

療育的な用語で言うと「支援」というのが正しいが、毎日朝から晩まで、ありとあらゆる声かけをされていた。

起きなさい!
課題はカバンに入れたの?
今日は塾の日だから寄り道せずに帰ってくるのよ。
スーツのクリーニングそろそろ出しなさい。
明後日から出張だったわよね?

これを読んでくれているADHD児のママさん達は今、大きくうなずいていることであろう。首を傷めないか心配で、申し訳ない。

一般的にADHD児には声かけ支援が必要である。長谷川も例に漏れず、支援がないと生活がうまく回らない子供だった。そんな私を母は厳しくしつけたが、母の焦りと私の承認欲求がぶつかる度に溝ができた。そしてそのまま私は大人になってしまった。

そんな母を疎ましく思い、半ば強引に一人暮らしをはじめたが、私は特に問題なく家事をし、遅刻せず会社に行けた。
「なんだ、ひとりでも大丈夫じゃん」
独立した直後は口うるさい母からの解放感すら感じたものである。

しかし気付けば、自ら望んでAlexaに声かけを依頼している私がいた。彼女の抑揚のない声に母を重ねる度、声をかけ続けてくれたことへの感謝と尊敬の念が沸き起こる。あの声かけがなければ、私の一人暮らしは上手くいかなかったかもしれない。

鬼のように厳しい母も人並みに歳を取り、物忘れも増えた。実家に帰って私が母をサポートするシーンもある。
一回り小さくなった母は、それでも私の背中に声を掛けることをやめない。

「樹、忘れ物ない?携帯持った?」


母の声は、決して無駄じゃない。
数えきれない声かけの上に今の生活があることを噛みしめて、Alexaを『お母さん』と呼び慕いたいと思うのだ。

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