ようやく国内でCOVID-19の診療支援に薬剤師が関わっていることが報告されました

本記事は、主に医療従事者向けに記載をしております。
また、本記事の内容は、私個人が書いていることで、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。

はじめに

約1週間ぶりの投稿です。

COVID-19流行下における薬剤師の活動について、海外の事例を過去に記事として記載しておりました。

これまで、日本国内で薬剤師がCOVID-19流行下でどのような活動を行なっているかは、商業誌に少し記載している程度で、論文投稿はされていませんでした。

この度、日本医療薬学会の和文誌である『医療薬学』のVol46. No.12に掲載されていました。この内容についてまとめました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する病院薬剤師の診療支援とその一考察 (医療薬学. Vol.46. No. 12. 722-731. 2020)

概要:2020年1月20日から2020年5月3日までの期間を第1期〜第3期の3期間に分けてその関わりを報告

第1期: 2020年1月20日〜2020年2月16日
第2期: 2020年2月17日〜2020年3月29日
第3期: 2020年3月30日〜2020年5月3日

第1期は本文では具体的な名称は記載されていなかったが、おそらくダイアモンドプリンセスからのCOVID-19症例を受け入れていたよう。
なお、この際は、薬剤師の直接の介入は行なっていなかったよう。

第2期は、専従薬剤師 1名 (他に1名がサポート役)を配置し、持参薬鑑別より開始。持参薬鑑別は個人防護具 (PPE)着用の上、病室で実施していたよう。また、持参薬は用いず、院内処方にて対応していたよう。
薬剤管理指導も同期間に開始。
同期間に発熱外来が病院として実施することとなり、セット処方の配置薬を置くこととしているよう。専用の処方指示書、専用薬袋 (薬剤名、用法用量、効能効果等、薬袋と医薬品情報文書を兼ねた薬袋)を用いていたと記述あり。

第3期は、専従薬剤師がCOVID-19専用病棟、ICU、一般病棟の3病棟を横断的に対応していたとのこと。行なっている内容は概ね第2期と同様であるようだった。

本報告の全期間に持参薬鑑別は57症例分を対応、薬剤管理指導件数は52件行なっているようだ。
考察では、専従薬剤師が主に1人で業務を行なっており、心身的負担が大きかったという内容も記載されている。

本報告を読んで気になった点や感想など

本報告で気になった部分は、アセトアミノフェンとファビピラビルの相互作用に関して言及されている。
アビガンのIFには、アセトアミノフェンの服用によるファビピラビルの薬物動態への影響はないことが報告をされている。しかし、引用文献 [1]に記載されている内容は、(そもそも、本報告での引用文献の番号は誤っているようだが・・・)アセトアミノフェンの薬物動態にファビピラビルが影響するとの内容だが、臨床的には重要ではないと結論付けされている。なのに、今回読んだ報告にはどういうことが懸念されたのかが記載されていなかった。ナショナルセンターからの報告なので、内容を吟味して、詳細に記載をいただきたい点であった。

感想としては、本報告は、論文の体としてはなっていない印象であった。
本報告での内容は、当院で私自身が行っている対応とほぼ同等であった。
当院では専用病棟は、もともと薬剤管理指導業務の対象病棟ではなく、算定は行っていないため、服薬指導を行った件数で勘定をすることとなるが、報告を行った施設は早期から受け入れを行なっており、大変受け入れ症例、対応症例も多かったことがうかがえる。
本報告を読んで、最大の懸念は、当院でも同様だが、ほぼ一人の薬剤師に任せて業務をさせていた組織のあり方という点も考えていく必要があると思う。

参考文献

[1] Zhao Y, Harmatz JS, Epstein CR, Nakagawa Y, Kurosaki C, Nakamura T, Kadota T, Giesing D, Court MH, Greenblatt DJ. Favipiravir inhibits acetaminophen sulfate formation but minimally affects systemic pharmacokinetics of acetaminophen. Br J Clin Pharmacol. 2015 Nov;80(5):1076-85. doi: 10.1111/bcp.12644. Epub 2015 Jun 8. PMID: 25808818; PMCID: PMC4631180.


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