ディベート観戦のススメ~試合に出ずにディベート甲子園を楽しむには~

今週末に池袋の立教大学にて全国中高生ディベート選手権大会、通称ディベート甲子園が開催されます。関係者はもちろんですが、ディベートに興味がある方が、はじめて観戦する大会としてもお勧めです。ディベート未経験者の友人や家族でもこの記事をご参考に、ディベート観戦をぜひお楽しみください

「ディベート観戦」という楽しみ方

ディベートは選手としても楽しいですし、やはりやってみるのが一番能力やスキルも付きます。しかし、観戦するだけでも十分楽しむことができますし、そこから多くの学びがあります。文科系でいうと将棋や囲碁、最近ではe-sprtsなど選手として出場しなくても、観戦自体を楽しむ人、いわゆる「見る専」(見る専門)という人がいます。ディベートにおいても、OBOGや選手経験がある方はもちろんですが、選手経験が無い方でもディベート観戦を楽しめないか、そしてそれは日本における議論文化の普及に繋がる事だろうと思っています。というわけで、今後はぜひ「ディベート観戦」の技術をまとめていきたいと思っています。

はじめてディベートを見た人の感想

ディベート甲子園ではないのですが、人生ではじめてディベートを見た人の感想がNPO法人全日本ディベート連盟のサイトに掲載されています。
「競技者以外の目から見たディベート」
http://coda.or.jp/column/archives/8
詳しくは記事を読んでいただきたいのですが、簡単にまとめると下記のような内容です。

「競技者以外の目から見たディベート」のサマリー
◆試合の面白さ
1)現実に「問題」とされている事柄が論題であること。
2)肯定/否定、どちらのサイドが勝つかわからないこと。
3)論題に関する研究・事実が豊富に引用される

◆ディベート観戦の効用について
1)選手をやる場合と同じ効用が見込める。
2)論題に関係するニュースなどで、いい意味で「引っ掛かり」が増える。

◆ディベート観戦のハードル
「ハードルの高さ」は大半が杞憂だった。実際、それなりの能力を求められたり、1試合観ただけでは難しい所もあるが、その難しさ込みで十分楽しい。他の競技と同じく最初は知らない事をしるための初期投資みたいなもの

ディベート甲子園を楽しむために

自身の勉強のため、お子さんやご友人が大会に出場している、など観戦する理由はいろいろあると思います。ここでは、勉強や自己研鑽といったかなりストイックな勉強というスタイルではなく、楽しく観戦して、なおかつある程度の学びは得たいという方向けへのご案内をしたいと思います。

1、論題に関して簡単な知識をつけておこう

実際の試合では、割と分かりやすく話してくれたりは心がけておりますが、全国大会ですので、やはりレベルは高く、選手もジャッジも一定以上の水準で知識がついています。そこで、ざっと論題に関する知識を得てから行く事をお勧めします。
その際のお勧め記事としては、ディベート甲子園を主催する全国教室ディベート連盟が発表している論題解説です。これは論題が発表された段階で連盟が公開しているもので、最初の段階で選手の指針となっています。論題の背景や想定されるメリット、デメリットなども記載されています。

第23回ディベート甲子園の論題解説
中学の部 論題解説(飲食店全面禁煙)
高校の部 論題解説(一院制)

2.メモを取ってみよう

実際の試合を見ると、一般的な話ことばに比べるとかなり早口だと感じると思います。全部は書き取れないと思います。これは訓練の違いなので仕方ありませんので、書けなくても安心してください。選手は何か月、人によっては何年もメモを書く訓練をしています。ただ、メモを取らないで聞いていると、高校であれば30分も続く試合ですので、さすがに何を話していたのかが分からなくなると思います。

なので、ポイントは全部メモをとろうとせず、どんな話をしていたのか程度のメモを取れれば大丈夫です。特に、お互いの主張がぶつかっているところをまとめましょう。肯定と否定でどこが食い違っているのかに着目して、だいたいの概要が分かれば、十分です。後述しますが、その時点で自分では分からなくても、最後は審査員が解説してくれるので、その時に「ああ、そういう事だったのか!」となるためです。

ちなみに、先の「競技者以外の目から見たディベート観戦記」では下記のような記載があります。

ある事柄についての多角的な意見・事実を1人で収集・吟味するということは膨大な時間がかかる困難なことであり、たとえ時間があったとしても、収集を行う時点でバイアスがかかってしまう可能性が高いです。ディベート観戦では、ごく短い時間かつバイアスのより少ない形で多角的な意見・事実に触れることができます。

上記の学びを強化するためにも、自分でメモを取る事は効果的です。

3.次はどんな議論が来るのかを予想しながら見る

試合を見る時は、いまのスピーチはどんな効果があったのか、次はどうなるか、と予想しながら見る事をお勧めします。将棋で例えるなら、指した一手を見て、盤上でどんな変化があったのか、次はどんな一手を打つのかを予想しながら見ると思います。それと同じです。

