COVID-19パンデミックにおける薬剤師の世界的貢献 (日本以外。。。)

本記事は、主に医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。

はじめに

先日から、何度か、COVID-19流行時に各国の薬剤師がどういう活躍をしているかの論評などについて記事にしてきました。

今回は、日本は含んでいませんが、COVID-19の流行下における、9カ国での薬剤師の活動などについてまとめた報告した記事が出ています。

Global Contributions of Pharmacists During the COVID‐19 Pandemic

https://doi.org/10.1002/jac5.1329

この記事の中で、結論に記載されている部分が非常に心に残りました。

世界中で、薬剤師は病院、診療所、地域薬局、長期療養、介護施設、医院、国や公衆衛生の現場でCOVID-19の患者さんに必要不可欠な最前線のケアを提供している。COVID-19患者を病院、退院後、または外来で診断し、治療することの複雑さから、薬剤師を含む学術的な専門家チームが必要とされている。

まさにその通りなんです。
ですが、日本では、下記について本当に不足なく実施されたのか?
・薬剤師の職能団体、関連団体がCOVID-19に直面して、何かをしたか?
 →学術的なことでも、会員の薬剤師に対しても・・・
・薬剤師の活動が示されているような報告が表向きに出ていない
 →これは、前述の職能団体等の働きが重要かと思いますが、どうなんでしょうか?


今回読んだ記事の内容では、下記の内容が日本国内ではまだまだ不足しているなと感じた部分や日本でも取り組めているなと感じた部分です。

●そもそも、日本が入っていない→グローバルに活躍できている薬剤師が不足している(私は到底無理ですが・・・)

●米国の取り組みでは、広報活動を行うためのチームを設置。広報活動でPRを様々な広報を行い(COVID-19の正しい知識も含め)、さらに、情報は、ツイッターを用いて広げていったとの内容が記載されている。バッヂまで取得したらしい(記事の内容がどれだけ”いいね”がついたなどのアピールが繰り返されていて読みにくいことはあったが・・・)。
→日本の職能団体などではまだまだ活用が下手かなと感じるし、PRを行う体制、協力してみんなでやるという姿勢など、まだまだ不足しているように感じます。。。
しかも、医師は、取材やテレビ出演をしているっていうイメージありますが、薬剤師では、土曜10時からやっている報道番組で、準レギュラー的な某国立有名大学の薬学部の教授(しかも脳神経系薬理の専門家)しか存じ上げない状況ですね。

●オーストラリア、レバノンでは、COVID-19ガイドライン作成のメンバーとして参加
→日本では、厚生労働省作成の”COVID-19診療の手引き”、感染症学会作成の”COVID-19 に対する薬物治療の考え方”が公表されています。これらは薬物療法に言及されていますが、少なからず、厚生労働省が作成した”COVID-19診療の手引き”の作成メンバーには薬剤師が入っていません。薬物療法が関係している分野があるにもかかわらず、委員に薬剤師が入っていないという状況、しかも厚生労働省が関係している内容ですので、薬剤師の力量はその程度と考えられているように感じるのは私だけでしょうか?

●オーストラリアでは、テクニシャンと薬学生を活用し、COVID-19専門病棟の薬剤供給・管理を支援させた
→日本では、この辺りは難しいでしょうね・・・

●カナダでは、公的機関(公衆衛生局)の薬剤師が主導して、医薬品の安全使用等に関する推奨事項を打ち出した。また、医薬品に関する誤った情報の払拭たらしい
→日本での公的機関におけるこのような取組は私が知る限りでは確認できていません。

●クエートの取り組みは興味深い。COVID-19のこととは直接的な関連では無いが、COVID-19の流行で、薬局主導の抗凝固クリニックでは、INRのモニタリングを行い、適切な治療上の変更をしているらしい
→日本では、薬局・薬剤部が主導でこういう取り組みを行うことは、制度上なかなか難しいでしょうが、薬剤の投与量調整に積極的に関わっていることが伺えます (もちろん、PBPM*などを取り組めばできることなんでしょうが・・・)。

(* PBPM=プロトコールに基づく薬物治療管理 のことです)

