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《ヒギュエイアの杯》 − グスタフ・クリムト

医師はヒポクラテスに誓い、看護師はナイチンゲールを倫理とする。

では、薬剤師は誰に誓い何を倫理とするのだろうか?

薬剤師国家試験に向けて本腰を入れ始めようとしていた大学6年の夏に、
ふと、思い立って調べてみた。


《ヒギュエイアの杯》  グスタフ・クリムト

医術の祖アポローンの子である医神アスクレーピオスの娘である。
ヒギュエイアは杯を用いて聖蛇を飼育していた。
蛇は医学のシンボルであり、杯には薬湯が入っている。

日本ではあまり見られないが、欧米の薬局は蛇と杯がシンボルマークになっている所が多いです。


クリムトのヒギュエイアの杯は
1894年にクリムトがウィーン大学から大規模な壁画の依頼を受け作成した「医学」「哲学」「法学」のうちの「医学」に描かれています。

《医学》

《哲学》

《法学》

しかし、これらの作品は大学関係者から理解されず契約を破棄。
後に焼失されてしまい、現存しません。
理性を司る大学とクリムト「エロティシズム」的作品は相入れなかった。

この作品にはクリムトの「生」「愛」「死」が凝縮されています。

薬学のシンボルであるヒギュエイアの後ろには一人の生者と大量の死者。
多くの「死」によって医学は進歩していっている。そして「生」は永遠でない。

ヒギュエイアが生者と死者の間にいるのは、
医学によって人を救うことも、死なせることもできる
という暗示だろうか。