薬剤耐性グラム陰性菌感染症の治療ガイダンス (IDSA)を読み解いていく -CRE編 その3-

本記事は、主に医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。

はじめに

先日、IDSAから公表された、薬剤耐性グラム陰性菌感染症の治療ガイダンスについて、記事にしています。

この内容を少しずつ読み解いていくという内容で記事を書いています。

初回は、導入部分の抗菌薬に関するセクションについて、内容を読み解いていきました。

2-4回目は、ESBLについて記述されている部分について読み解いてみました。

前回までは、CREについて記述されている部分の導入部分、Q1について記事を記載しています。

今回は、CRE編その3として、Q&Aの内容を読み解いていこうと考えています。

本日は、2について触れていきます。

Q2. CRE による腎盂腎炎および複雑性尿路感染症(cUTI)の治療に好ましい抗菌薬は何か?

耐性GNRガイドラインの内容は下記のとおりとなっている。

推奨: セフジジム-アビバクタム、メロペネム-バボルバクタム、イミペネム-シラスタチン-レレバクタム、およびセフィデロールは、エルタペネムおよびメロペネムの両方に耐性のあるCREに起因する腎盂腎炎およびcUTIに対する好ましい治療選択肢である。エルタペネムには耐性があるがメロペネムには感受性があるというCREに起因する腎盂腎炎およびcUTIに対しては、カルバペネマーゼ検査の結果が得られないか、または陰性である場合には、メロペネム静注療法が好ましい治療法の選択肢である。

上記の推奨の内容を見ていただいたらわかりますが、記載されているβ-ラクタマーゼ阻害薬含有のβ-ラクタム系抗菌薬のうち、日本で入手できるものは2020年9月時点では無いように思います (イミペネム-シラスタチン-レレバクタムはMSDが申請して、R2年3月付けで希少疾病用医薬品の指定されているようですが・・・)。
しかも、先日の記事でも記載したかと思いますが、日本で流行しているカルバペネマーゼ産生のグラム陰性菌が産生するカルバペネマーゼは、IMP型です。アビバクタム、タゾバクタム、バボルバクタムなどは、IMP型β-ラクタマーゼの阻害作用はありません(レレバクタムはもしかしたら、阻害作用があるかもしれませんが、探しきれませんでした・・・)。

現状、これらの薬剤にアクセスが困難な状況です。
感受性があれば、メロペネムが良いと記載されていますので、感受性を確認の上、高用量メロペネムの投与を考慮すれば良いということになります。ただし、カルバペネマーゼ検査で陽性の場合は、感受性があっても、メロペネムの使用は避ける方が良いと本文に記載をされています。

あとは、前述の引用した推奨部分には記載されていませんが、アミノグリコシド系抗菌薬の投与が推奨されています。やはり、先日の非複雑性尿路感染症の部分と同様に、プラゾマイシンが良いようですが、日本では、アミカシンが選択肢としてなるかと思います。ただし、感受性を確認しての使用が良いかと思います(経験上、アミノグリコシド耐性のCREはなかなか見ませんね)。

併せて、ホスホマイシンの内服は避けることも推奨されています。

以上より、日本では、CREによる複雑性尿路感染症には、選択肢が非常に少なく、
・感受性があり、カルバペネマーゼ非産生株であればメロペネム
・上記以外では、アミカシン
の2択しか、ガイドライン通りの内容とはなりません。
大変困ったことですが、日本独自のエビデンスの創設が必要なのかなと考えます。

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