●南アフリカでは、大学病院が、薬剤師向けのCOVID-19ガイドラインを公表
→日本国内では、下記の2点が薬剤師向けのページとして利用可能ですね。
まず、京大のグループが”京都大学SPH薬局グループCOVID-19対策支援プロジェクト”として活動をしており、FIP (国際薬剤師・薬学連合)作成のガイドラインを日本語訳した文書を掲載しています。
ただ、薬局薬剤師を対象としているようなものが多く、病院薬剤師が利活用するには、少し不足をしているようにも感じます。


日本薬剤師会では、COVID-19の国内での情報を羅列したようなものをHPへ掲載していますね。
ただ、こちらのHPは、とにかくリンクの羅列で閲覧がし難いということがネックかなと思います。

病院薬剤師の職能団体として、日本病院薬剤師会がありますが、こちらにも新型コロナウイルス関連情報というページがあります。
ただ、このHPは酷いです。新型コロナウイルス関連で発出されたような通知等が中心で、我々が実務で必要な情報が・・・

職能団体にはもっと頑張って欲しいものです。

●レバノンでは、COVID-19に関する大臣国民委員会(NCC)や公衆衛生省(MOPH)で管理職としての役割が与えられたそう
→日本での専門家会議のような立ち位置でしょうか?そういったところに薬剤師が入っていた記憶は無いですね・・・(私が知らないだけだと信じたいですが・・・)。

以上、記事の内容です。

この記事の結論の最後に

ニュースメディア、一般市民、政治家は、COVID-19パンデミックの期間中、薬剤師を不可欠な最前線の医療提供者として見落とすことが多いが、この記事で提供されている9カ国の薬剤師による貢献のリストは、この視点を変えることができる。

と記載されています。
日本でも是非、本記事の内容を含め、日本の薬剤師の活躍もメディアに取り上げていただきたいものです。


それでは、下記に今回読んだ記事の和訳を記載していきます。

記事本文

Goff, D.A., Ashiru‐Oredope, D., Cairns, K.A., Eljaal, K., Gauthier, T.P., Langford, B.J., Mahmoud, S.F., Messina, A.P., Michael, U.C., Saad, T. and Schellack, N. (2020), Global Contributions of Pharmacists During the COVID‐19 Pandemic. J Am Coll Clin Pharm. Accepted Author Manuscript. doi:10.1002/jac5.1329

COVID-19パンデミック時の薬剤師の世界的貢献。

上記リンクから無料で閲覧可能です(2020年9月現在)


要旨

SARS-CoV-2(COVID-19)の世界的なパンデミックの期間中、薬剤師は、ニュースメディア、一般市民、または政治家によって、不可欠なヘルスケアの最前線の提供者として言及されることはほとんどなかった。世界各地では、薬剤師がパンデミックの間、必要不可欠なヘルスケアサービスを提供するために、毎日ヘルスケアの最前線で働いている。薬剤師は、病院、診療所、地域薬局、長期療養、医院、国や公衆衛生など、さまざまな環境で患者ケアを提供する薬の専門家である。本論文では、COVID-19パンデミックの期間中、高所得国および低所得国の薬剤師がどのように重要な患者ケアと国民の福利に貢献したかについて述べる。ニュースメディア、一般市民、政治家は、不可欠な最前線の医療提供者としての薬剤師をしばしば見落としていたが、本稿で紹介する9カ国の薬剤師による貢献のリストが、この視点を変える一助となることを期待している。