はじめてディベートを見る人であれば、あるほど予想しながら見て、「予想通りの反論きたな!」「ああー、そうくるんだー」とか思いながら見るのが良いと思います。中高生が自分の思考をはるかに超えた議論をしてくる事も、頻繁に起こるのがディベート甲子園です。1回、1回のスピーチの間に準備時間として、インターバルがありますので、そのタイミングで今見たスピーチのまとめと、次の予想をするのをお勧めします。

4.自分で判定してみる&ジャッジの判定を聞く

試合が終わったら、ぜひご自身で判定を出してみましょう。分からない事が多くても大丈夫です。その際、ぜひどの議論が肯定と否定でぶつかっているのかを考えてみてください。

ディベート甲子園では審査員が複数おりますが、最後に主審が口頭で試合の講評判定を行う形式になっています。審査員は、試合の振り返りと、どこが試合の分かれ目になったのかについて解説をします。そこで、自分が分からなかったところや、不明点などを補足しながら、審査員と自分の視点の違いを意識しながら聞いてみてください。同じ試合を見ても、こういう見方の違いがあるのかといった点に面白さを感じるならば、あとは数回見ていけば、きっとどんどん楽しくなります。なお、審査員の中には、もはや「話芸」を感じさせるような名人も存在しており、審査員の話を聞くだけでも勉強になって面白いという事もありえます。

5.複数回試合を見る

はじめてディベートを観戦されるのであれば、あるほど是非複数回ご覧になることをお勧めします。同じ論題でやっていますので、だんだんと知識がついてきて話が分かるようになってきて、自分の視点が広がっていく事が分かると思います。また、同じ論題にも関わらず、学校や地域などにも差がありますので、その違いなども楽しんでください。1つのテーマに対して、これほどまでに多角的な視点があるのかと驚く事になるかと思います。

おまけ~自分好みのチームを見つける~

スポーツでも自分のごひいきのチームがあると面白くなります。関係者であれば、自分の知り合いのチームを応援すると思いますが、それはそれとしてぜひ色んな学校の試合を見ていただき、自分がいいなーと思う議論をする学校を見つけてみてください。あとは、野球の甲子園でも大会前には、各学校の因縁、ドラマなどを報道しますが、実はディベート甲子園にもあります。中学校の時に対戦したライバルが高校生になって対決し、中学時のリベンジを果たすといったものから、クラブがないなかディベートが好きだからという理由で友達を誘って何とか出場したという学校。様々なドラマがあります。それは表向きにはなかなか出ていないのですが、何年か見ていくと分かるようになってきます。そうなると、議論のみならず青春のドラマとしても熱いものを感じるようになるはずです。

参考までに、過去の優勝校の一覧を紹介します。これを見るだけでも、因縁の試合や強豪校などが分かるようになるかと思います。

ディベート甲子園過去の優勝校情報

おまけ2~審査員の講評に着目する

また、先に記述したように審査員の中には、「話芸」を聴くかのように試合の中身や試合から学べることなどを語ってくれる方もいます。最近では、試合を見ずに審査員のコメントだけ聞きに行くという関係者もいるくらいです。(試合を見なくても、審査員のコメントでおおよそどんな試合だったのかが分かるのです)この審査員の視点は勉強になる。この審査員の話は面白いなど、審査員に着目するのも面白いと思います。

さいごに~ディベート観戦文化の可能性~

ディベート大会をはじめてみると、特殊だなと思う方が多いと思います。通常、ディベートというと弁論大会、スピーチ大会のような分かりやすい、雄弁的なスピーチを想像すると思います。もちろん、そういうスピーチもあるのですが、そのイメージで観戦にいくと、調査型ディベートはどちらかというと、早口だという第一印象が強すぎて、何なんだと思ってしまうかもしれません。しかし、その早口だからダメというフィルターを外してみると、中高生が最新の研究論文や統計データを扱い、とんでもない情報の中から何が決めてなのかを鮮やかに導き出す技術を使っている事に衝撃を覚えるのではないかと思います。

また、今までも書いてきたように、専門的なテーマについて半年間もの間、何百冊といった本を読みながら膨大な時間をかけて考え続けてきた情報の中でもとびきりのものを試合という形式ではありますが、わずか30分で知れるというのは、ものすごい事です。自分では思いもつかなかったような、色々をアイデアを盛りだくさんで知ることができます。

「議論を楽しむ」というのは、1つの物事に対して、これだけ多くの視点があるんだというのをはじめ、自分が知らなかった、思いつかなかった議論のを知る事で、自分の可能性が拡大していく事に喜びを見出すということです。ちょっと、最初は疲れるかもしれませんが、これができるようになってくると、異なる価値観の人とも楽しく会話ができるようになるのかもしれません。

ディベート甲子園がこうした「議論を楽しむ」1つのきっかけになれば幸いです。ともかくは、難しい事を考えず、楽しく見てみましょう!最初は「次は、こういう反論くるかな?あっ、違ったー」という予想の当たりはずれから楽しんでみてください












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