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季節がまたひとつ進んで、春。

成田空港に着いた途端に安堵の溜息が思わず漏れた。10時間超えのフライトを終えた体は文字通りガチガチで、鉛のよう。

2020年3月21日夕方5時。東京(いや、正確には千葉)は春の匂いがした。
春の柔らかい霞がかった夕日は、つい朝までいた場所のそれとは全く色が違う。南半球で過ごした一年が夢だったのかと錯覚するほど、悲しくなるほど、ここは日本だった。

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コロナのおかげで二度もフライトが変更になった。Air NZには7回も電話する羽目になったし、各国がロックダウン、もちろん航空会社は飛行機を飛ばさない。オークランド-成田間は3月30日まで。わたしの飛行機は予定通りではあったけれど、最後の最後まで半信半疑。クライストチャーチからオークランド行きのフライトも、空港に着くまではなんとも言えない緊張感があった。

そう、コロナのせいでこの1年間を振り返る時間もなく、フライトの心配をしていたら、いつの間にか日本にいた、まるでタイムワープをしたかのように。

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聞き取ろうと集中しなくても、耳にすんなり入ってくる日本語。ご丁寧に中国語と韓国語まで流してくれるターミナル間のバス。降車時に思わず "Thank You" といいそうになりながらも、日常が戻ってくる速さに驚く。

期待が不安に潰されてしまいそうになりながらも、365日のスタートを切ったあの春の日から一年。わたしはあの頃思い描いていた自分になれているんだろうか。

この一年どうだった?なんて聞かれたって、この一年を説明できる自信がまるでない。とにかく後悔のないように一生懸命走ってきた。まさに体当たり。体当たりの毎日で傷もたくさんできたけれど、その傷すらも今は誇らしい。

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勢いに任せて思いっきり走り出したら、思いっきり転けたりもして。ありがたいことに、その度に誰かがいつも手を差し伸べてくれた。

毎日が新しい出会と別れ。自分の英語力のなさに悔しくて泣いたあの帰り道。目の前の景色が綺麗すぎて言葉を失ったあの瞬間。一生懸命話した英語で分かり合えたあの日。まぶたの裏に焼きついている眩しい日差しと真っ青な空、ミルキーブルーの海の色。忘れたくない思い出だらけで、忘れないようにひたすら日記を書いた毎日。

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思い描いていた自分にはまだまだ程遠いけれど、一年前の不安で押しつぶされそうになっていた自分に「大丈夫。最高の思い出になるから。」って自信を持って言ってあげることができる。

一生忘れられない一年なんてありきたりだけれど、この先もきっと忘れることのない一年。


ここで出会えた全ての人に感謝いたします。また世界のどこかで。

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