本文

SARS-CoV-2(COVID-19)のパンデミックが世界中に広がる中、世界保健機関(WHO)やニュースメディアなどは、医師や看護師の最前線での英雄的な努力を評価した。 しかし、薬剤師はほとんど言及されていなかった。世界中で、薬剤師はパンデミックの期間中、必要不可欠な医療サービスを提供するために、日々医療の最前線で働いている。 薬剤師は、病院、診療所、地域の薬局、長期療養、医院、国や公衆衛生など、さまざまな環境で患者ケアを提供する薬の専門家である。 薬剤師は、アメリカ人の90%が地域の薬局から5マイル以内に住んでおり、最もアクセスしやすい医療専門家の一人である(1)。 COVID-19パンデミックからの課題が高まる中、薬剤師は行動への呼びかけに応えていますが、一般の人々、ニュースメディア、政治家は薬剤師の貢献を認識しているのか?
"英雄の臨床薬剤師とCOVID -19パンデミック"と題した最近の社説では、「過労と見落とされた薬剤師」と述べられた。Bauman氏は、米国の学術医療センターでは、他の医療提供者は薬剤師を大切なチームメンバーとして認め、擁護しているが、「この知識は常に国民、ニュースメディア、政治家に解釈されているわけではない」と述べている(2)。 Cheong氏らは、パンデミックや慢性的な状況下で薬剤師がどのように薬の質の高い使用に貢献しているかについて、国民の期待値を高めるために、今すぐ公的な行動にコミットするための薬剤師の”行動への呼びかけ”を発表した (3)。 薬学協会や組織は、COVID-19の教育リソースを多数提供してきた(Table 1)。 これまでに、中国、オーストラリア、マレーシア、サウジアラビア、米国(US)の薬剤師は、COVID-19パンデミック時の薬剤師の様々な役割と貢献について述べている(3-10)。

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病院の薬剤師は、患者ケアの意思決定を迅速に行うために、COVID-19の薬物療法の新しい選択肢を評価し、副作用を防ぐためにCOVID-19の薬剤をモニタリングして調整し、多数の薬剤不足を管理し、途切れない薬剤供給を維持し、重症治療薬のサプライチェーンの問題を解決し、個人防護具を備蓄するためにワークフローを調整し、一時的な緊急COVID-19病院で新しい薬局サービスを確立している。米国のある病院での経験から、COVID-19の患者は平均19.8種類の薬を受け取り、薬剤師は患者1人当たり平均8種類の介入を行ったことが明らかになった(6)。 米国の医師と6人の臨床薬剤師からなる専門家は、急速に進化するパンデミックの間、患者をケアする最前線の医療提供者を対象としたCOVID-19の治療ガイドラインを米国国立衛生研究所(NIH)と共同で作成した(11)。
地域薬剤師は、COVID-19クリニックを開設し、電話診療を利用して慢性ケア管理を行い、結果が判明した時点でCOVID-19の検査と指導を行っている。薬剤師はまた、薬剤の使用、管理、問題解決のための幅広い知識と訓練を、COVID-19公衆衛生教育を公衆に提供するために活用している。この記事の目的は、COVID-19パンデミックの間、高所得国および低所得国の薬剤師が、必要不可欠な患者ケアと公衆の福利にどのように貢献したかを記述することである。9カ国の薬剤師は、本論文の上席著者(DG)との過去の抗菌薬適正使用活動に基づいて選ばれた。彼女は、6つの大陸にまたがる薬剤師とグローバルに活動し、研究、出版、ソーシャルメディアの利用における共同作業を通じて、この薬剤師のネットワークとの交流を維持している。Figure 1は、COVID-19パンデミックの期間中、これらの9カ国からの薬剤師の貢献の例を強調した世界地図である。

