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精油(エッセンシャルオイル)の成分解説 ~リナロール~

アロマセレクトのシニアマネジャー坂本は化学のエキスパート。彼が過去に書いたサイエンスブログはとても興味深いのでnoteでも紹介したい!ということで人気のある記事を抜粋、再構成して掲載していきます。

本日はアロマセレクトのクロモジ精油に含まれる成分の中で、約半分を占めるリナロールさんのお話です。


リナロールとは

リナロールには、鎮静効果や抗不安効果、抗菌効果などがあり、フレッシュな香りから、化粧品や香水など様々な用途で用いられています。リナロールという名前は慣用名です。化学的なルールに沿った名前は3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール。

化学式C10H18O

CというのはCarbon/炭素
HというのはHydrogen/水素
OというのはOxygen/酸素

でございます。

炭素、水素、酸素というと身近な感じがしてきますよね。で、リナロールをものすごく拡大して拡大して拡大していくと、リナロール1つを作るのに、炭素が10個、水素が18個、酸素が1個ありますよ、ということでC10H18Oと記載します。

リナロールの形を平面で書くとこんな感じですね。

リナロール平面図

この先はさらにわけの分からなくなる方もいらっしゃるかと思いますので結論だけ申し上げておきます。リナロールには正確には2種類あります。

以下は大人の皆さんは趣味程度にお読みいただければと思います。ただし小学生や中学生のお子さんたちはしっかり読んで理系の道に進んでくださいね。

先ほど平面図で書いたリナロールの構造式ですが、立体的にしてみたいと思います。およそこんな感じの形状になります。

リナロール立体図01

緑色・・・炭素
青色・・・水素
赤色・・・酸素

お互いに隣接する炭素同士、あるいは炭素と水素、炭素と酸素、酸素と水素が手を取り合ってリナロールの形を作っています。ところが、リナロールの集合体を拡大してみると、上記だけじゃなくて、もう一つ似たような形状をしたものがあるのです。

それがこちら。

リナロール立体図02


どちらも平面図で書くと同じですが、立体にしてみると違う形になります。(違うように見えますよね?)

右手で手をつなぐか、左手で手をつなぐかによって異なる形状になっちゃう部分があるのです。どの手を使って手をつなごうとも回転してみたり上下ひっくり返してみたりすると重なるような物質も多数ありますが、リナロールの2種類はどのように頑張っても重ならないのです。気が向いたら、割り箸と粘土を使って2つを作ってみてください。絶対に重なりません。

アロマセレクトのクロモジ精油(エッセンシャルオイル)に含まれるリナロールですが、この2つのリナロールが一定の割合で混じり合っています。恐らくクロモジの生えている場所やあるいは季節の違いに、これらの混合比率は異なる可能性はあります。

ところで私は小学校や中学校あるいは高校生になったときも、こういう理科の知識って「何かの役にたつの?」とかなり懐疑的に思っていましたが、役にたつのです。

化学物質は構造が異なると香りも違えば効果・効能も異なります。片方は薬として使えるのに、片方は毒になってしまうことも往々にしてあります。ところが人間が色んな物質を混ぜたり熱したりして人工的に化学物質を作ろうとするとほとんどの場合に、両方が混じり合ってしまうのです。

片方だけ作り出すのってけっこう難しいのです。どれくらい難しいかと言うと、片方を作り出す手法を開発するとノーベル賞をとっちゃうくらいです。その手法の一例を開発してノーベル賞を2001年に受賞したのが野依良治先生です。日本人ですよー。

リナロールの場合は、2つのリナロールが一定の割合で混じり合っています(半分ずつではありません)が、他の精油成分の場合、リナロールのように混じり合っているものもあれば、片方のみ含まれている場合もあります。この片方のみ含まれるものがあるというのは自然のすごいところです。

人間が作ると上述のように片方だけ作り出すことがとても難しいのに、植物は成分によっては自然と作り分けているのです。形状の違いによって効果・効能が異なるものが多いので、恐らく生物は進化の過程で自分にとって有効な成分のみを作り出すようになったのだと思います。

今日もクロモジさん含めて凄い能力の持ち主の植物の皆様に尊敬の念をもって作業をしたいと思います。ちなみに抽出工程で役立っている、あるいは無意識に利用している理科の知識としては上記だけでなく、

・液体の蒸発と沸騰の違い
・ろ過の仕方、その他もろもろ実験器具の使い方
・脱水材の使い方
・回転トルク
・生物の種類(これは私の場合は若い頃に勉強してなかったので、現在勉強中)

などなど。

おかげさまで基本的なことを理解した上で精油を作ることができていると考えています。

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執筆者

アロマセレクトシニアマネジャー 坂本




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