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良い病院の選び方‐妊娠率が高い病院は技術力が高い?-

不妊治療をする上で、まずはじめにするのが病院(クリニック)選び。選ぶポイントは人それぞれあると思いますが、1.通院のしやすさ(時間・距離)、2.口コミ・友人/知人の紹介、3.病院の実績、 あたりが病院選びによく用いられるかと思います。

通院のしやすさは大事です。無理して通いにくい病院、診療時間が自分のライフスタイルに合わない病院に行くのは、後々しんどくなると思います。

次に、口コミや友人・知人の紹介。これも大事だと思います。実体験はなによりも参考になります。ですが、口コミで気を付けてほしいのは、極端に良い評価ばかりのクリニック(病院)。万人に合うクリニック(病院)は存在しないと思っています。良い評価ばかり、院長先生をほめたたる評価ばかりなのは、すこし気を付けたほうが良いと思います。

最後に、クリニックが出している成績で決める。妊娠率が高いクリニックは魅力的ですよね。ですが、気を付けてください。はっきり言って数値はいくらでも操作できます。身も蓋もない言い方になりますが、医療も商売です。患者様の来ないクリニック(病院)は経営が成り立ちません。そのため、自分たちのクリニック(病院)を患者様に選んでもらうため、よく見せようと努力します。

治療成績を操作できる、と言いましたが、いくらなんでも捏造はしていないと思います(そう信じたいです、同業者として)。

ではどういうことか?といいますと。つぎの表を見てみましょう。

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どうですか?これをみると、『Aクリニックがよさそう!!技術力が高そう!』そう感じませんか?

ところがAクリニックのデータをよく見ると小さく『初回採卵患者・累積妊娠率』と書いてあったりします。この『初回採卵患者』。これはよく使われる手法です。初回なので、初めて採卵をした人、ということです。初めて採卵した方のみのデータと、複数回採卵をされた方(リピーターの患者様)を含むデータでは、リピーターの患者様が含まれる方が妊娠率は下がります。

どういうことかといいますと、例えば、『3年前から不妊治療を続けているが、結果が出ず、今年40歳になった』という方がいたとします。3年前のほうが当然お若いので、結果が出ずに3年間経過すれば、ますます妊娠は厳しくなってきています。不妊治療の現場では、このような患者様が、とても多いのです。なので、『なかなか妊娠しないリピーター患者様』を除外し、妊娠の可能性が高い『初回患者様』のみのデータを用いるのです。もちろん初回患者様がその後リピータ患者様になることもあります。その場合、2回目以降の採卵はデータから除外されます。

Aクリニックの場合、本来は1000件採卵を行って、妊娠したのが200件だったとします(妊娠率は20%)。そのうち、初回の患者様は300人のみ。初回の患者様の妊娠は150人あった。そうすれば妊娠率は50%になります。残りの700件分(リピータ)の妊娠は50件なので、リピータ患者様の妊娠率は約7%になります。

つぎに、『累積妊娠率』は、1回の採卵で得られた受精卵を使い切るまでの妊娠率になります。例えば10個採卵して、8個の胚盤胞ができたとします。1個は採卵した周期に移植して(新鮮胚移植)、残り7個を凍結保存したとします。累積妊娠率とは、1個の新鮮胚および、7個の凍結した胚を使い切るまでの間の成績になります。

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表を見てみましょう。本来なら8回移植して1回妊娠なので、1/8となり、妊娠率は12.5%です。ところが、『累積妊娠率』でみると、1回の採卵で得られた受精卵を使いきるまでなので、8回目の移植でようやく妊娠しても、『妊娠した』ということで、累積妊娠率は100%になります。

ちなみにCクリニックの治療成績は、日本の不妊治療クリニック(病院)の平均データになります(40歳以上)。このデータについてはまたのちほど配信していきたいと思います。

長くなりましたが。

捏造やデータの改ざんを行わなくても、見栄え良くまとめることが可能なので、治療成績を最優先にして病院選びをしてしまうのはやや危険かと思います。

個人的には、不妊専門のクリニックであれば、技術力の差はさほどないと思っています。(複数の不妊治療クリニックの成績をまとめたデータもあります。こちらも後ほど記事にしていきたいと思います。)

では何を重視したらよいのか。やはり、最初にも言いましたが、通院のしやすさ。これは本当に大事にしてもらいたいと思います。立地や診療時間もそうですが、先生やスタッフとの相性や病院(クリニック)の雰囲気も大事です。クリニックの雰囲気や先生の雰囲気を見るために、クリニックが行っている『治療の説明会』などに参加されてみるのも良いかと思います(オンラインで行っているクリニックもあるようです)。

皆様がありとあらゆる面で『通いやすい』と感じるクリニックに出会えますよう、心よりお祈り申し上げます。



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