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The United States
オハイオ州コロンバスにあるオハイオ州立大学ウェクスナー医療センター(OSUWMC)の薬剤師は、病院の上級指導者や災害対策チームと協力して、COVID-19の入院患者および外来患者のために必要不可欠な薬局サービスを特定し、実行しました。450人以上の薬剤師、薬学技術者、研修医、学生インターンが、COVID-19の伝統的で新しい必須の薬局サービスを提供した(8, 12)。パンデミックの進展に伴い、新たな薬局サービスが追加された。例えば、私たちの街はCOVID-19の患者の急増に備えて、薬局全体がCOVID-19のオーバーフロー病院として機能していたコンベンションセンターに設置されていました。COVID-19患者が急増している間、救急医療部門の薬剤師がニューヨーク市に派遣された。薬剤師は、退院後のCOVID-19患者の管理を支援するために、新しい外来ケアCOVID-19クリニックを設立した。OSUWMCの広報(PR)チームは、上級感染症薬剤師(ID)および本論文の著者(DG)と協力して、一般市民およびオハイオ州立大学の職員にCOVID-19の教育を提供した。これまでにID薬剤師や地元テレビの健康記者、全国ニュースメディア、雑誌、OSUWMCの健康ブログなど、20件以上の取材をPRチームが手配した。OSUWMCソーシャルメディアチームとID薬剤師は、COVID-19の正確で事実に基づいた情報を一般市民に提供するためのツールとしてTwitterを利用した。ID薬剤師(@idpharmd)とOSUWMC(@OSUWexMed)は、それぞれ7900人のフォロワーと2万6000人のフォロワーにリツイートすることで、COVID-19のツイートのリーチを広げた。例えば、@idpharmdによる「スマホをきれいにする方法」と「プラスチック製フェイスシールドは実際に何かをするのか」と題した2つの記事のTwitterエンゲージメントは880件と1076件、インプレッションはそれぞれ2万2458件と1万5,986件だった。疾病対策予防センター(CDC)は、タイムリーなCOVID-19の情報を一般市民に効果的かつ安価に届けるために、ツイッターを戦略的に利用することを奨励した。Twitterは、WHO、CDC、学術機関と協力して専門家を特定し、COVID-19のトピックに関する信頼性の高い更新情報を提供しました(13)。ID薬剤師(@idpharmd)が申請し、Twitterの青いバッジ「検証状況」を受信したことで、公益性の高いアカウントが本物であることを知らせている。重要なことに、本稿に登場する5人の薬剤師は、正確で信頼性の高いCOVID-19教育を一般市民に提供するために、Twitterの検証ステータスを取得した。Table 2は、2000人以上のフォロワーを持つ選ばれたID薬剤師のTwitter検証済みアカウントのリストである。また、Table 3に勤務先からのCOVID-19薬局サービスの例を示している。

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フロリダ州マイアミのIDStewardship
IDStewardshipは、ID薬剤師と抗菌薬適正使用のためのオンライン教育プラットフォームである(14)。
世界中からの他の臨床薬剤師の貢献者のサポートを受けて米国のID薬剤師によって開発され、管理され、IDstewardship.comブログと@IDstewardshipソーシャルメディアのプロフィールは、その41,000人以上のTwitterとInstagramのフォロワーに無料で公開されている。これらのアウトレットは、このパンデミックの進展の間、私たちの技術的に接続された世界で信頼性が高く、関連性のある情報を発信する革新的な方法を提供している。

薬剤師のためのCOVID-19リソースのブログページは、臨床的に関連するCOVID-19薬物療法の文献を定期的に更新している(14)。COVID-19リソースのリポジトリは、2020年3月14日から2020年7月14日までの間に、18万人以上の人が30万ページビューを超える登録をしたほどの価値があった。COVID-19のリソースページに加え、COVID-19パンデミック時の薬剤師の役割に関するブログ記事、COVID-19のレムデシビルや他の薬物療法に関する最新情報、薬学生へのCOVID-19の影響、COVID-19の試験に関する記事は、32,000以上の累積ページビューを獲得しています。

COVID-19の関連する概念や情報が公開された際の認知度を高めるために、IDStewardshipはミームや絵文字を使ったInstagramの投稿を使用し、参考文献を用いて簡潔な対話を提供しました。例えば、呼吸器の飛沫によって広がる細菌を視覚的に表現したある投稿は、4000人以上のユーザーにシェアされ、3200以上の「いいね!」が登録され、3万以上のユニークなInstagramアカウントに到達した。この記事の薬剤師である米国(TG)とカナダ(BL)の2人の薬剤師は、COVID-19の抗菌薬適正使用についての国際的な学際的な議論に何百人もの同僚を参加させるために、月に数回のTwitterチャット(#ASPChat)を共同主催した。2020年5月のTwitterチャットでは、150万インプレッション以上を生み出し、全世界から106人の参加者があった。Figure 2は、COVID-19の世界的なパンデミックの期間中の薬剤師の本質的な役割について、ニュースメディア、一般市民、政治家を巻き込み、教育するためにデザインされている。

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United Kingdom
Public Health England

