レカルブリオ®配合点滴静注用(レレバクタム水和物/イミペネム水和物/シラスタチンナトリウム)は日本国内市場での出番はある?

本記事は、医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、個人的に英文を翻訳しており、論文を読む時の解釈が個人の見解に基づいているため、誤っている可能性がありますし、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。

はじめに

だいぶ久しぶりの更新です。

先日、耐性グラム陰性菌用の薬剤が日本で承認されました。

その薬剤はタイトルにありますように、レレバクタム水和物/イミペネム水和物/シラスタチンナトリウムの合剤である、レカルブリオ®配合点滴静注用です。

今回は、この薬剤が日本市場で本当に必要な薬剤なのかを考えていきたいと思います。

この薬剤は?

まず、この薬剤は、レレバクタムという日本国内で承認されるのは初のβ-ラクタマーゼ阻害薬を含む薬剤になります。イミペネム水和物/シラスタチンナトリウムは既に国内でチエナムなどの商品名で古くから使用されているカルバペネム系抗菌薬になります。

カルバペネム系抗菌薬は薬剤師のみなさまなら既によくご存知がと思いますが、グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広くカバーする(してしまう)抗菌薬でいわゆる広域抗菌薬の部類に入ります。緑膿菌などもカバーしてしまいます。

β-ラクタマーゼ阻害薬は、国内で既に承認されている薬剤にも含まれているものとして、スルバクタム、タゾバクタムなどがあります。βラクタマーゼ阻害薬は名前のとおり、β-ラクタマーゼの働きを阻害し、β-ラクタマーゼを産生する菌 (主にグラム陰性菌になるかと思いますが)に対しての活性を示すようになります。

今回承認された薬剤はこれらを組み合わせた薬剤になります。

日本市場で出番はある?

あくまでも私個人の意見ですが、今回承認された、レカルブリオ®配合点滴静注用は日本市場での使用は非常に限定的では無いかと思います。

理由の一つ目としては、添付文書上の適応菌種について

本剤に感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エ ンテロバクター属、セラチア属、緑膿菌、アシネトバクター属 ただし、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌株に限る

との記載がされています [1]。

すなわち, カルバペネム系抗菌薬に耐性ということが分かっている菌種に対して使用しないといけないということです。

例えば, カルバペネム耐性腸内細菌科細菌  (=CRE)の国内での検出状況はJANISのデータでは, CREの分離率について、2017年では0.27%と非常に低い状況です [2]。(下図は参考資料 [2]より引用)

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このため, 腸内細菌科細菌に限って考えると、この薬剤の使用する可能性は非常に低いこととなります。

2つ目の理由としては、添付文書において

本剤は、AmblerクラスA又はクラスCのβ-ラクタマーゼの関与が考えられる原因菌による感染症に投与すること。

と記載されています [1]。

Ambler分類で、クラスA, クラスCに分類されるカルバペネマーゼは,  KPC型GES型などになります [3]。(下表は参考資料[3]より引用)

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しかし, 日本で多くみられるカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌はIMP型, 時にNDM型 (海外からの輸入例と思われる事例の報告あり)ですので, これらのCPE産生菌に対してはそもそも使用ができないわけです。

このあたりはIASRの過去記事を見ていただくとわかると思います [4, 5, 6]。

緑膿菌についても多くはIMP型ということが国内データでは知られていますし, 臨床上ではVIM型などは見ますが、クラスA, Cのカルバペネマーゼを産生するのはほとんど見ないかと思います(私は遭遇したことはありません)。

これに関連した事項ですが、レレバクタムはクラス B 及びクラス D β-ラクタマーゼを阻害せず、抗菌. 活性を持たない [7]と明記されています。つまり、国内で流行しているカルバペネマーゼ産生菌にはそもそも使う場面が少ないように思います。

以上より、日本国内では出番が少ないのでは無いかとあくまでも個人的な意見ではありますが、そう考えています。

そして、あまり使われないことが望ましいと考えます。

最後に

抗菌薬の新薬開発はなかなか進んでいない中、海外で先に開発された抗菌薬が後に日本国内で販売されるケースが多いです。

しかし、今回承認された薬剤の使用場面は非常に限られていること、使う側も注意をしないといけないことを十分に理解して、選択をしないといけないのではと考えます。

抗菌薬の安易な使用は耐性菌の発現を惹起してしまいます。

安易にカルバペネム耐性だからこの薬剤を使用するということにはならないように願いたいと思います。


参考資料

[1]MSD 株式会社, レカルブリオ®配合点滴静注用 医薬品添付文書 (2021年6月 第1版)

[2]IASR Vol. 40 p21-22: 2019年2月号 (https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2439-related-articles/related-articles-468/8617-468r03.html)

[3] 一般社団法人 日本環境感染学会. 多剤耐性グラム陰性菌感染制御のためのポジションペーパー 第2版. (http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/position-paper(2)_2.pdf)

[4] IASR Vol. 35 p. 283- 284: 2014年12月号 (https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2302-related-articles/related-articles-418/5203-dj4181.html)

[5] IASR Vol. 34 p. 8-9: 2013年1月号. (https://www.niid.go.jp/niid/ja/drb-m/drb-iasrd/3096-kj3952.html)

[6] IASR Vol. 34 p. 238-239: 2013年8月号. (https://www.niid.go.jp/niid/ja/drb-m/drb-iasrd/3800-kj4023.html)

[7]レレバクタム水和物/イミペネム水和物/シラスタチンナトリウム 注射剤
2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 (https://www.pmda.go.jp/drugs/2021/P20210514001/170050000_30300AMX00296_H100_1.pdf)

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