英国の薬剤師は、COVID-19の戦略的経営に直接、間接的に貢献してきた。これには、公衆衛生への介入、臨床および医薬品供給管理(国および地方)、政策変更の指導も含まれている。直接的な対応の例としては、国の医薬品サプライチェーン、特に人工呼吸器管理患者のための重症患者用医薬品と抗感染症薬のための作業、医薬品誤用規制の変更、ホスピスやケアホームでの医薬品への容易なアクセスの支援、健康格差の削減対策、政策変更を実現するための政府へのロビー活動、重症患者のための薬剤師の再配置を支援するための国のトレーニングガイダンスの開発、抗菌薬使用の監視、COVID-19パンデミックに関連して抗菌薬耐性に取り組むための介入策の開発と実施などがある。

薬剤師はまた、新しい公衆衛生の役割と介入にリーダーシップと監督を提供した(Table 3)。病院内では、集中治療室(ICU)への再配置、COVID-19の臨床試験の管理、無菌調整部門を拡大して非経口投与可能な医薬品を調合・供給することで、完全な個人防護具(PPE)を着用している看護師の作業を軽減したり、現在のパンデミックの状況下での使用に適していることを確認するための医薬品ポリシーの適応など、薬剤師は通常の業務範囲外での業務を求められた。地域薬局は、他の医療現場のスタッフが遠隔診療に移行した時にも、薬や病気についての安心感やアドバイスを提供するために、一般の人々に開かれたままであった。COVID-19パンデミック時のコミュニティ薬局における100以上の顕著な実践例が、規制当局の検査官によって確認されている(15) 。
全国のほとんどの薬剤師は、COVID-19のために追加の適応または新しい役割を引き受けながら、通常の役割を維持し、貢献し続けた。COVID-19は、全国的に重要な変化をもたらしたことを含め、英国のシステム内での実践に有益な変化をもたらしており、将来の実践にどのように組み込むことができるかを検討するための作業が進行中である。

Australia
Alfred Health, Melbourne, Victoria

オーストラリアの薬剤師は、病院と地域社会の両方の環境において、COVID-19の集学的チームの対応に欠かせないメンバーである。メルボルンでの公衆衛生への対応とステージ4の制限の実施中、地域薬局は必要不可欠なサービスと考えられていた。薬剤師は引き続き医薬品供給の円滑化やインフルエンザ予防接種などの臨床ケアを続けた。臨床薬剤師は、COVID-19患者の臨床ケアのための全国的なエビデンスに基づいた生活ガイドラインを作成するために、全国COVID-19臨床エビデンスタスクフォースに参加している。動的な投薬需要モデルが開発され、オーストラリア全体の重要な投薬の使用量と利用可能性を予測するために使用され、政府系病院で利用できるようになった。アルフレッド・ヘルスの約240名の薬剤師、技術者、インターン薬剤師、薬学生、薬学サポートスタッフは、パンデミック期間中、パンデミック前のレベルの臨床ケアを迅速に適応させ、継続的に維持してきた。Table 3に記載されているサービスに加えて、薬剤師は、病院のCOVID特定病棟の再設計やCOVID治療専門チームの実施など、医療サービスの運営対応に直接関与していた。1週間以内に、従来の週7日体制のICU・一般病棟向け臨床薬局業務を24時間体制に拡充した。このサービスに参加しているすべての薬剤師は、薬の処方、病理検査のオーダー、病棟回診時の文書化を支援するために、PPMC(Partnered Pharmacist Medication Charting)の資格を取得している(17)。2人の医療スタッフに限定した入院病棟回診でのバーチャル出席など、テクノロジーの急速な導入により、患者と薬剤師の両方を安全に保ちながら、継続的なサービス提供が可能になった。薬剤師が、固形臓器移植を含む既存の州全体のサービスの地方および地域の外来患者に継続的な臨床レビューを提供することで、電話診療が実施された。薬学生は、必要に応じて薬学技術者 (テクニシャン)が通常行う役割として募集し、訓練を受けた。薬学技術者 (テクニシャン)と薬学生は、COVIDの特定病棟で看護スタッフとチームを組み、薬の供給と管理を支援した。

Canada
Public Health Ontario, Toronto, Ontario
Hotel Dieu Shaver Health and Rehabilitation Centre, St. Catharines, Ontario

Pharmacists at Public Health Ontario(PHO)とHotel Dieu Shaver Health and Rehabilitation Centre(HDSHRC)の薬剤師は、パンデミックの期間中、患者、家族、医療従事者の安全を守ることに主に力を注いでいた。COVID-19の感染を防ぐことが、彼らの業務の重要な目的であった。PHOの薬剤師は、オンタリオ州の医療関係者や州政府のパートナーに対して、パンデミック時の安全な薬物使用についてアドバイスを行った。これには、投薬時間の統合化によりPPEの使用を減らし、患者と医療従事者間の感染を防ぐための曝露時間を短縮するための推奨事項が含まれていた。COVID-19の感染拡大を防ぐためのもう一つの取り組みとして、薬剤師はCOVID-19患者におけるネブライザー、定量吸入器、非ステロイド性抗炎症薬、点鼻薬の適切な使用についてアドバイスを行った(18)。

抗菌適正使用の観点から、薬剤師が共同で率いる学際的なチームは、COVID-19患者における細菌感染(19)と抗菌薬の処方に関する迅速なレビューとメタアナリシスを実施しており、COVID-19がもう一つの世界的な公衆衛生上の脅威である薬剤耐性に対する影響を評価し、軽減する努力をしている。COVID-19における薬剤に関する一般的な神話(例えば、COVID-19における抗菌薬の役割、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害剤の安全性、感染症患者におけるNSAIDsの安全性に関する神話の払拭)に対処するために、様々な機関の薬剤師が患者指導医とともに患者教育リソースを開発した(20)。

HDSHRCでは、薬剤師や薬局の技術者が、返却された薬を安全に取り扱うことを含めて調剤・管理のプロセスを変更した。薬局チームはまた、患者ケアユニットの投薬管理システムを適応させ、混雑を減らし、自動調剤キャビネットでの物理的な距離を適切に保つようにした。COVID-19の期間中に医薬品サプライチェーンが急速に変化したことを考えると、医薬品不足の管理と代替薬物療法の選択肢の提案も重要な役割であった。また、薬剤師は、薬物療法に関する一般的な質問に対応するためのウェブフォーラムを設置し、COVID-19の予防・管理に関する病院スタッフや医師への教育を行った。


Saudi Arabia
King Abdulaziz University and Hospital, Jeddah

King Abdulaziz University(KAU)・King Abdulaziz University Hospital(KAUH)では、教員、薬剤師、薬学技術者、研修医、学生が、入院・外来でのCOVID-19の薬局サービスを最適化する役割を担っていた (Table 3)。パンデミックの開始時には、ID医師とID薬剤師を含むCOVID-19患者ラウンドチームが発足し、患者の管理について話し合い、COVID-19プロトコルを作成した。COVID-19の普及を抑えるために、抗菌薬の制限を紙ベースから電子プロセスに変更した。ID薬剤師がCOVID-19のウェビナーやニュースインタビューを実施した。サウジアラビア保健省、内務省医療サービス総局、サウジアラビア薬学会、サウジアラビア臨床薬学学会、エジプト医薬品庁、サウジアラビア救急医学学会から招待された医療従事者を対象にウェビナーが開催された。サウジアラビア健康専門委員会が招待したライブ・ウェビナーには、さまざまな国から12,000人以上の医療従事者が参加し、the American College of Clinical Pharmacyのウェブサイトで紹介された(21)。このウェビナーでは、COVID-19の治験薬の最新情報と、パンデミック時の薬不足を緩和する方法を提供することを目的としている。もう一つのウェビナーは、KAUの健康増進センターが主催し、COVID-19の情報を一般市民に提供することに焦点を当てていた。1つのビデオは、無料のオンラインCOVID-19リソースの一部として、米国のSIDPによって招待された。ID薬剤師が無作為化臨床試験(RCT)を含むCOVID-19関連研究を発表した(22-24)。あるID薬剤師は、COVID-19患者のRCTのいくつかのデータ安全性モニタリングボードのメンバーであり、COVID-19の治験薬を研究するためにCOVID-19の助成金を受けている。KAUの薬学教員は、薬学博士(Pharm.D.)カリキュラムのCOVID-19の内容を充実させるために、新たな講義や活動を行い、パンデミックの期間中、KAUHの薬学部門で勤務した教員もいる。薬局実習生のためにCOVID-19のローテーションを作成した。ローテーションは臨床の先生方(ID、クリティカルケア、非経口栄養、内科)に研修していただいた。COVID-19の治験薬が議論され、実習生はCOVID-19の薬物療法管理の様々な側面をカバーするために、いくつかのグループに分かれて課題を与えられた。症例については、既存の科学的エビデンスに照らして議論され、抗菌薬適正使用のための介入が行われた。

Qatar
Hamad Medical Corporation (HMC)

HMCはカタール州の主要な政府医療機関であり、12の総合病院と専門病院で構成されている。COVID-19のパンデミックの期間中、400人以上の薬剤師、薬剤師技術者、研修生が、全社的に、また薬局事務局のリーダーシップの下で、並外れた献身と卓越したパフォーマンスを発揮した。薬剤部では、電話診療を行っている医療機関 (診療科?)からの新規処方箋や薬の再調剤の際に、お薬の宅配サービスを開始し、社会的安全の推進に努めた。院内でもスタッフの再配置、外来薬局へのガラスシールドの設置、現場のすべての提供者への適切なPPEの提供など、社会的安全の推進が図られた。退院されたCOVID-19の患者に処方された頻用薬を救急部で使用できるようにし、院内での患者さんとの接触を減らした。

HMCの薬局主導の抗凝固クリニックでは、ドライブスルーサービスを開始し、国際正常化比(INR)をモニターし、適切な治療上の変更を行っている(25)。薬物情報・毒物センターでは、薬に関する一般的な質問に答え、必要に応じて服薬相談を行う全国ヘルプラインを開始した。COVID-19対応の国の中核チームには臨床薬剤師のチームが参加していた。薬剤師は、公表されているエビデンスの分析やCOVID-19の治療プロトコールの作成に携わり、公表されている研究のダイナミックな変化に合わせて頻繁に更新された。

選抜された臨床薬剤師チームは、カタール全土にある新しいCOVID-19病院の最前線の対応者として割り当てられた。これらの薬剤師は毎日のラウンドに参加し、臨床介入を行っていた。運営薬剤師の別のチームは、新しい病院に再配置された。医薬品供給チームは、COVID-19の医薬品を適切かつ十分に供給するために、24時間体制で作業を行った。薬剤供給チームは、世界的な薬不足を監視し、適切な薬のストックと再分配を実施した。CPPD(Continuous pharmacy professional development)事務局は、COVID-19に関する最新情報を含む公開ウェブサイトを作成し、薬剤師向けの教育資料を電子メールや従業員向けに作成したコミュニケーションハブを通じて循環させた。CPPD事務局では、最適な患者ケアを提供するために必要な知識を薬剤師に身につけてもらうために、録画やライブの教育イベントを多数実施した。1つのライブイベントは、OSUWMCの薬剤師が、重篤なCOVID-19患者との経験を共有した。企業全体の薬剤師は、発表された、そして進行中のCOVID-19の治験と臨床転帰の研究プロジェクトに関与している(26, 27)。

Sefako Makgatho Health Sciences University, Pretoria
薬剤師は、南アフリカのNDoHのCOVID-19の新しい治療法を評価するための迅速レビュープロセスを支援し、エビデンスに基づいた医療の利用を支援するために参加した。さらに、薬剤師は全国の薬剤師向けのCOVID-19ガイドラインを公表した(28)。出版後、南アフリカの薬剤師120名とケニアの薬剤師238名を対象に、2つのウェビナーが実施した。南アフリカは、COVID-19を治療し、公平なアクセスを確保するために、既存の薬剤や新薬を試験するWHO連帯試験に参加している39カ国のうちの1つである。薬剤師は研究チームの服薬管理の補助をしている。患者、病院スタッフ、そして大学のためになる手指消毒剤の製造を大学スタッフが始めた。ロックダウン中は公共交通機関がないため、医療へのアクセスが大きな課題となっている。薬剤師は、慢性疾患を持つ患者に4ヶ月分の医薬品を提供し、繰り返しの受診を避けるようにした。

Lebanon
American University of Beirut Medical Center (AUBMC), Beirut

2020年2月21日にCOVID-19の最初の症例が出現して以来、レバノンの薬剤師はパンデミックの最前線で、国家レベルで、地域社会で、病院で、そして学術分野で、さまざまな重要な役割を果たしてきた(29)。第一に、指導・リーダーシップの面では、薬剤師はパンデミック開始当初からCOVID-19に関する大臣国民委員会(NCC)や公衆衛生省(MOPH)で管理職としての役割が与えられ、厳しい経済的・政治的不安にもかかわらず、積極的に緊急対応計画を成功させた(30)。臨床薬剤師は、病院の集学的チームの中で必要不可欠でユニークな役割を果たした。AUBMCでは、COVID-19の予防・管理のための地域臨床ガイドラインを作成するために発表された情報や文献の津波の批判的評価にID薬剤師が参加した(31)。現場では、臨床薬剤師がCOVID-19症例の日々の総合的な服薬レビューや薬物療法モニタリングを行った。レバノンの薬剤師会は、地域薬剤師が疾病予防のための教育を行い、疑いのある患者を適切なCOVID-19センターに紹介する役割を推進するためのガイダンスを発行した。小売薬剤師は、過剰な調剤や闇市場価格をコントロールすることで、医薬品や医薬品の不足を食い止めるゲートキーパーとして重要な役割を果たしていた(32)。最後に、学術分野の薬剤師の多くは、COVID-19の予防・管理対策に関するオンライン教育・研修セッションの配信や、国を挙げての研究の主導・発表に携わっていた(31)。経済危機、脆弱で分断された医療制度、認知度の低さにもかかわらず、レバノンの薬剤師はパンデミックの期間中に高い影響力と支援を証明することができた。彼らの関与は、我が国の緊急事態への対応の成功と効果に貢献した。

Nigeria
The University of Nigeria, Nsukka, Enugu

ナイジェリア教育大学病院の薬剤師は、病院が新たに立ち上げた検査・治療センターの最前線のチームの一員である(33)。彼らは、COVID-19の治療法が承認されていない中で、処方箋の充填と過剰に処方された抗ウイルス剤、抗菌薬、免疫調整剤の管理に時間を費やした。薬学部の研究グループや個々の学術薬剤師は、COVID-19の治療法として考えられる抗ウイルス研究や免疫力を高める漢方薬の最適化・アップスケールを行った。重要なことは、臨床薬学科の薬剤師がCOVID-19の治療薬資格の検証に関する全国科学諮問委員会に所属していることである。
薬学部、薬学技術部、薬物-漢方薬・賦形剤研究所の薬学研究室は、標準的で高品質な消毒剤や消毒剤の現地生産を強化した。この生産は、認可されていない化学製品ベンダーによる規格外の製品の違法かつ大規模な生産に直面している。これらの製品は現在、ナイジェリアのエヌグ州全域の病院で利用されており、薬局では競争力のある安価な価格で販売されている。

ナイジェリア大学の起業家精神と創造性のためのファーマエクストラアカデミーは、学術薬剤師とこの論文の著者(CMU)が率いるナイジェリア大学では、パンデミックとの戦いで彼らの能力スキルを向上させるために、アットホームな薬局の学生や新しい薬剤師のための毎週のオンラインCOVID-19講義シリーズを実施している。臨床薬学科の薬剤師を含むアフリカリソースセンター・ナイジェリアハブの薬剤師は、さまざまな州政府のために医薬品とPPEを効率的に配布するために、応答性のある健康サプライチェーンシステムの設計を支援している(34)。

Conclusion
世界中で、薬剤師は病院、診療所、地域薬局、長期療養、介護施設、医院、国や公衆衛生の現場でCOVID-19の患者さんに必要不可欠な最前線のケアを提供している。COVID-19患者を病院、退院後、または外来で診断し、治療することの複雑さから、薬剤師を含む学際的な専門家チームが必要とされている。患者や医師が電話診療のバーチャル訪問に回っている間、薬局は営業を続けており、最前線の医療に欠かせない薬剤師との1対1のアクセスを提供している。ニュースメディア、一般市民、政治家は、COVID-19パンデミックの期間中、薬剤師を不可欠な最前線の医療提供者として見落とすことが多いが、この記事で提供されている9カ国の薬剤師による貢献のリストは、この視点を変えることができる。

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